2015年4月30日木曜日
インヒアレント・ヴァイス INHERENT VICE
松田優作ばりのサイケデリックなヒッピー探偵映画
大好きな映画作家ポール・トーマス・アンダーソンの最新作。主演は「ザ・マスター」に続きホアキン・フェニックス、原作は現代アメリカ文学の天才と言われるトマス・ピンチョン。
その割には宣伝もされず、かなり地味な公開。もうやってたんだばりにあわてて鑑賞。
このメンツでこのひっそりと公開の扱い。
さぞかし残念な結果になっているんだろうと、全く期待をせずに観に行ったのが良かったのか、予想に反しかなりギャグが織り交ぜられ面白かった。
1970年代ロサンゼルス。ドラッグ常習者の私立探偵のドックは、元恋人のシャスタに彼女の今の恋人で不動産王のミッキーについての調査を依頼される。ところがその直後のミッキーもシャスタも姿をくらませてしまう。
やがて、FBIや刑事ビッグフット、闇の組織などが絡む陰謀に巻き込まれていく。
最近のポール・トーマス・アンダーソンと言えば、シリアスで重厚で威厳のある大河ドラマという感じだけど、そのつもりで観に行くとかなり肩透かしな感じだけど、そのギャップも面白い。
ホアキンのヒッピーなもみあげもうけるが、ジョシュ・ブローリンのゴリラのような顔に角刈りの刑事キャラもかなり笑わせてくれる。
お気に入りのパンケーキ屋(なぜか日本人が経営)での「ちょっと! もっとパンケイク!!」という日本語の注文には劇場も爆笑。(なんで日本語なんだ)
とにかくタバコを吸い続けていて、マリファナとかボンベ?とかいろんなものを吸っている(笑) まともに考えられているのか分からないのによく依頼がくるものだ。
キャストはかなり豪華で、他にはオーウェン・ウィルソン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ、エリック・ロバーツなどなどで登場人物が多くて誰が誰なんだか物語を追うのがちょっと大変。
でも、肩の力を抜いて観るのがいい。
ファッションや音楽など70年代カルチャーの見どころ。
<作品概要>
「インヒアレント・ヴァイス」 INHERENT VICE
(2014 アメリカ 149分)
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、キャサリン・ウォーターストーン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ、マーティン・ショート、ジェナ・マローン、ジョアンナ・ニューサム、エリック・ロバーツ、ホン・チャウ
原作:トマス・ピンチョン
配給:ワーナー・ブラザース映画
2015年4月29日水曜日
マジック・イン・ムーンライト MAGIC IN THE MOONLIGHT
皮肉屋の手品師 VS 若くて美しい占い師
抜群の安定感の映画作り。
ウディ・アレンの映画は本当に安心して観に行ける。オープニングタイトルのおしゃれなフォントに軽快な音楽。この組み合わせを冒頭に見せられるだけてもうウディ・アレンの世界に入ってしまう。
天才的なマジックで有名な手品師スタンリーは、ある資産家が信じ込んでいる占い師の正体を暴いてほしいと依頼され、資産家の家に意気揚々と乗り込むが若くて美しい占い師に、知らないはずの情報を次々と当てられ、徐々に彼女に惹かれて入ってしまう。
今回のウディの分身は、名優コリン・ファース。
才能はあるのに皮肉屋で友達は少ない手品師役。
この人は本当に巧い。
気品があって「英国王のスピーチ」でも名演だったし、コミカルなこともできる。
でもこういう役はやっぱりウディ・アレンにはかなわない。まあ本人だからしょうがないけど。
コリン・ファースの一番のハマり役はやっぱり「シングルマン」。
映画自体もとても素晴らしい。
それにしても、エマ・ストーンがかわいい。
「バードマン」では、不良娘だったけど対照的な印象。
そして相変わらず音楽がいい。
手品師と占い師。本当のことを煙に巻く職業の二人が自分たちの本当の気持ちを巡り右往左往するロマンティックコメディ。
軽快なテンポで楽しめる珠玉の作品。
<作品概要>
「マジック・ イン・ムーンライト」 MAGIC IN THE MOONLIGHT
(2014年 アメリカ=イギリス 98分)
監督:ウディ・アレン
出演:アイリーン・アトキンス、コリン・ファース、エマ・ストーン、マーシャ・ ゲイ・ハーデン、ハミッシュ・リンクレイター、サイモン・マクバーニー、
配給:ロングライド
2015年4月28日火曜日
[PV] チリ・ゴンザレス「ADVANTAGE POINTS」
天才と皇帝のコラボレーションPVが笑える
自らをミュージックジーニアス・天才と呼ぶゴンザレスが新たにコラボレーションをしたのは、これまた自らを皇帝と名乗るバイオリンなど弦楽器を操る四人組、弦楽四重奏のカイザーカルテット。
ゴンザレスのピアノが加わった五重奏でこの豪華な演奏がかなりいい。
だけどそのPVがかなり面白い展開になっている。
「バリー・リンドン」?
中世ヨーロッパの男同士の決闘の行方は?
<作品概要>
「Advantage Points」
(2015 カナダ 4分)
監督:
出演:
音楽:チリ・ゴンザレス、カイザーカルテット
レーベル:Beat Records
2015年4月27日月曜日
Mommy/マミー Mommy
今にも崩れそうなギリギリの緊張感で、母への愛を掘り下げる
「トム・アット・ザ・ファーム」に続く監督5作目で、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した本作。この時はジャン=リュック・ゴダール監督の「さらば、愛の言葉よ」とのダブル受賞。
若干26歳と83歳の超ベテランという面白い組み合わせでのW受賞。
グザヴィエ・ドランは、常にマイノリティの弱者の目線で描かれることが多い、いつもギリギリの一歩間違えれば落っこちてしまいそうな緊張感の中でマイノリティたちはもがき苦しみ、救いを求めている。
シングルマザーのダイアンは、トラブルメイカーで施設帰りの愛息子スティー ヴと暮らすものの、普段は無邪気だがキレると何をしでかすか分からない息子に戸惑っていた。
ある日向かいに住む引きこもりの主婦カイラと親しくなり、元教師の彼女の教えでスティーヴも徐々に打ち解けていくのだが。
主演のスティーヴ役のアントワン=オリヴィエ・ピロン。ホントにこんなやついそうというスティーヴを見事に体現。マコーレ・カルキンが高校生になったかのようなビジュアルが印象的。
カイラ役もどこかで見たような、、、と思っていた「わたしはロランス」のスザンヌ・クレマンだった。
みんなドラン組。
ドランの映画はいつも緊張感に満ちている。
ちょっとしたことで崩れ去ってしまいそうなギリギリの綱渡りをしているような緊張感。
母と息子、そこに近所の引きこもり主婦のカイラが加わることで微妙な三角関係が出来上がり、安定するのではなく、逆にどこから崩れるのか分からないようになる。
そんなサスペンス要素もドランの特徴。
音楽も魅力のひとつ。
その中で、オアシスのワンダーウォールがこんなにハマるとは思わなかった。
そして、画面サイズ。
途中で気づいたけど、あっ、縦長?
普通は横長の映画の画面がサイズが、iphoneで撮ったかのように若干の縦長サイズ。
あとで調べたらアスペクト比は、1:1とのこと。(つまり正方形)
最前列で観てたから縦長に見えたのかも。
それにしてもこのサイズで撮るのは珍しい。
いろいろチャレンジしてるな、グザヴィエ・ドラン!
恵比寿ガーデンシネマが復活してから初の鑑賞。
最初がこの作品で良かった。
満席だったのも良かったし、やっぱりいい劇場だ。
パンフレットが高い! 1000円とは。
<作品概要>
「Mommy/マミー」 MOMMY
(2014年 カナダ 138分)
監督・脚本:グザヴィエ・ドラン
出演:アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン、アントワン=オリヴィエ・ピロン
配給:ピクチャーズデプト
2015年4月26日日曜日
[CM] TOYOTA G's Baseball Party
スポーツカーを野球で表現してみた、このCM
トヨタのスポーツカーである「G's」のコンセプトは、
SPORTSCARS for ALL
そのスポーツに国民的競技の野球をチョイスして作成されたのがこのCM。
街中で有名選手がサッカーをするCMは、ナイキやアディダスなどスポーツメーカーのCMでお目にかかっているけど、こちらは街中で野球。
有名選手は出ていないものの、イチローや野茂を思わせる商店街の人々が登場!
クロマティがカメオ出演しているあたりが面白い。
<作品概要>
「TOYOTA G's Baseball Party」
(2015年 日本 3分)
監督:
出演:稲村亜美、ウォーレン・クロマティ
製作:TOYOTA
2015年4月25日土曜日
セッション WHIPLASH
狂気のセッション
狂気をはらんだ映画は怖い。
そしておもしろい。 疲れるけど。
「ブラックスワン」のような緊張感。
全編にわたってこの緊張感が支配する。
名門音楽院に進学しジャズドラマーを目指すニーマンは、伝説の教師フレッチャーの指導を受けることになるが、鬼コーチの指導は次第に狂気をおび、徐々にニーマンを追い詰めていく。
フレッチャー演じるJ・K・シモンズは、「フルメタルジャケット」の鬼軍曹のごとく生徒を追い詰めていく。この演技でアカデミー賞助演男優賞を受賞したほどの怪演。
そして、それに応えるのは友達もいなくドラムに全てを捧げる孤独な天才ニーマン。
まるで「ソーシャルネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ演じるザッカーバグのよう。
ニーマンを演じるのは、若手俳優マイルズ・テラー。
これからが楽しみ。
そして、音楽。
ドラムのリズムで全編通すのは、「バードマン」に続き、この「セッション」もそう。
名門音楽院の話だけに、全編ジャズのセッションが流れる。
本来、自由なセッションのはずのジャズ。だけど、鬼教師フレッチャーの支配するビッグバンドは、一切のズレは許されない。当然アドリブなんかなし。
ちょっとでもテンポがズレようものなら一気に二軍行き。
「ファッキン、テンポ!!」と怒鳴られる。
観ていてもテンポがズレているかどうかなんて一切分からないけど。(笑)
こういう音楽映画はサントラもいい。
映画の原題になっている「WHIPLASH」とは劇中に練習曲としても出てくる曲で、意味は「首のムチ打ち」。ドラムに熱中するあまりかかってしまう疾病だそう。
もうまさにこの映画そのもの。
そしてこの映画のすごいところが、音楽映画の皮をかぶったサスペンスであること。
狂気をおびた師弟の攻防。音楽を超えたセッションの見応えがすごい。
<作品概要>
「セッション」 SHIPLASH
(2014 アメリカ 107分)
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング
配給:GAGA
狂気をはらんだ映画は怖い。
そしておもしろい。 疲れるけど。
「ブラックスワン」のような緊張感。
全編にわたってこの緊張感が支配する。
名門音楽院に進学しジャズドラマーを目指すニーマンは、伝説の教師フレッチャーの指導を受けることになるが、鬼コーチの指導は次第に狂気をおび、徐々にニーマンを追い詰めていく。
フレッチャー演じるJ・K・シモンズは、「フルメタルジャケット」の鬼軍曹のごとく生徒を追い詰めていく。この演技でアカデミー賞助演男優賞を受賞したほどの怪演。
そして、それに応えるのは友達もいなくドラムに全てを捧げる孤独な天才ニーマン。
まるで「ソーシャルネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ演じるザッカーバグのよう。
ニーマンを演じるのは、若手俳優マイルズ・テラー。
これからが楽しみ。
そして、音楽。
ドラムのリズムで全編通すのは、「バードマン」に続き、この「セッション」もそう。
名門音楽院の話だけに、全編ジャズのセッションが流れる。
本来、自由なセッションのはずのジャズ。だけど、鬼教師フレッチャーの支配するビッグバンドは、一切のズレは許されない。当然アドリブなんかなし。
ちょっとでもテンポがズレようものなら一気に二軍行き。
「ファッキン、テンポ!!」と怒鳴られる。
観ていてもテンポがズレているかどうかなんて一切分からないけど。(笑)
サントラ版 |
こういう音楽映画はサントラもいい。
映画の原題になっている「WHIPLASH」とは劇中に練習曲としても出てくる曲で、意味は「首のムチ打ち」。ドラムに熱中するあまりかかってしまう疾病だそう。
もうまさにこの映画そのもの。
そしてこの映画のすごいところが、音楽映画の皮をかぶったサスペンスであること。
狂気をおびた師弟の攻防。音楽を超えたセッションの見応えがすごい。
<作品概要>
「セッション」 SHIPLASH
(2014 アメリカ 107分)
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング
配給:GAGA
2015年4月24日金曜日
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) BIRDMAN or (the unexpected virture of ignorance)
すごさを出しているのが、このライブ感!
映画らしい映画とでもいうのか、映画でないとできない表現というのか、映画でできることを遊びつくしたというのか、とにかくすごい。面白い。
全編ワンカットかのようなシーンのつなぎ方とか、ドラムベースのテンポで緊張感を保ち続けたり、撮影や音楽の演出も巧い。
「バードマン」というヒーロー映画でかつてスターになったリーガンは、今は落ちぶれて資産も尽きかけているが、ブロードウェイで再起を図った勝負に出る。
監督は、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。はじめて観たのは東京国際映画祭で何の前知識もない状態で度肝を抜かれた「アモーレス・ペロス」。それから「21グラム」や「バベル」など生と死の運命みたいな重いテーマが多いけど大好きな監督。
アカデミー賞では作品賞と監督賞を堂々の受賞。
ちなみに、昨年は「ゼロ・グラビティ」でアルフォンソ・キュアロンが作品賞と監督賞も受賞。この二人はメキシコ出身の同郷仲間で、「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロも合わせた三人でチャチャチャ・フィルムズを設立し映画製作を行っている。
二人が連続で受賞してデル・トロもかなりプレッシャーか(笑)
そしてこのキャスティング!
「バットマン」で一世風靡したマイケル・キートンを主役に、そして現在の大ヒットアメコミ作品「アメイジング・スパイダーマン」のエマ・ストーンを助演に添えるあたりとか、振り切ってるとこがいい。
スパイダーマンがちょいちょい出てくるあたりもいい。
それにしても、この映画のすごさを醸し出しているのが、このライブ感!
ワンカットのようなリアルタイムのように進んでいく感じが、舞台っぽい。
そう、ブロードウェイを描いているだけあって、このリアルタイムにアドリブ的に物事が進んでいくようなライブ感がこの映画の持ち味。
(それを演出するために、秒単位の演出で俳優は相当大変だったらしいが、、、)
そしてそれを演出するのがワンカットかのようなこの撮影。
撮影はこのひと、
エマニュエル・ルベツキ
この人、天才!
実は、アカデミー賞は昨年に続き2年連続で撮影賞を受賞している。
昨年受賞したのは、「ゼロ・グラビティ」。
一体どうやって撮影したのかと話題をさらったあの映像。
本作でもやってくれました。
それにしても、宣伝であの背後霊のようなバードマンを見てたのでいつでるのかと気になりすぎてしまい、肩透かし。あまりあのバードマンで煽らないでほしかった、、、
<作品概要>
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
(2014 アメリカ 120分)
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン、ザック・ガリフィアナキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズボロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ、リンゼイ・ダンカン、メリット・ウェバー
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:アントニオ・サンチェス
配給:20世紀フォックス
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