地味だけど役者たちの演技のアンサンブルが素晴らしい!
とにかく役者たちがいい。自分の仕事に誇りを持って生きている新聞記者たちの姿を活き活きと力強く演じていた。
アカデミー賞で作品賞に輝いた骨太な社会派ドラマ。
ボストン・グローブ社の新任編集長のバロンは、神父が児童に性的虐待をしていたというゲーガン事件をもっと掘り下げるべき事件として特集記事担当のスポットライトチームにこの事件の調査を指示する。
強大な権力を持つ教会を敵に回すような行為だが、スポットライトチームは次々と新しい事実をつかんでいく。
宗教的な拘束力が弱い日本ではあまり感じられないのかもしれないけれど、キリスト教の力が強い欧米にとってはとても衝撃的な事件。
そしてスポットライトチームが調べ上げたこの疑惑の神父の数の多いとこと!
全体の6%という一見小さそうな数字だけど、ボストンだけでも1500人の神父がいて、そうすると約90人が該当する。複数年にわたり複数人になるその被害者の数は膨大だ。
こんな信じられないことを教会は隠蔽し続けた。
キリスト教会において神の代理人である神父の存在は神に匹敵するらしい。
その神父に日頃の教義で禁止されているはずの性的な虐待を受け、口止めをされ、神父を敬愛して止まない両親にも相談できず、精神を病み自殺する子も多いとか。
その罪はあまりにも大きい。
だけど、その強大で聖域である教会にメスを入れようと行動を起こせたのは、編集長がヨソ者で新任のユダヤ人だったから。他の記者はみんな地元出身で、地場の教会を敵に回すような行為は思いもよらなかったのだとか。宗教や地元意識に縛られないバロンだからこその発想だったのかもしれない。
スポットライトチームの描き方として特にフォーカスされているのが取材活動。
彼らはとにかく足を使って様々な関係者に直接会って取材する。
80年代か90年代の映画を見ているのかと錯覚するくらい、PCやネットなどIT機器を使わない。いつもペンとノートでメモを取る。
監督は、トム・マッカーシー。
「扉をたたく人」や「靴職人と魔法のミシン」などは日本でもヒットしているけど、監督5作品目にして早くもアカデミー賞の作品賞を受賞。
そして、キャストがいい!
レイチェル・マクアダムズの女性記者っぷりも良かった。それにあの取材先の小太りの被害者男性もすごく上手い。
マイケル・キートンは、昨年の「バードマン」に引き続いて2年連続でアカデミー作品賞の作品に出演。スポットライトチームのリーダーとして存在感もバツグン。
特にマイク・ラファロのなりきり具合は本当にすごい。モデルとなった記者のクセをまねて本当にいそうな見事な演技。この人は作品ごとに違う顔になれるとてもいい役者。
アカデミー賞でもノミネート常連になってきている。
そんな個性的かつ実力派俳優陣で、正義を信じる熱い新聞記者たちを見事に表現。
パンフレットでは、日本のゴシップ界をにぎわす週刊文春の編集長が映画評を寄せている(笑)
<作品概要>
「スポットライト 世紀のスクープ」 SPOTLIGHT
(2015 アメリカ 128分)
監督:トム・マッカーシー
出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムズ、リーブ・シュレイバー、ジョン・スラッテリー、ブライアン・ダーシー・ジェームズ、スタンリー・トゥッチ、ビリー・クラダップ、ジェイミー・シェリダン
配給:ロングライド
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