サブプライム問題とは何だったのか?
世界中に影響を及ぼしたリーマンショックの内実を、バブル崩壊を予見していたそれぞれの主人公たちの視点で描いたところが面白い。
それにしても、バブルの最中ってかなりのずさんなのに誰も気にしないところが恐ろしい。
だけど現実ってそんなもんだったりもする。
天才的金融トレーダー・マイケル、野心ある銀行家・ジャレド、ジェイミーとチャーリーの若き投資家とそれを後押しする引退した伝説の銀行家ベン。彼らは過剰に加熱する低所得者向けの住宅ローンに不信感を抱き、市場が崩壊した際に巨額の保険金が手に入る契約で、バブルで沸く市場とは真逆に賭ける大勝負に出る。
とにかくずさん。
サブプライムローンとは信用力の低い低所得所に向けた住宅ローンのこと。
普通は何割かの頭金と一緒に年収や預金の証明書が必要なのに、この当時はそれが一切なかった。さらに金利もなかったとか。市場は住宅価格が高騰し続けバブルに沸く中で、返せるあてもない住宅ローンをこぞってみんなが組み続けた。そしてそれはピークを迎える。
ストリッパーや移民などにまで住宅ローンを売りつける不動産会社など、現場はひどいありさま。しかも銀行が債券を買い上げてくれるから誰かれ構わず売りまくる。
日本では住宅ローンは以前よりも審査が厳しくなっているというのに。
それにしても、これら金融商品の仕組みが複雑で分かりづらい。
その点この映画では、著名人がカメオ出演して「猿で分かる」的な解説が入る(笑)
泡のバスタブからマーゴット・ロビーがシャンパンを片手に、サブプライムローンを説明したり、シェフのアンソニー・ボーディンは、腐った魚を他の魚と一緒にシチューに入れて別メニューとして売り出す例えでCDO(債務担保証券)を比喩したり、セレーナ・ゴメスが、"カジノで勝っている人"に賭ける周りの客に例えてCDOが広まったことを説明する。
実際、このサブプライムローンという不良債権を、他の債券と合わせて別物の金融商品にして売り出す際、格付け会社のスタンダード&プアーズやムーディーズはウォール街の言うがままに優良評価をしていたとか。そのせいで誰も不良債権とは気づかずにこの市場はバブルとなっていった。
つまり、ウォール街ぐるみの詐欺。
金融モンスターたちによって引き起こされた人災がこのリーマンショックの実情。
そして、CDOのように何かを介すことによって実態が分からなくなっていくことの怖さも物語っている。
監督は、アダム・マッケイ。「俺たちニュースキャスター」などウィル・フェレルの爆笑「俺たち〜」シリーズの監督。コメディ出身だけに、急にカメラ目線になるあの解説が入ったりと、堅苦しくない金融話ができるのかも。
マイケル・ルイスの原作「世紀の空売り」を読んで、不条理コメディを一旦止めてこれを映画化したいと思ったのだとか。
マイケル・ルイスは別著「マネーボール 奇跡のチームを作った男」が、ブラッド・ピット主演で既に映画化されていて、「世紀の空売り」もブラピの映画製作会社プランBエンターテイメントが既に映画化権を獲得していたので、本作もプランB製作でブラピも出演し、プロデューサーでもある。
ブラピはプロデューサーとしても有能で、プランB作品では、「それでも夜は明ける」、「ツリー・オブ・ライフ」がアカデミー賞作品、「キック・アス」を発掘したりしてる。
そして、ブラピはロバート・レッドフォードにドンドン似てきている。
キャスト陣もいい。
クリスチャン・ベールはこの演技でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。
ライアン・ゴズリングは野心家の銀行家、スティーブ・カレルも怒れるトレーダーを好演。
(ちなみに、スティーブ・カレルのラスベガスでのシーン。レストランのBGMがでなぜか徳永英明(笑) おかげで気になって話が全く入ってこなかった)
彼のセリフにもあるように、この映画主人公たちはバブル崩壊を読み、見事に大博打に勝ち、巨額の富を得た訳だけど、それは多くの犠牲の上に成り立っている。
<作品概要>
「マネー・ショート」 THE BIG SHORT
(2015年 アメリカ 130分)
監督・脚本:アダム・マッケイ
原作:マイケル・ルイス
出演:クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット、メリッサ・レオ、ハミッシュ・リンクレーター、ジョン・マガロ、レイフ・スポール、ジェレミー・ストロング、フィン・ウィットロック、マリサ・トメイ
配給:東和ピクチャーズ
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