2013年11月27日水曜日
フラッシュバックメモリーズ 4D
世界初!3D映画と生演奏が融合する4D体験!
すごい体験だった。4D映画。
劇中全編に渡って流れるGOMAの音楽にGOMAたち本人が映像に合わせて生演奏をする。会場は出だしから歓声が飛び交うライブ状態!しかも座席はありながら全員オールスタンディング! 72分の上映時間の大半に曲がかかっているため、ほぼライブと変わらないようなとても不思議な映像体験。そして映像と演奏のマッチング度合いもすごくいい。なかなかない良い映像体験ができた。
この映画を作成したのは、「童貞。をプロデュース」「ライブテープ」などドキュメンタリーを得意とする松江哲明監督。若手世代の代表格だ。ディジュリドゥという長いパイプのような楽器の奏者であるアーティストのGOMAは、2009年11月、首都高を運転中に追突事故に巻き込まれ、脳に障害を負ってしまう。それは記憶の一部を失い、新たな記憶すら残しづらくなってしまうというものだった。映画は若き日のGOMAの映像から事故を経て「今」に至までをGOMAの楽曲とともに映し出す。
おそらくGOMAの奥さんが撮っていたであろう家庭用ビデオカメラの映像で、若くディジュリドゥの奏者として海外修行をするGOMAの姿から映画は始まる。ディジュリドゥという初めて聞く楽器の名前もすぐに演奏が始まるので実感として覚えられた。
徐々に活躍の場を広げていくGOMAの姿、ライブの会場もどんどんと大きくなっていく、目黒CLASKA、恵比寿リキッドルーム、フジロックフェスティバル、そして事故にあった2009年が近づいてくる。。 このあたり時系列で並べたのが巧い、と思った。もうその日は事故に遭うと分かっているからドキドキしてしまう。そして首都高の場面がアニメーションでフラッシュバックされる。この時にはもう「ぞぞぞ」としてしまった(笑)
事故当日、娘を同乗させなかったエピソードや、事故体験がこれまた不思議な映像で表現されたりとGOMAが体験したことを音楽にのせて追体験することができる。
そして3Dが意外と効いている。ディジュリドゥがあんなに伸びるとは(笑)この感覚はDVDでは味わえないので劇場で3Dで観れる機会があれば是非。
事故前、事後当日、事故後を時系列にし、記憶を失いながらも体が覚えているリズムをたよりに音楽の力で復活していくGOMAの姿は感動的だった。
記憶を失ってしまうあるアーティストの葛藤を映画いた訳だが、もともとはスペースシャワーの番組企画として始まった。プロデューサーの依頼を受けた松江監督は、まさかの3Dで撮影することを条件に撮影を敢行、劇場公開も果たし、更にはプロデューサーの思いつきから生演奏と融合する4D映画にまで発展。3Dで撮っていたことが功を奏し、(おそらく)世界初の試みに至った。
4D映画では映画後(というかライブ後)、終演の拍手がすぐにアンコールの拍手となり本当にアンコールが演奏されるという完全にライブ状態。
こんな感動的な日だけど、きっと忘れてしまうだろう、というGOMAのコメントが印象的だった。
<作品概要>
「フラッシュバックメモリーズ 4D」
(2013年 日本 72分)
監督:松江哲明
出演:GOMA
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
劇場:立川シネマシティ
2013年11月18日月曜日
んで、全部、海さ流した。
不思議なコンビが生きていく意味を模索する
元ヤン娘 meets 赤いランドセルを背負ったデブ少年。その時、ちょっとだけ物語が動く。
監督は、CMディレクター出身の新鋭・庄治輝秋。文化庁委託事業の若手映画作家育成プロジェクト「New Directions in Japanese Cinema」(ndcj)として製作された。監督は本作でデビューを飾り、劇場公開も果たす。
舞台となったのは監督の故郷でもある石巻。
震災という過去を背負い、被災地で生きる人々の戸惑いや孤独を描くが、直接的に震災のことには触れない。タツトシの妹も震災で亡くなったのかと思いきやそうではなかったりする。
塾のバイト面接に、まだ20歳なのに「大卒」と堂々と履歴書詐称をおこない、あっけなくバレて門前払いとなるあたり、この監督のユーモアがにじみ出る。
それにしてもこのタツトシ少年がいい!
この存在感を得た時にこの映画は勝ったのだと思う。
赤と青のコントラストが寒そうな石巻の街で自分たちなりに一生懸命に生きようと、居場所を探そうと模索している。つい嘘もついてしまうが悪気があるわけではない、自分なりの不器用ながらの表現なのだ。
そんな、(カウリスマキに通ずる)弱者で敗者な彼らの日常の一編をほんのりとしたユーモアにつつんだ庄治監督。
『不灯港』(内藤隆嗣監督)をちょっと思い出した。
「不灯港」 |
<作品概要>
「んで、全部、海さ流した。」
(2012年 日本 30分)
監督:庄治輝秋
出演:韓英恵、篠田涼也、安立智充、半海一晃、いわいのふ健
配給:シグロ
2013年11月5日火曜日
危険なプロット dans la maison
何とも面白い映画的アプローチ! フランソワ・
オゾンが仕掛ける上質な知的サスペンス。
スローテンポなオープニングに始まるが、どんどん映画の世界に引き込まれていく。少年が書く実体験を基にした作文は一編ごとに観客も魅了する。「続きが知りたい」と。そして一編ごとにこう締めくくる「続く、、、」。そう、続きが気になる。主人公の先生と同じくらい引き込まれていく。
退屈な日々を送る高校の国語教師・ジャルマンは新学期のある日、生徒が提出した作文に心をつかまれる。友人とその家庭を観察し他人の家族関係を皮肉たっぷりに描写したものだった。才能を感じたジェルマンはその生徒・クロードに文章の手ほどきをする。オススメの本も貸す。そして引き換えに彼の“新作”を手に入れる。何だかんだと批評しながらも才能あふれる作文の「続き」が気になるあまり、のめり込んでいく。そして内容も次第にエスカレートしていく。
退屈だったある日、急に面白くて仕様がない遊びを見つけてしまった大人の自制心がきかなくなってくるあたりがいい、その相手が魅惑的な美少年なのも人を破滅においこむファムファタールのようで危険な香りを演出している。続きが気になるあまり、教師と生徒の主導権が逆転していく心理戦が展開される。
彼の作文の世界(進行形の実体験)がどんどん交差していく物語の構成はすごく新しい。こんな作風は他にあっただろうか。作文の中での回想劇に聞き手であるジェルマンが黒子として登場し出した時には、ウディ・アレンかと思った(笑) 「ローマでアモーレ」の時のアレック・ボールドウィンのごとき解説者になり、登場人物と会話する。(実際、劇中にジェルマン夫妻が映画に行く時に観ていたのは、ウディ・アレンの「マッチ・ポイント」だった。) ウディが得意とする演劇的アプローチ。
オゾンもかなりウディ・アレンを意識していると思われる。最近の作品は観てなかったのだけれど、いままでにはあまりなかったユーモアの部分が多く感じられた。そしてオゾンらしい官能的なところとみごとに共存している。新しい境地にいったようなどんどん進化しているオゾンが堪能できて大満足な作品だ。間違いなく近年のオゾンで大傑作!
<作品概要>
「危険なプロット」 dans la maison
(2012年 フランス 105分)
監督:フランソワ・オゾン
出演:ファブリス・ルキーニ、クリスティン・スコット・トーマス、エマニュエル・セニエ、エルンスト・ウンハウワー、ドゥニ・メノーシェ
配給:キノフィルムズ
2013年11月2日土曜日
ショートショート フィルムフェスティバル&アジア プログラムA shortshorts filmfestival & asia
世界のショートフィルムの祭典
東京国際映画祭の提携企画として、ワークショップとともに恵比寿の東京写真美術館にて開催。カンヌ国際映画祭短編部門でパルムドールを受賞した作品や有名俳優が出演しているものもある。
短いもので5分、長くても20分程度の短編にクリエイターの手腕が発揮される。
もともとは俳優の別所哲也が主催して現在も本人が代表を務める会社が運営をしているアジア最大級の国際短編映画祭。
[プログラムA]
ん〜、正直全体的にこじんまりした作品がおおかった印象。長編映画をただ短くしたような感じでインパクトに欠けるものが多かった。せっかく短いんだから、長編と同じようなアプローチではなく、“短編だからこそできる”工夫が欲しかった。あるポイントに思いっきりフォーカスしたり振り切った方が、面白いものができる気がする。「この監督に長編を撮らせたらどうなるんだろう?」というワクワク感が持てず、どれも想像できてしまった。
そういう意味では「人間の尊厳」は一点にフォーカスしていてインパクトはあった。救いが無いけど。個人的には、中華系家族の年に一度の集まりを描いた「ポピア」が普遍的な家族関係と美しい伝統風景がマッチしていてとても良かった。
<作品概要>
「インタビュー」The Interviewer (2012年 オーストラリア 12:52 )
「私の街」It was my city (2012年 イラン 8:00)
「寿」Kotobuki/To Us (2012年 日本 15:00)
「彼女」She (2012年 韓国 16:58)
「人間の尊厳」THE MASS OF MEN (2012年 イギリス 16:00)
「ポピア」Popiah (2013年 シンガポール 13:53)
配給:ショートショート実行委員会
2013年11月1日金曜日
スティーブ・ジョブズ Jobs
傲慢で天才、スティーブ・ジョブズの生涯。
ipad、ipod、iphone、アメイジングなプロダクツを次々と世に出し、世間をあっと言わせてきたアップル社創業者のスティーブ・ジョブズ(2012年没)の生涯を映画化。
彼らのスタートは、ガレージから。
友人のウォズニアックが趣味で作っていた自作コンピュータに興味を持ち自宅ガレージをオフィスにアップル社を創業。自宅で使えるコンピュータを世に出しアップルの快進撃は始まる。大きな出資を受けIBMに対抗するくらいの企業へ成長を遂げる。こだわりの塊のジョブズは他にはない製品を創りだすために何に対しても徹底的だ。当時ペプシでマーケティングの天才と言われていたジョン・スカリーをヘッドハンティングしマーケティングを担当させCEOにつける。「このまま一生砂糖水を売って過ごすか。それとも私と来て一緒に世界中を変えるのか」という伝説の殺し文句で彼を口説き落とした。
映画「ソーシャル・ネットワーク」のマーク・ザッカーバーグと同様、スティーブ・ジョブズもまた、成功することで裏切り、昔の仲間が去っていくなど傲慢で独裁が故の事態に見舞われる。「おまえは変わった」という相手に「成長したんだ」と突き放す。ワガママで嫌われ者の彼はアップル社の取締役陣と対立し、自ら創業した会社を追われることになる。だけどその後伸び悩むアップル社の新しい経営陣に呼び戻されるがその条件として自分への権力を集中させる。これで自分の開発に誰にも文句を言わせない。これだけワガママで独裁者でこだわりが尋常でない嫌われ者の天才だから、みんなに好かれるアメイジングなプロダクツを生み出せたのだろう。
<作品概要>
「スティーブ・ジョブズ」 Jobs
(2013年 アメリカ 128分)
監督:ジョシュア・マイケル・スターン
出演:アシュトン・カッチャー、ダーモット・マローニー、ジョシュ・ギャッド、ルーカス・ハース、J・K・シモンズ、マシュー・モディーン
配給:GAGA
トランス TRANCE
記憶を巡るダニー・ボイル流のサスペンス。
予告編からして面白そうだったダニー・ボイルの新作「トランス」。その割には公開規模が少なくちょとさみしい感じでは合ったが、その分期待は裏切らない。もっと大体的に宣伝されて、「最後のドンデン返しに必ず騙される!」とか言われるとかえって構えて観てしまうし、期待値が上がり過ぎてハードルが上がってしまうので、ちょうど良かったかもしれない。
ロンドン、サザビーズの競売人であるサイモン(ジェームズ・マカボイ)は、超高額品であるゴヤの「魔女たちの飛翔」がオークションにかけられた日にオークション会場で強盗に襲撃される。見事に絵画を強奪した強盗団だがケースを開けると中は空だった。実は強盗団に通じていた競売人のサイモンだったが、襲撃の際に頭を強打し、一部の記憶を失ってしまう。激怒した強盗団のボス・フランク(ヴァンサン・カッセル)はサイモンを問いつめるが、サイモン自身も何故なのか記憶がなく分からない。行方不明になった絵画を取り戻すため、催眠療法(トランス)によって記憶を戻そうと試みるのだが、予想外の事実が明らかになっていく。
作品自体は、冒頭に強奪され行方が分からなくなった絵画、ゴヤの「魔女たちの飛翔」にとても意味が込められている。だけど残念ながら劇中でこの絵をじっくりと見る機会はない。
ゴヤ 魔女たちの飛翔 |
結構脚本が練られていて、最後までしっかり楽しめる。サイモンはなぜそんな行動に出たのか。当のサイモンが記憶を失っているので、観客と一緒の状態でみんなで記憶を取り戻そうとしていく構図がいい。その鍵となる催眠療法が思いのほか効力を発揮し、徐々に謎が解けていく。そして最後には全てが明かされる。
それにしても思う。サイモン、催眠にかかり過ぎ(笑)
<作品概要>
「トランス」 TRANCE
(2013年 アメリカ=イギリス 101分)
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・マカボイ、ロザリオ・ドーソン、ヴァンサン・カッセル、ダニー・スパーニ、マット・クロス
配給:20世紀フォックス
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