不思議なコンビが生きていく意味を模索する
元ヤン娘 meets 赤いランドセルを背負ったデブ少年。その時、ちょっとだけ物語が動く。
監督は、CMディレクター出身の新鋭・庄治輝秋。文化庁委託事業の若手映画作家育成プロジェクト「New Directions in Japanese Cinema」(ndcj)として製作された。監督は本作でデビューを飾り、劇場公開も果たす。
舞台となったのは監督の故郷でもある石巻。
震災という過去を背負い、被災地で生きる人々の戸惑いや孤独を描くが、直接的に震災のことには触れない。タツトシの妹も震災で亡くなったのかと思いきやそうではなかったりする。
塾のバイト面接に、まだ20歳なのに「大卒」と堂々と履歴書詐称をおこない、あっけなくバレて門前払いとなるあたり、この監督のユーモアがにじみ出る。
それにしてもこのタツトシ少年がいい!
この存在感を得た時にこの映画は勝ったのだと思う。
赤と青のコントラストが寒そうな石巻の街で自分たちなりに一生懸命に生きようと、居場所を探そうと模索している。つい嘘もついてしまうが悪気があるわけではない、自分なりの不器用ながらの表現なのだ。
そんな、(カウリスマキに通ずる)弱者で敗者な彼らの日常の一編をほんのりとしたユーモアにつつんだ庄治監督。
『不灯港』(内藤隆嗣監督)をちょっと思い出した。
「不灯港」 |
<作品概要>
「んで、全部、海さ流した。」
(2012年 日本 30分)
監督:庄治輝秋
出演:韓英恵、篠田涼也、安立智充、半海一晃、いわいのふ健
配給:シグロ
0 件のコメント:
コメントを投稿