2013年11月5日火曜日
危険なプロット dans la maison
何とも面白い映画的アプローチ! フランソワ・
オゾンが仕掛ける上質な知的サスペンス。
スローテンポなオープニングに始まるが、どんどん映画の世界に引き込まれていく。少年が書く実体験を基にした作文は一編ごとに観客も魅了する。「続きが知りたい」と。そして一編ごとにこう締めくくる「続く、、、」。そう、続きが気になる。主人公の先生と同じくらい引き込まれていく。
退屈な日々を送る高校の国語教師・ジャルマンは新学期のある日、生徒が提出した作文に心をつかまれる。友人とその家庭を観察し他人の家族関係を皮肉たっぷりに描写したものだった。才能を感じたジェルマンはその生徒・クロードに文章の手ほどきをする。オススメの本も貸す。そして引き換えに彼の“新作”を手に入れる。何だかんだと批評しながらも才能あふれる作文の「続き」が気になるあまり、のめり込んでいく。そして内容も次第にエスカレートしていく。
退屈だったある日、急に面白くて仕様がない遊びを見つけてしまった大人の自制心がきかなくなってくるあたりがいい、その相手が魅惑的な美少年なのも人を破滅においこむファムファタールのようで危険な香りを演出している。続きが気になるあまり、教師と生徒の主導権が逆転していく心理戦が展開される。
彼の作文の世界(進行形の実体験)がどんどん交差していく物語の構成はすごく新しい。こんな作風は他にあっただろうか。作文の中での回想劇に聞き手であるジェルマンが黒子として登場し出した時には、ウディ・アレンかと思った(笑) 「ローマでアモーレ」の時のアレック・ボールドウィンのごとき解説者になり、登場人物と会話する。(実際、劇中にジェルマン夫妻が映画に行く時に観ていたのは、ウディ・アレンの「マッチ・ポイント」だった。) ウディが得意とする演劇的アプローチ。
オゾンもかなりウディ・アレンを意識していると思われる。最近の作品は観てなかったのだけれど、いままでにはあまりなかったユーモアの部分が多く感じられた。そしてオゾンらしい官能的なところとみごとに共存している。新しい境地にいったようなどんどん進化しているオゾンが堪能できて大満足な作品だ。間違いなく近年のオゾンで大傑作!
<作品概要>
「危険なプロット」 dans la maison
(2012年 フランス 105分)
監督:フランソワ・オゾン
出演:ファブリス・ルキーニ、クリスティン・スコット・トーマス、エマニュエル・セニエ、エルンスト・ウンハウワー、ドゥニ・メノーシェ
配給:キノフィルムズ
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