2014年10月30日木曜日

イヴ・サンローラン  Yves Saint Laurent


知らなかったイブ・サンローランの世界

イヴ・サンローランというブランドは誰もが知るハイブランドではあるけれど、年寄りくさいイメージしかなかった。
トム・フォードがデザイナーに就任したあたりで若返りを図ろうとしてる感はあったものの、それでもあまり感心はわかなかったけれど、こういった映画でその歴史を知ると印象は変わるし興味はわいてくる。

1953年、パリ。
急死したクリスチャン・ディオールの後継者として指名されたのは、若干21歳のイヴ・サンローランだった。生涯のパートナーになる実業家のピエール・ベルジェの助けもあり、自身のメゾンを立ち上げ、天才ファッションデザイナーとしての躍進がはじまる。その光と陰、ひとりの人としての部分にフォーカスして描く。


本作でもっともよく言われるのは、主演のピエール・ニネがイブ・サンローラン本人にそっくりだということ。
フランス人からみても外見だけでなく仕草までかなりそっくりらしい。


それにみどころとしては、やっぱりファッション!
イヴ・サンローラン財団から当時のコレクションを実際に借り受けて、撮影されているので当時のスタイルがそのまま再現されていて、クラシカルないい雰囲気が出ている。
当時は今よりサイズ感が小さいのでその衣装を着れるモデルを捜すのが大変だったとか。

イヴ・サンローランのコレクションに馴染みはなかったけれど、言われてみればモンドリアン・ルックくらいは知っていた。


オランダの抽象画家ピエト・モンドリアンの作品からヒントを得て完成されたスタイル。
劇中でもデザインに行き詰まったサンローランがふと手にしたモンドリアンの写真集を目にして、そこから怒濤のごとくペンを走らせていく姿が。
天才の創作の過程が描かれていたりする。

同じくファッションデザイナーをテーマにした映画は、
ココシャネルやアルマーニ、カールラガーフェルドらを描いたものがある。


<作品概要>
イヴ・サンローラン」 Yves Saint Laurent
(2014年 フランス 106分)
監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ、シャルロット・ルボン、ローラ・スメット、マリード・ビルバン、ニコライ・キンスキー、マリアンヌ・バスレール
配給:KADOKAWA

2014年10月29日水曜日

[短編] ジョニー・ウォーカーのショートフィルム 「紳士の賭け事」


ジュード・ロウが粋でカッコいい ジョニー・ウォーカー ブルーラベルのショートフィルム


ジョニー・ウォーカーのショートフィルムのシリーズはいい。
変な広告よりもよほどブランディングになる。


地中海を思わせる青い海に浮かんだ一隻のクルーザーで、2人の紳士がウィスキーを飲んでいる。ひとりが言う「この舟が欲しい」。「売り物じゃない」という相手に対し、ある「賭け事」を提案する。

なんともオシャレで粋なショートフィルム!
ジュード・ロウの相手は、ジャンカルロ・ジャンニーニ。
音楽もおしゃれなジャズで軽やかな感じを演出してとてもマッチしていた。

<作品概要>
「紳士の賭け事」 The Gentleman's Wager
(2014年 イギリス 6分)
監督:ジェイク・スコット
出演:ジュード・ロウ、ジャンカルロ・ジャンニーニ
製作:JOHNIE WALKER Blue Lavel

2014年10月28日火曜日

誰よりも狙われた男  A Most Wanted Man


フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作

2014年2月、名優フィリップ・シーモア・ホフマン逝く。
やはりこのニュースが、本作を決定的に印象づけてしまう。それほどショックなニュース。まだ若干46歳という若さで最後の作品となってしまった。

最初の頃は、コメディ路線ではないけどジャック・ブラックのような3枚目で変態的なのが印象的な俳優だったけど、メキメキと頭角を表し、最近は、「カポーティ」など演技でみせる実力派として役の幅も広げていただけにとても残念。

特に「ザ・マスター」のランカスター役はすごかった。ホアキンもかなりすごかったけど、そうとう濃い役者たちの演技のアンサンブル。そこを牽引するだけの演技力。
そして、ジョン・ル・カレ原作の主人公のような、渋いおじさんで頭をはれる性格俳優だけに今後が楽しみだった。


ドイツ、ハンブルク。イスラム過激派でチェチェン出身のイッサという男の密入国を確認したドイツ諜報部のギュンターは、彼に近づきイッサの目的が銀行のとある秘密口座にあるとつきとめる。彼をすぐにでも逮捕したい上層部やアメリカCIAと、イッサを泳がせて銀行の橋渡しをし、もっと深くまで入りこもうとするギュンターは次第に対立していく。

フィリップ・シーモア・ホフマンに注目は集まるけれど、キャスト陣もウィレム・デフォーやロビン・ライトなど個性派、実力派がそろってる。私欲にとらわれず、弱きを助けようとする美人は役どころとしておいしい。レイチェル・マクアダムスはなかなかいい役立った。

そして、ダニエル・ブリュール。 しゃべったか?というくらいの脇役(笑)
別に彼じゃなくても良かったのではないかというくらいもったいない使われ方だった。


監督は、アントン・コービン。 
U2はじめ世界中のアーティストから敬愛されるフォトグラファー。
本作が長編3作目。過去2作も原作もので男っぽい。
アントン・コービンは、写真も映画も被写体はいつも“男らしい”。
男性の“男らしさ”を引き出すのがとても上手で、そしてそれが彼の特徴。
ジョン・ル・カレを題材に選ぶのも分かる。

そして、音楽はこれまた男っぽい、トム・ウェイツ。
アントン・コービンとも昔から親交があり、本作ではエンドロールで流れる。
アントン自身はとてもソフトなひとなのに、彼の作品は男祭りだ(笑)


<作品概要>
誰よりも狙われた男」  A Most Wanted Man
(2014年 アメリカ=イギリス=ドイツ 122分)
監督:アントン・コービン
原作:ジョン・ル・カレ
音楽:トム・ウェイツ
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォー、ロビン・ライト、グレゴリード・ブリギン、ニーナ・ホス、ダニエル・ブリュール、ホマユン・エルシャディ
配給:プレシディオ


2014年10月24日金曜日

ワン・ダイレクション THIS IS US  ONE DIRECTION


ワン・ダイレクション スーパーアイドルの素顔

スーザン・ボイルやポール・ポッツを生み出したイギリスのリアリティ音楽番組で、もっとも成功したのがワン・ダイレクション。
もともと個別にオーディションに臨んだ5人の少年がボーイズ・グループとして誕生し、瞬く間にトップアイドルとして世界中で有名に。

そんな彼らの世界ツアーに密着したドキュメンタリーが本作。彼らの素顔や、舞台の裏側が垣間みれる点ではファン必見。
監督が「スーパーサイズ・ミー」のモーガン・スパーロックということで観ることに。

オーディション番組「Xファクター」の審査員、サイモン・コーウェルがこの5人をグループにしようとの閃きから、1Dは誕生したのだとか。
サイモンは、本作の製作にも名を連ね、本当にやり手。

このオーディション番組発のグループは、日本で言うと、「モーニング娘。」や「ケミストリー」なんだけど、ちょっと昔の流行な感じ。だけど海外ではこのリアリティ番組が大流行り。


劇中、親のインタビューで、デビューしてから2年半ほどで家に帰ってきたのが数日で哀しい、という切実な想いが語られる。それだけの多忙さも伝わる。
普通の高校生が一夜にしてスーパーアイドルになって、普通に街中を歩く経験もないまま大人になっていく。ちょっと心配さも感じてしまった。

日本では、NTTドコモのCMで「Story of My Life」がヘビーローテーション。



<作品概要>
ワン・ダイレクション THIS IS US」 ONE DIRECTION
(2013年 アメリカ 93分)
監督:モーガン・スパーロック
製作:サイモン・コーウェル
出演:ワン・ダイレクション(ナイル・ホーラン、ゼイン・マリク、リアム・ペイン、ハリー・スタイルズ、ルイ・トムリンソン)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント

2014年10月22日水曜日

[短編] シャネルのショートフィルム The One That I Want


シャネルがショートフィルムを発表 ミューズは、ジゼル・ブンチェン



シャネルの香水、No.5。伝統的なブランドにフォーカスしたこのショートフィルムを手掛けたのは、「ムーラン・ルージュ」や「華麗なるギャツビー」のバズ・ラーマン監督。
バズ・ラーマン曰く、
「10年前と今では我々のミューズは違う。今は、愛する家族に囲まれながらも憧れられる職業に就き、ロマンスの可能性も秘めている」

そんな世界観を託されたミューズは、ジゼル・ブンチェン。
ブラジル出身のスーパーモデル。 ディオール、D&G、ヴィトンなど数々の有名ハイブランドの広告塔を務め、世界で最も稼ぐファッションモデルとして知られている。


お金持ちのマダムというより、キャリアでありながらしっかり家庭も持ち、それでいて“女”をキープし続けるいいオンナ。
そんなシャネルが提案するターゲット像が見えるショートフィルム。


<作品概要>
CHANEL No.5  The one That I Want
(2014年 フランス 3分)
監督:バズ・ラーマン
出演:ジゼル・ブンチェン、マイケル・ユイスマン、ロー・ファング
製作:シャネル

2014年10月18日土曜日

グレース・オブ・モナコ  Grace of MANACO


ニコールのエレガントさが際立つ映画

女優ってキレイに映らなくちゃいけないから大変だな、と勝手に違うところの感想を持ってしまう。そのくらいニコールをキレイを見せようとがんばってる感の方が伝わってしまった。

南仏に隣接する世界で2番目に小さな国、モナコ公国。1962年、フランスに課税をするかフランス領にされるかという、海に面した美しい国に訪れた大ピンチを、この国に嫁いでプリンセスとなったハリウッド女優グレース・ケリーは、女優は引退しつつも一世一代の大芝居に打って出る。

ロケーションやファッション、美術はとにかくキレイ。崖の上の古城の夜のライトアップは本当にロマンティックな光景。だけど実際のロケーションはフランスのマントンやイタリアでも行われたとか。1950年代当時のモナコと現在では大分変わってしまっているようで、イメージを出すためにいくつかの場所の風景で構成されている。

そして、衣装にはクリスチャン・ディオール、ジュエリーはカルティエが提供。ランバンのドレスにシャネルのアンサンブルスーツ、エルメスはスカーフやケリーバッグで協力とハイブランドがこぞって衣装協力している。
ちなみにグレース・ケリーが妊娠を悟られないようパパラッチからお腹を隠した大きなバッグが後に“ケリーバッグ”と言われるようになったのは有名な話。

ニコールはハイブランドがとにかく似合う。ケイト・ブランシェットにも負けないエレガントさ。「ブルージャスミン」では偽物セレブだったけど、こちらは貴族という完全なるセレブ。そこに負けないニコールの優雅さはさすが。


<作品概要>
グレース・オブ・モナコ」  Grace of MONACO
(2014年 フランス=アメリカ=ベルギー=イタリア 103分)
監督:オリビエ・ダアン
出演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス、フランク・ランジェラ
配給:GAGA


2014年10月11日土曜日

時をかける少女[アニメ版]

やっぱりアニメ版が素晴らしい!

細田監督がブレイクした名作アニメ版「時をかける少女」。
原作や実写映画版とは登場人物は違うが役回りや展開は大体同じ。
二度と取り戻すことができない「青春」という限られた時期と、何度も時間を行き来できる「タイムリープ」という特殊能力が、上手く交錯していて、この作品ならではの世界観を醸し出している。

天真爛漫でちょっとおバカな女子高生、紺野真琴は、ひょんなことから過去に遡れるタイムリープができるようになる。苦手なテストの回答や嫌なことを避けるためにタイムリープを使いまくる真琴だが、やがてその能力にリミットがあることを知る。

声優の仲里依紗(真琴役)がかなりいい! おバカでやんちゃな真琴の雰囲気が良く出ている。仲里依紗は、その後の実写版でも主人公役を務めたりしている。

そして、主人公・真琴の叔母役で、原作の主人公・芳山和子の名前が。
魔女おばさんと呼ばれていて、真琴のタイムリープを理解して、自身も若いころに体験した話など、原作のにおいを出している。


魔女おばさんが働いているのは、上野の東京国立博物館。(トーハク)
ここは日本最古の美術館なんだとか。

それに劇中でキーとなる絵画は、「白梅二椿菊図」という名だそうで、
実在する絵ではなくてアニメーターの平田敏夫さんの作。
日本画家でない人がオリジナルであんな絵を描けるなんて、、


「時をかける少女」は、映画化やドラマ化が多いタイトルだけど、
やっぱりこのアニメ版が一番いい。
劇場公開時は、わずか21館スタートが1ヶ月以上経っても立ち見が出るなど
作品の評判が口コミによって広まり、トータル100館以上で上映される
大ヒット作品となった。

この作品で一躍名をあげた細田守監督は、次回作「サマーウォーズ」も
大ヒットを記録し、「オオカミこどもの雨と雪」は大作として公開。
マッドハウスから独立して「スタジオ地図」を立ち上げ、「オオカミこども~」は
スタジオ地図での制作になっている。

ここまでくるにはいろいろと紆余曲折があったみたいだけど、
今やポスト宮崎駿の日本アニメ業界でのキーマン。
間違いなく今後のアニメーション業界を代表していく人物。


<作品概要>
時をかける少女
(2006年 日本 104分)
監督:細田守
出演:仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、原沙知絵、谷村美月、垣内彩未、関戸優希
配給:KADOKAWA

2014年10月8日水曜日

屋根裏のポムネンカ  Na pude aneb Kdo má dneska narozeniny?


キモかわいいのか!? チェコ版「トイ・ストーリー」

いまの時代にかなりアナログなアプローチ。
でも伝統的な手法でチェコアニメを届けてくれることに感謝。リアルタイムでこれが観れるのはすごくありがたい。

それにしてもチェコアニメの毒々しさや、キモさのあるパペットアニメの伝統は何なんだろう。
日本のアニメーションとは完全に一線を画している。

屋根裏部屋に収納されたおもちゃたちは、人間たちのいない時間に、思い思いに動き出し、自分たちの世界で平和に暮らしていた。ところがある日、悪の支配者フラヴァによって、みんなのアイドルのポムネンカがさらわれてしまう。さあ大変。おもちゃたちは一致団結してポムネンカ救出作戦を立て、フラヴァの元へ向かう。


人間のいない間におもちゃたちが動き出すのは、まさに「トイ・ストーリー」にもあるような昔ながらのアイデア。でもアメリカとチェコでこうも表現が違うものかと思うととても面白い。


実写を融合させた悪者フラヴァの姿は思わず笑ってしまう。フラヴァの側近のドクトルは何ともキモい。この毒々しい表現はチェコならでは。
もぐらくんのクルテクやアマールカなどカワイイ系もかなりあるけど、このイジー・バルダやヤン・シュバンクマイエルなどダーク系もいてチェコのアニメ作家は面白い。


<作品概要>
屋根裏のポムネンカ」 Na pude aneb Kdo má dneska narozeniny?
(2009年 日本=チェコ=スロバキア 72分)
監督:イジー・バルダ
出演:ルツィエ・ペルメトヴァー、ボリス・ヒブネル、ウラディミール・ヤヴォルスキー、イヴァン・トロヤン
配給:アットアームズ

2014年10月3日金曜日

ジャージー・ボーイズ  Jersey Boys


街灯の下でうまれた“自分たちの音”の物語

クリント・イーストウッドがミュージカル映画を撮った!? というまさか情報から入ったから最初は大丈夫かと思ったけど、ブロードウェイの大ヒットミュージカルの映画化であることを後から知って安心。
フォーシーズンズは主なヒット曲しか知らなかったけど、この映画で背景や生い立ちまでよく分かった。これで日本でもまた過去の名曲たちに陽の目が当たるはず。

1960年代、ニュージャージーの貧しいイタリア移民街の理髪店で見習いとして働くフランキーは、そのたぐいまれな歌唱力で、常連客のマフィアのドンはじめ近所でも有名な少年。やがてチンピラのトニーらのバンドに加わり、作曲の才能に恵まれたゴーディオも迎え、バンドは全米No.1ヒットを生むまでに成長をしていく。


60年代のイタリア移民街とは、デニーロとスコセッシ、アル・パチーノとコッポラが描いてきたマフィアの世界。 彼らもそのままいけば床屋のおやじかマフィアのチンピラになっていただろう。その中で音楽で成功できたのは、同じくニュージャージー出身で、己の歌唱力でトップスターに成り上がったフランク・シナトラの影響が大きい。
具体的に目指せる目標(憧れ)があったからこそ、「音楽でも成功できる」という希望が持てたんだ。

主演のジョン・ロイド・ヤングが歌い始めた時は、「何ぢゃこの声は」と思ったけど、原曲もいま改めて聞くとすごい高音域の裏声。曲になじみ過ぎててあまり意識してなかったけど、すごい歌声だったんですね。
ヤングは、厳しい審査を勝ち抜いたブロードウェイのミュージカルで、ずっと主演を務めていた役者だけに、適役だったんだろう。
▼原曲はコチラ

そして、まさかジョー・ペシが一枚噛んでいるとは!
同時代のマフィアを描いた「グッドフェローズ」のジョー・ペシの役名は、なんと、トニー・デヴィート。
このあたりの関係性が分かってくるとさらに面白い!

それにしても、イーストウッドは老け顔メイクがお好きなようですが、Jエドガーといい、そんなにアップに映さなくてもいいんじゃないでしょうか。。。
サラリな感じでいいと思います。

映画は、昔ながらの流儀で仲間を大切にして、握手だけの「契約」が紙面で交わす契約書よりアツい約束であったりするあたりがイーストウッドっぽくていい!


<作品概要>
ジャージー・ボーイズ
(2014年 アメリカ 132分)
監督:クリント・イーストウッド
出演:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、マイケル・ロメンダ、ビンセント・ビアッツァ、クリストファー・ウォーケン、マイク・ドイル、レネー・マリーノ、エリカ・ピッチーニ
配給:ワーナー・ブラザース映画

2014年10月2日木曜日

プロミスト・ランド  Promised Land


“シェール革命”の裏側が見える

シェール革命と言われるようにシェールガスはアメリカにとってエネルギー産業を中心とする経済だけでなく、政治や軍事にまで影響した大きな出来事。

シェールガスの発見で、アメリカは世界最大のエネルギー資源輸入国から世界有数のエネルギー資源輸出国へと変わった。
そのくらい大きな出来事で、日本でもマスコミで大きく報道されて、今でも記事になったりする。
だけど下降線をたどるアメリカ農村部の住民たちの間で救世主なのか環境破壊なのかという問題が起きていることは知らなかった。

大手エネルギー会社の敏腕セールスマンのスティーブは、新しい営業エリアの地権者たちを順当に口説き落としていた。ところが、ある日、町内集会で異議を唱えた元大学教授による環境破壊への指摘によって、決議は延期されてしまう。更にその噂を聞きつけた環境保護団体のメンバーが妨害活動を始め、住民たちの意見は割れスティーブは苦境に立たされる。スティーブは危機を脱するために奮闘するが。


ストーリーとしても結構良くできていて、意外な展開に思わずダマされちゃうほど。
監督は、ガス・ヴァン・サントだけど(マット・デイモンとは3度目のタッグ)、脚本は主演の2人、マット・デイモンとジョン・クラシンスキーが書き上げている。俳優なのに脚本家としてもなかなかやるな、この2人。
マット・デイモンにしては元々この作品で監督もする予定だったらしい。それがあまりの多忙さにスケジュールが合わず、信頼のおけるガス・ヴァン・サントにバトンタッチのお願いをしたのだとか。


石油の輸入大国だったアメリカは産油国である中東から安定した石油確保をするために積極的に軍事介入をしてきたけど、シェール革命によって中東への興味は薄れてしまった。
劇中でも、中東への戦争で親を亡くした子どもがいて、「そいつの親は何のために死んだのか」というようなセリフが出てきて、その矛盾にふれている。

社会派なテーマはマット・デイモンらしい。
シェール革命に沸くアメリカの内側を舞台に、人間らしさや、人としてどう生きるかを考えさせられる作品。


<作品概要>
プロミスト・ランド」  Promised Land
(2012年 アメリカ 106分)
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド、ローズマリー・デウィット、ハル・ホルブルック
配給:キノ・フィルムズ