2013年10月31日木曜日

サブマリン  SUBMARINE


古いのに新しい!新世代感覚の映画。

とにかく絵になるクラシックな英国風景がハマる。世界観ができあがっていて、ウェス・アンダーソンの英国版という感じだろうか。(ウェス・アンダーソンの方が世界観はできあがってるけど。)

監督はこれが初となるリチャード・アヨエイド(本当の発音はアイオーアディ。スペルが、AYOADE)。アークティック・モンキーズなどUKのロックバンドのPVを多く手がけてきた。そしてプロデューサーはなんとベン・スティラー。

舞台は80年代の英国ウェールズ。イケてない15歳男子のオリバーは妄想して日々を過ごすが、ある時クラスメイトのジョルダナに恋をする。初恋やら両親の離婚危機やらオリバーの青春がハイセンスな映像とともに描かれる。


2011年の第24回東京国際映画祭で上映され、国内では恐らく未公開。レンタルでは“TSUTAYAだけ”のコーナー(?)でようやくリリース。こんなに良いのにDVDのみの展開なんてもったいない! 携帯もメールもない時代、授業中にメモ書きが回覧されてきてオリバーに回ってきたときに先生に見つかりみんなの前で読み上げさせれる。なんとも懐かしい展開。というか日本と変わらない(笑) そんな何でもない高校生の日常をハイセンスな映像で魅せる。早いカット割りや8mmフィルムの映像などを駆使してテンポよく展開していて、良い意味でイマドキ。
※ベン・スティラーもカメオ出演してる


そして、音楽がいい! アークティック・モンキーズのフロントマン、アレックス・ターナーの楽曲が全編流れ、アレックス本人もこのサントラでソロデビューを果たしている。
本編でも、これまた冴えない主人公オリバーのお父さんが若い頃に聞いていたというカセットテープをオリバーにくれるという感じでも流れ、いいところで使われる。というか、PV出身の監督だけに音楽ありきなのか。

Alex Turner
リチャード・アヨエイド(アイオーアディ)監督は、新作が第26回東京国際映画祭で公開。「ザ・ダブル/分身」。ジェシー・アイゼンバーグ主演で、文豪ドストエフスキーの「二重人格」をモチーフに近未来設定で描くラブストーリー。


アークティック・モンキーズの他にも、ヴァンパイア・ウィークエンド、カサビアン、ヤー・ヤー・ヤーズなどのPVも手がけている。
※参照

そして彼はもともとコメディアンとしても活躍している。
かれのコメディ番組もおもしろい!(字幕なしだけど楽しめる)


とにかく要チェックな監督。これからの作品がとても楽しみ!


<作品概要>
サブマリン」 SUBMARINE
(2010年 イギリス 96分)
監督/脚本:リチャード・アヨエイド(アイオーアディ)Richard AYOADE
原作:ジョン・ダンソーン
製作:ベン・スティラー
出演:クレイグ・ロバーツ、ヤスミン・ペイジ、サリー・ホーキンス、パディ・コンシダイン、ノア・テイラー
配給:

2013年10月30日水曜日

[CM] ミシェル・ゴンドリー Gillette Training Tracks


ミシェル・ゴンドリー6年ぶりのCM!


「ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜」が公開された映画監督ミシェル・ゴンドリーの久しぶりとなるCM作品。ひげ剃りメーカーのジレットのCM。ジムでアスリートたちが奏でる音が重なり合い、ひとつのリズムになっていく。「さすが!」とうなりたくなる!


Gillette Training Tracks



映像とリズムを合わせる作品で言うと、ケミカルブラザーズでのPVも秀逸。


The Chemical Brothers - Star Guitar




もう、「天才」としかいいようがない。現代を代表する映像作家。
こんな人に仕事を依頼できるのであれば是非してみたい。
そして彼の作品がまだ見れるということはとても幸せなこと。いろいろな映像作品を発表してもらいたい。


<作品概要>
「Gillette Training Tracks」
(2013年 フランス 2分)
監督:ミシェル・ゴンドリー
提供:ジレット(Gillette)


2013年10月29日火曜日

ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜  Le' cumu les jours


ミシェル・ゴンドリーによるボリス・ヴィアンの世界。

まさにゴンドリーワールド!ミシェル・ゴンドリーの創りだす世界観や美術が好きな人は十分堪能できる作品。アナログな材料を用いて未来的なハイテク機器を描くあたりは、ビョークなどのPVでもいかんなく発揮されてきたものだ。

働かなくても暮らしていける裕福なロランは、ある日とても素敵な女性クロエに出会い、ひと目惚れしてしまう。やがてふたりは恋に落ち、結婚し幸せな日々を送る。ところがクロエは肺に睡蓮の花が咲くという不思議な病にかかってしまう。クロエの治療のために莫大な費用がかさみやがてコランはお金を稼ぐために働きに出るまでに。クロエへの愛のために身も心も疲れ果てていくのだが。

原作は、ボリス・ヴィアンの「うたかたの日々」。現代恋愛小説の古典とも言われるヴィアンの代表作だ。彼は作家のほか、翻訳家、音楽家、歌手、俳優、エンジニアなど様々な肩書きをもつマルチな才能の持ち主。そして39歳という短すぎる生涯を終えている。
彼の文章は言葉遊びが多く、世界の翻訳者泣かせと言われる。キュートで残酷、悲痛で幸せ、自由でファンタジーな幻想世界は、創造力と想像力の逞しい、そして素朴な素材でやわらかい表現のクリエイティブが得意なミシェル・ゴンドリーだから描けた世界だ。とても相性が良かったのだろう。

虫のように動くベル、画面のシェフと会話できるキッチン、曲の音色に合わせてカクテルが作られるカクテルピアノなど彼のアイデアがたっぷりと詰まっている。中でもロランとクロエがデートするクレーンで釣られ空中浮遊する乗り物はとてもロマンティックな乗り物だ。(実際乗ったら相当怖いはず)


「最強のふたり」で一躍有名になったオマール・シーもいい役どころで登場。モテ男の彼が踊る「ビグルモア」(架空のダンス)は長い足がより強調されすごい絵面だ。あれはどうやって撮影しているのだろうか?

ミシェル・ゴンドリーは、もともとPVでの仕事が評価されたひと。そのキッカケとなったのがビョークの「ヒューマンビヘイビアー」だ。


アナログな素材をつかって手間ひまかけて最新なことをやるあたりゴンドリーの真髄がみえる。相当なオタク(笑)
ちなみにこのハリネズミの映像の元ネタはロシアのアニメーション作家ユーリ・ノルシュテインの代表作「霧につつまれたハリネズミ」からきている。こちらも良い作品。


タイトルの「ムード・インディゴ」はわざわざ付けた英題なのだとか。とにかくこの作品、ミシェル・ゴンドリーのアイデアが満載だ。


<作品概要>
ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜」  L'ecume des jours
(2013年 フランス 95分)
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、ガド・エルマレ、オマール・シー、アイッサ・メガ
配給:ファントム・フィルム

2013年10月23日水曜日

鉄拳 パラパラ漫画作品集第一集「振り子」


パラパラ漫画の領域を超えた感動作品!

お笑い芸人“鉄拳”が発表した作品が、YouTube再生回数300万回を突破、英国のバンドMUSEの公式PVにも決定と発表直後からネットを中心に話題となった。

ある夫婦の生涯を時計の振り子の背景と連動させて表現する秀逸な感動巨編。

▼『振り子』

初めて観たのはテレビ番組。何の番組だか忘れたけどパラパラ漫画対決を他の共演者とやっていた。そして鉄拳は別格だった。番組出演者も涙ぐむほど力強いインパクト。直後からネットで話題に。





この時期、鉄拳は芸人としての行き詰まりを感じ真剣に引退を考えていたとか。最後の大仕事とばかりにこの作品に打ち込んだ。シナリオから原画の書き下ろしに半年をようし、原画は数千枚に及んだらしい。そしてテレビ番組で作品と才能が評価され、それからイラストの仕事が舞い込んでくるようになった。

そして、NHK朝の連続ドラマ小説「あまちゃん」の劇中画に抜擢されることになる。


更には、劇中歌である「潮騒のメモリー」のCDジャケットにも!



何たるサクセスストーリー!渾身の作品が今につながる評価を生んだ。ここで慢心せずにその才能をいかんなく発揮してもらいたい。


<作品概要>
鉄拳 パラパラ漫画作品集第一集 『振り子』
(2012年 日本 4分29秒)
監督:鉄拳
出演:
配給:よしもと興業

2013年10月22日火曜日

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ  Exit through the gift shop


バンクシーが仕掛ける映画的トラップ!

アートをしてアートの世界に収まらず、社会的、政治的、国際的メッセージをアート表現で世界に発信しつづける謎のアーティスト“バンクシー”が映画を作った。アート業界のあり方を皮肉る仕掛けがどこまでがリアルなのか分からない。もう全部だまされちゃったとしても、映画としてこれは面白い!

アメリカに移住したフランス人ティエリーは、ビデオカメラ中毒。いつでもカメラをまわし友人たちは、もはやカメラが気にならない。ひょんなことからストリートアートにハマり、アーティストたちを撮り続ける。彼らのドキュメンタリー映画を作るという名目で。やがて唯一撮影できていないストリート界・伝説のアーティスト“バンクシー”の撮影ができる幸運に恵まれる。ストリートアートの世界の中枢にアート素人のティエリーはグイグイと食い込んでいく。そしてバンクシーから「撮影よりアートを作ってみては?」という助言をキッカケにティエリーは、一気に大勝負にでる。



ティエリーという“アーティストを撮り続ける男”へのインタビュー形式で今のアーティストたちの生の姿を映し出した点は、普段見えないところだけに貴重だ。(アーティストたちは夜影にまぎれて、壁や塀にスプレーで作品を描き上げる)
それに「落書き」としてすぐに消されてしまったりするので「記録」されることは、その作品の記憶を残す役割も果たす。
特にバンクシーの公衆電話の作品の創作過程や、バラまこうとして止めた偽札作品など世に出ていない“未遂作品”も観れて貴重だ。


ティエリーは、ミスター・ブレインウォッシュ(MBW)として大成功を収めていく。陽気で間抜けでテキトーな彼の成功ぶりはすごい。彼のアーティストとしての才能の無さと、宣伝によってBWMに群がるファンとの対比がイタい。そこがバンクシーの言わんとするところなのだろう。もともとつけようとしていた映画のタイトルは、「クソのような作品をバカに売りつける方法」。(苦笑)
アートとは何なのか。何をもって価値とするのか。アート業界においてそれが問われるど真ん中にいながら自らその問題提議を題材にするところ。やはりバンクシーただものではないです。



「アメトーク」で絵心ない芸人たちの絵をアート風にしたらそれなりに見えて、N.Yの個展に出してみたら売れた(確か)というのをやってたけどそれを思い出してしまった。アーティストの方々はどう思うのだろうか。

チュート徳井 ポップアート風

雨上がり蛍原 ピカソ風
アートに対する問題提議はいろいろとあるものの、この映画で一番すごいと思うのは、やはり何と言ってもバンクシーの作品だ。表現方法といい、メッセージ性といい素晴らしい!






<作品概要>
イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」 EXIT THROUGH THE GIFT SHOP
(2010年 アメリカ=イギリス 90分)
監督:バンクシー
出演:ティエリー・グエッタ、スペース・インベーダー、シェパード・フェアリー、バンクシー
配給:パルコ、アップリンク



2013年10月9日水曜日

謝罪の王様


「あまちゃん」の次は“謝罪”がテーマ!

「あまちゃん」が大ヒットのクドカンが次に手がけたのが本作。監督に水田伸生、主演に阿部サダヲを迎え、「舞妓haaaaan!!!」、「泣くもんか」のゴールデントリオで劇場に笑いを起こす。

宮藤官九郎の笑いを体現するのに阿部サダヲはやはりすごい。絶妙な「間」と体全体をつかった「つっこみ」。井上真央ちゃんもがんばっていた(かわいかったし)、けど阿部サダヲはやっぱりすごかった。

“謝罪師”黒島譲(阿部サダヲ)は、どんな相手でも謝り倒し何でも解決してしまう謝罪のプロ。ひょんなことからアシスタントをすることになった倉持典子(井上真央)とともに、ヤクザの車への追突事故から国際問題まで、あらゆる手を使って問題を解決していく。そして土下座を超える究極の謝罪方法「土下座の向こう側」とは。


全部で7話からなるオムバス構成になっていて、次々と問題を解決し徐々にバラバラだった7つの話がつながっていく。そして黒島が謝罪師になることを決意した過去まで明らかに。
細かいギャグが満載でクドカンファンであればとにかく笑ってちょっと感動したりして楽しめるだろう。阿部サダヲが体現するクドカン流の笑いは実際面白い。映画では、竹野内豊、松雪泰子、尾野真千子、MATSU、高橋克実、濱田岳、六角精児、荒川良々などなど、豪華キャストを巻き込み笑いの世界を作り上げていく。(映画のエンドロールでジョン・カビラの名前があったけど、どこに出ていたのか。。。)


それにしても、岡田将希はコメディにハマると改めて思った。映画「告白」でも場違いなテンションの熱血教師を演じ“空気読めてない感”をみごとに出していた。本作でもセクハラで訴えられているにも関わらず「なんか〜、しゃあせん」と反省を全く感じさせない謝罪ぶりで笑わせてくれる。この映画、N.Yのプレミア試写でも爆笑だったとか。

エグザイルとE-girlsがエンディングをつとめ、最後まで見せ場を作ろうというサービス精神が伝わる。何も考えずに楽しむにはいい。


<作品概要>
謝罪の王様
(2013年 日本 128分)
監督:水田伸生
脚本:宮藤官九郎
出演:阿部サダヲ、井上真央、竹野内豊、尾野真千子、岡田将希、荒川良々、濱田岳、MATSU(松本利夫)、鈴木伸之、小松和重、美波、柄本時生、六角精児、中野英雄、白井晃、濱田マリ、嶋田久作、池田鉄洋、岩松了、小野武彦、高橋克実、松雪泰子
配給:東宝

2013年10月6日日曜日

相棒シリーズ X DAY


相棒シリーズのスピンオフ企画

田中圭と川原和久の全く性格の違う二人がコンビを組み、互いにいがみ合いながらもそれぞれ独自のアプローチで事件の真相を暴いていく。

監督は「探偵はBarにいる」シリーズの橋本一。
刑事ドラマや時代劇路線が得意みたい。人気ドラマのスピンオフ企画ではあるが、右京さん(水谷豊)たちもちょい出演。

個人情報の機密漏洩でマークしていた男が死体で発見される。実は他殺でないかと捜査を進めるふたりに捜査を妨害する圧力がかかりはじめる。政財界の影や金融封鎖計画「Xデイ」の存在が明らかになっていく。

2013年10月4日金曜日

凶悪


リリー・フランキーが飄々と怪演!“先生”という名のモンスター。

園子温の「冷たい熱帯魚」のような陰鬱とした闇の世界。でもそこは普段何事もないかのように暮らしている普通の世の中。そこに悪はいる。



死刑囚“須藤”のある日の告白から物語は始まる。「自分には誰にも言ってない余罪がある、そしてそれは“先生”と呼ばれる男が全て首謀したものだ、自分はシャバでそいつがのうのうと暮らしているのが許せない」と。週刊誌の記者・藤井はこの事件にのめり込んでいく、そして真実が次々と明らかになっていく。実話を基にした話。

2013年10月2日水曜日

オン・ザ・ロード  ON THE ROAD


これぞ、ビートジェネレーション!

この時代の空気感、カルチャーがそこにはあった。監督はウォルター・サレス。ブラジル人ながらアメリカのカルチャーを題材にみごとに作り上げ、そして伝わった。この時代の空気感はこうだったのだと思う。「モーター・サイクル・ダイアリーズ」に続きみごとな青春ロードムービーを届けてくれた。

原作は、ジャック・ケルアックの自伝的小説「路上」。ビート文学を代表する作品。

1949年、作家志望のサルは、自分の本能に素直に生きるディーンと出会い、彼の生き様に魅力を感じ旅をともにする。彼の破天荒な行動は周りを巻き込み、恋人や家族、友人を犠牲に走り続ける。やがてサルをも捨てていってしまう。数年後、新しい生活を送るサルのもとにやつれ果てたディーンが現れた夜。いままで旅で書き溜めたメモを引っ張り出し、紙をひと続きにテープでとめ、一気にタイプライターをたたく。



ディーンはこの時代の象徴なのだろう。いなくなった父親を探し続けるように、自分の心にぽっかり空いた穴を埋めるべく走り続けなければ生きていけない人種なのだ。自分の欲求に素直で常に刺激と自由を求め旅立ってしまう。破滅すると分かっていても止められない。

ディーンのモデルになった、ニック・キャサディは実際にこのような破天荒な人物だったらしい。結局キャサディ自身は一冊も本を書いていないのに、他のビート作家によって本の登場人物のモデルにされ、カウンターカルチャーの中で伝説的な人物となり、40代の時メキシコで死体が発見された後もずっとヒッピーたちに愛され続けた。
そのくらい強烈な人物だったのだろう。


キャストも良かった。ディーン演じるギャレッド・ヘドランドはこの破天荒キャラをよく体現できていたと思うし、サルを演じたのはアントン・コービンの「コントロール」に主演したサム・ライリー。寡黙な感じがよく出ていた。クリスティン・スチュアートもヌード姿を披露し若手のハリウッドスターながら体を張っていた。
しかしこの時代、日本は戦後まっただ中で若者にこんな余裕はなかったはず。アメリカはこうだったのかとその歴然とした差に愕然とする。


たびたび劇中に登場するプルーストの「スワン家の方へ」、ランボーの詩集、ジャズ、クラシックな車、美しいメキシコの風景、青春の熱気、などなど
旅がしたくなる映画だ!



<作品概要>
「オン・ザ・ロード」  ON THE ROAD
(2013年 フランス=イギリス=アメリカ=ブラジル 139分)
監督:ウォルター・サレス
製作:フランシス・フォード・コッポラ
出演:サム・ライリー、ギャレッド・ヘドランド、クリステン・スチュワート、エイミー・アダムス、トム・スターリッジ、アリシー・ブラガ、キルスティン・ダンスト、ヴィゴ・モーテンセン

わたしはロランス  LAURENCE ANYWAY


本当に24歳? 新鋭グザヴィエ・ドラン!

10年にも渡る複雑過ぎるふたりの恋愛叙事詩。ただでさえややこしい恋愛事情に加え10年もの歳月を描くのにはある程度の経験がいるはずなのに。
グザヴィエ・ドラン。24歳にしてカンヌの常連。ガス・ヴァン・サントをして「グザヴィエの作品の大ファン」と言わしめる。監督・脚本だけでなく、プロデューサー、出演、編集、アートディレクションなど多才ぶりを発揮する間違いなく天才。

ロランス、35歳、イケメン。彼女のフレッドと同棲中。アントニオ・バンデラスをすっきりさせたようなベリーショートヘアがよく似合う男前。彼女のフレッドは歌手のAIをちょっと年取らせた感じ。仲睦まじいふたりだったが、ある日、ロランスは告白する。「女になりたいんだ」と。フレッドは激しく動揺するも、そんなロランスを受け入れ、応援し、一緒にいることを決意する。


ロランスは性同一性障害なのだ。
男性として生まれたけれど自分の中には女性の自分がいて、それを隠していることに耐えられなくなる。だけどフレッドのことは愛している。そしてイケメン。ん〜、複雑。
ロランスは女性として生きることを決意しフレッドは応援する、なんだかイベントごとのように明るく振る舞い、初めて女装して職場に向かう日を過ごす。その職場とは、なんと学校!(ロランスは教師なのだ) 女装初日、生徒で騒がしい教室にロランスが入ってきたときのあの空気感、そして間。更に女生徒が質問の手を挙げて・・・(笑) このあたりの展開、すごく巧い。



明るく振る舞うも実際は苦悩に耐えきれなくなるフレッド。カフェで失礼なウエイトレスに不満と想いをぶちまけるシーンは圧巻。この女優さん(スザンヌ・クレマン)、最初はおばさんっぽい印象だったけど、映画の最後にはとてもチャーミングな女性に思えた。
この他にも、涙があふれる場面でソファの上から滝ように水が降ってきたり、ふたりの幸せに満ちた逃避行の場面では、カラフルな服が舞う「(500)日のサマー」に匹敵する名シーンなど演出のみどころが多い。
複雑過ぎる状況でいかに愛せるか、究極のラブストーリーなのだ。

Xavier Dolan

音楽にもすごくこだわっていて、劇中にもPVになっている部分もある。
公式ページで見ることができます。
それにしても、すごい才能が出てきてものだ。

ポスターと実際映画を観た印象が大分違ったんだけど、国よってポスターのクリエイティブが全然違うのが面白い。

アメリカ版

ドイツ版

台湾版

<作品概要>
わたしはロランス」  LAURENCE ANYWAY
(2012年 カナダ=フランス 168分)
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:メヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ
配給:アップリンク

2013年10月1日火曜日

探偵はBarにいる2 ススキノ大交差点


あの探偵コンビが帰ってきた!

札幌はススキノを舞台に破天荒な探偵と相棒兼運転手のデコボココンビがまたまた難事件に立ち向かう。友人だったオカマのマサコちゃんが殺害された。警察の捜査は進まず探偵は独自調査に乗り出すが、大物政治家の影がちらつく中、謎の女から事件究明の依頼が届く。

北海道の人気者、大泉洋の代表作になるだろうか。全編札幌を中心に北海道を舞台に撮影される本作は、映画の興行成績も北海道でのアベレージが高い。ご当地映画が盛り上がるというひとつの型値を是非ここで確立してもらいたい。ご当地で人気の俳優を起用し、ご当地を舞台に描くシリーズ映画。当然このご当地での興行成績は良く、全国でも人気が出るような作品シリーズ。そんな映画のパターンがあっても良いのではないか。

大泉洋のライフワークとなるような、「寅さん」や「釣りバカ」のような長年愛される作品シリーズになってもらいたいと思う。そのためにも作品のクオリティは必須。スタッフ・キャストには是非がんばってもらいたいものだ。

探偵は常にバーにいる、携帯は持っていない、胃が痛くなると胃薬を飲む(太田胃散、大泉洋はスクラートのCMにでているけど(笑))、めっぽう強い相棒がいる、女に弱い、行きつけの喫茶店のウエイトレスに誘惑されている、お金はない、仲間意識が強い、などなど、この作品ならではの色んなキーワードを持っていてもらいたい。


<作品概要>
探偵はBarにいる2 ススキノ大交差点」
(2013年 日本 120分)
監督:橋本一
出演:大泉洋、松田龍平、尾野真千子、渡部篤郎、ゴリ、田口トモロオ、浪岡一喜、松重豊、マギー、池内万作、安藤玉恵、麻美ゆま
配給:東映