2013年10月29日火曜日

ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜  Le' cumu les jours


ミシェル・ゴンドリーによるボリス・ヴィアンの世界。

まさにゴンドリーワールド!ミシェル・ゴンドリーの創りだす世界観や美術が好きな人は十分堪能できる作品。アナログな材料を用いて未来的なハイテク機器を描くあたりは、ビョークなどのPVでもいかんなく発揮されてきたものだ。

働かなくても暮らしていける裕福なロランは、ある日とても素敵な女性クロエに出会い、ひと目惚れしてしまう。やがてふたりは恋に落ち、結婚し幸せな日々を送る。ところがクロエは肺に睡蓮の花が咲くという不思議な病にかかってしまう。クロエの治療のために莫大な費用がかさみやがてコランはお金を稼ぐために働きに出るまでに。クロエへの愛のために身も心も疲れ果てていくのだが。

原作は、ボリス・ヴィアンの「うたかたの日々」。現代恋愛小説の古典とも言われるヴィアンの代表作だ。彼は作家のほか、翻訳家、音楽家、歌手、俳優、エンジニアなど様々な肩書きをもつマルチな才能の持ち主。そして39歳という短すぎる生涯を終えている。
彼の文章は言葉遊びが多く、世界の翻訳者泣かせと言われる。キュートで残酷、悲痛で幸せ、自由でファンタジーな幻想世界は、創造力と想像力の逞しい、そして素朴な素材でやわらかい表現のクリエイティブが得意なミシェル・ゴンドリーだから描けた世界だ。とても相性が良かったのだろう。

虫のように動くベル、画面のシェフと会話できるキッチン、曲の音色に合わせてカクテルが作られるカクテルピアノなど彼のアイデアがたっぷりと詰まっている。中でもロランとクロエがデートするクレーンで釣られ空中浮遊する乗り物はとてもロマンティックな乗り物だ。(実際乗ったら相当怖いはず)


「最強のふたり」で一躍有名になったオマール・シーもいい役どころで登場。モテ男の彼が踊る「ビグルモア」(架空のダンス)は長い足がより強調されすごい絵面だ。あれはどうやって撮影しているのだろうか?

ミシェル・ゴンドリーは、もともとPVでの仕事が評価されたひと。そのキッカケとなったのがビョークの「ヒューマンビヘイビアー」だ。


アナログな素材をつかって手間ひまかけて最新なことをやるあたりゴンドリーの真髄がみえる。相当なオタク(笑)
ちなみにこのハリネズミの映像の元ネタはロシアのアニメーション作家ユーリ・ノルシュテインの代表作「霧につつまれたハリネズミ」からきている。こちらも良い作品。


タイトルの「ムード・インディゴ」はわざわざ付けた英題なのだとか。とにかくこの作品、ミシェル・ゴンドリーのアイデアが満載だ。


<作品概要>
ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜」  L'ecume des jours
(2013年 フランス 95分)
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、ガド・エルマレ、オマール・シー、アイッサ・メガ
配給:ファントム・フィルム

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