バンクシーが仕掛ける映画的トラップ!
アートをしてアートの世界に収まらず、社会的、政治的、国際的メッセージをアート表現で世界に発信しつづける謎のアーティスト“バンクシー”が映画を作った。アート業界のあり方を皮肉る仕掛けがどこまでがリアルなのか分からない。もう全部だまされちゃったとしても、映画としてこれは面白い!
アメリカに移住したフランス人ティエリーは、ビデオカメラ中毒。いつでもカメラをまわし友人たちは、もはやカメラが気にならない。ひょんなことからストリートアートにハマり、アーティストたちを撮り続ける。彼らのドキュメンタリー映画を作るという名目で。やがて唯一撮影できていないストリート界・伝説のアーティスト“バンクシー”の撮影ができる幸運に恵まれる。ストリートアートの世界の中枢にアート素人のティエリーはグイグイと食い込んでいく。そしてバンクシーから「撮影よりアートを作ってみては?」という助言をキッカケにティエリーは、一気に大勝負にでる。
ティエリーという“アーティストを撮り続ける男”へのインタビュー形式で今のアーティストたちの生の姿を映し出した点は、普段見えないところだけに貴重だ。(アーティストたちは夜影にまぎれて、壁や塀にスプレーで作品を描き上げる)
それに「落書き」としてすぐに消されてしまったりするので「記録」されることは、その作品の記憶を残す役割も果たす。
特にバンクシーの公衆電話の作品の創作過程や、バラまこうとして止めた偽札作品など世に出ていない“未遂作品”も観れて貴重だ。
ティエリーは、ミスター・ブレインウォッシュ(MBW)として大成功を収めていく。陽気で間抜けでテキトーな彼の成功ぶりはすごい。彼のアーティストとしての才能の無さと、宣伝によってBWMに群がるファンとの対比がイタい。そこがバンクシーの言わんとするところなのだろう。もともとつけようとしていた映画のタイトルは、「クソのような作品をバカに売りつける方法」。(苦笑)
アートとは何なのか。何をもって価値とするのか。アート業界においてそれが問われるど真ん中にいながら自らその問題提議を題材にするところ。やはりバンクシーただものではないです。
「アメトーク」で絵心ない芸人たちの絵をアート風にしたらそれなりに見えて、N.Yの個展に出してみたら売れた(確か)というのをやってたけどそれを思い出してしまった。アーティストの方々はどう思うのだろうか。
チュート徳井 ポップアート風 |
雨上がり蛍原 ピカソ風 |
<作品概要>
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」 EXIT THROUGH THE GIFT SHOP
(2010年 アメリカ=イギリス 90分)
監督:バンクシー
出演:ティエリー・グエッタ、スペース・インベーダー、シェパード・フェアリー、バンクシー
配給:パルコ、アップリンク
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