2013年10月4日金曜日

凶悪


リリー・フランキーが飄々と怪演!“先生”という名のモンスター。

園子温の「冷たい熱帯魚」のような陰鬱とした闇の世界。でもそこは普段何事もないかのように暮らしている普通の世の中。そこに悪はいる。



死刑囚“須藤”のある日の告白から物語は始まる。「自分には誰にも言ってない余罪がある、そしてそれは“先生”と呼ばれる男が全て首謀したものだ、自分はシャバでそいつがのうのうと暮らしているのが許せない」と。週刊誌の記者・藤井はこの事件にのめり込んでいく、そして真実が次々と明らかになっていく。実話を基にした話。



リリー・フランキーの飄々とした演技はとても興味深い。彼にしか出せないあの味わいは、良くも悪くもイメージを変える。作品ごとに別人のように見える役者もいるが、リリー・フランキーの場合は全く変わらない。でも作品によってそのイメージは違う。「そして、父になる」では、いいかげんだけど子供に好かれる楽しい家庭を築くお父さんをみごとに体現した。「モテキ」ではチャラさ全開の社長(これが本人に近いのでは)もハマリ役。住宅メーカーのCMでは深津絵里と一緒に“家庭に帰る夫”を演じた。本作ではとても悪い男だ。残忍なことをしているのにいたずらをしてるんじゃなかと思うくらいの軽さ。飄々とした感じがすごく悪い。まじそうな娘がいて家庭ではちゃんとしたパパなのだろうに、モンスターのような殺人者だと知ったらと思うと娘がかわいそう過ぎる。「そして、父になる」とともに今年の日本アカデミー賞では助演男優賞の候補は間違いないだろう。


ピエール瀧も怖かった。狂気をはらんだ役がハマるひとだ。子供っぽいんだけど突然キレる感じがすごく体現できていた。山田孝之は相変わらず巧い。鬼気迫るのめり込みっぷりだった。とにかくキャストがハマっていた。

日活は100周年の老舗映画会社。いまやメジャーでは全くないけれど久々のヒット作となるのではないか。今後もコツコツと日本映画を盛り上げてもらいたい。


<作品概要>
凶悪
(2013年 日本 128分)
監督:白石和彌
出演:山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴
配給:日活

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