音楽の使い方が絶妙! little moaの楽曲が映える映画
吉田大八監督。やっぱり映画作りが巧い。
普通の主婦が、なぜ巨額の横領事件を起こしたのか?
一見地味な内容だけど、宮沢りえをとてもキレイに撮っていて、ファッションも良くてテンポがいいから最後まで飽きさせない。
一見は何不自由ない暮らしの梨花だが、夫とすれ違う日々の中、年下の大学生の光太と出会い親密になっていく。ある日、顧客から預かったお金を1時的に借りてしまう。最初は1万円だけだった。しだいに梨花は横領を繰り返すようになる。何かが吹っ切れたように。
原作は人気作家の角田光代の同名小説。
犯罪事件だけどお金というより、男と女のロマンスにフォーカスしている。
年下大学生の池松壮亮との関係が急するぎるけどそこはご愛嬌。
あのホームからゆっくりと降りてくるシーン。
実に映画的。
そして、little moaの曲がかぶさる。
あのシーンはサイコーにかっこいい!
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコの「Femme Fatale」が主題歌っていうことで目立ってますが、この映画の音楽は、little moaでしょ。
映画「紙の月」オリジナル・サウンドトラック |
それにしても、宮沢りえがキレイ。
最近は舞台などでも評価が高く、アラフォー女優として輝いている。
劇中のファッションも良かった。銀行員としての地味な制服とそこに羽織る同じネイビーの上着が清楚でオシャレで、制服姿の中で他の行員との違いがさりげなく演出される。
私服もシンプルなモノトーン調が基本。
だけど、ホテルでの豪遊を決め込んだ日。
待ち合わせのリゾート風の帽子姿は、ハッとするほどエレガント!
それまでが地味だっただけに、エレガントさが際立つ。
「トニー滝谷」の時もそうだったけど、こういう透明感があって、品がある人物像やファッションに宮沢りえはよく映える。
休日に繰り返すデートの時も、ファッションはカラフル。家庭にいる時との対比が服装にすごく現れている。
やりたいことをやり切った主人公と対極の軸として描かれるのが小林聡美の役どころ。
やりたいことが見つけられずに、冒険などせずに日々を過ごしている。
破滅するほど相手にそそぐのは、相手のためなのか、自分のためなのか。
それでも甘えを増長させて、結局は相手のためにはならない。
なんだかんだ犯罪はいけません。
最後、エンドロールが白かった。それも新鮮。
<作品概要>
「紙の月」 Pale Moon
(2014年 日本 126分)
監督:吉田大八
原作:角田光代
出演:宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司、小林聡美、平裕奈
配給:松竹