2016年2月22日月曜日

月夜鴉

掘り出し物、戦前のラブコメディ!

こういう面白い作品は名画座でないと出会えない。
チャキチャキな女師匠とできそこないので弟子。
このドS師匠とドMな弟子のコンビが掛け合いの相性も抜群で、展開も小気味良くて面白い。

家元・杵屋和十郎のひとり娘のお勝は、毎日弟子に三味線の稽古をつけるが、ある日一番できの悪い和吉から懇願され居残りで稽古をつけ始める。お勝の厳しい稽古にひたすらついてくる和吉とは、いつしかお互い思い慕う関係になっていく。しかしそれを知った父・和十郎は激怒し、お披露目の会で一番できの悪い和吉が上手く弾けなければ別れることを約束させる。バカの一つ覚えのごとく上達した和吉だが、果たして無事に弾くことができるのか。

お勝はつい手がでしまう。あまり頰を叩くから赤く腫れてしまって、他の弟子に目立ってしまうから、「じゃあお師匠さん、代わりにこれで僕をぶってください」と棒のようなものを差し出す和吉、あまりのドMぶりに笑いが漏れる(笑)

お勝は、一回りも若い和吉に旦那の真似をさせるために、前髪を落とさせ父の衣装を着せて街を練り歩き、お茶屋のお座敷にもあげる。
前髪を落として大人の着物をまとった和吉は、すっかり男前。
そこはさすが主演をはる高田浩吉。
戦前から松竹のスターとして活躍し、戦後は美空ひばりとの共演で再び人気となり、弟子の一人は昭和の映画スター鶴田浩二なんだとか。

高田浩吉
お勝役の飯塚敏子も松竹を代表する女優だそうで、とても上手で不思議な魅力のある女優。
監督は、井上金太郎で戦前は片岡千恵蔵の元におりそこから松竹に移ったのだとか。
それでも戦後すぐに52歳の若さで亡くなってしまった。

クライマックスのお披露目会。和吉の勝負の時。出番直前にあの子供がお勝の伝言を口するあの件はヒヤヒヤさせられる。笑いにしてもドキドキの演出にしてもとても巧くて、面白い。

やっぱりこういう予想外の面白さは、ノーマークの名画座で出会いたい。


<作品概要>
「月夜鴉」
(1939年 日本 100分)
監督:井上金太郎
原作:川口松太郎
脚本:秋篠珊次郎、依田義賢
出演:高田浩吉、飯塚敏子、藤野秀夫、舟波邦之佑、伏見直江
配給:松竹京都

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