2014年3月13日木曜日

ほとりの朔子


「海辺のポーリーヌ」ならぬ「ほとりの朔子」

夏のあいだ海辺の家にやってきた女の子。
リゾートファッションを身にまとい、男の子と木漏れ日の中、自転車に二人乗りする。
そのシチュエーションはフランス映画に出てくるバカンスの話のよう。
何か大事件が起こるわけではなく、ちょっとした恋にも似た気持ちのざわめきがある。

設定は完全に日本なんだけど、やってることはフランスのバカンスと一緒かもしれない。

受験に失敗した朔子(二階堂ふみ)は、叔母(鶴田真由)の誘いで夏の2週間、避暑地に訪れる。そこで叔母の幼なじみ(古館寛治)の甥の孝史(太賀)と出会う。徐々に距離が縮まっていくふたりだが、そこに娘の辰子(杉野希姫)や叔母の恋人の教授が加わり、大人たちは微妙な関係性をさらけ出していく。


深田監督は、エリック・ロメールに例えられたりする。実際、ロメールの「海辺のポーリーヌ」にタイトルからして似ているという指摘はパンフレットにも書いてあった。かなり影響を受けていることなんでしょう。

でも、さわやかな会話劇のロメールとは違って、ちょっと陰鬱でダークな香りがする。
それが深田監督の特徴なのかもしれない。そして、二階堂ふみがそんな雰囲気にマッチしていた。

監督の演出なのか、会話はとても自然体でアドリブのよう、特に古館寛治は自然過ぎてハマりすぎ(笑) だけど、物語の進行上に必要な話はしているのでセリフ通りで演出なのだろう。太賀もモジモジした男の子の役が自然体ですごくハマっていた。こういうヤツいるよねっていう感じ。


それにしても、二階堂ふみの魅力満載のPVかのような映画。二階堂ふみ目当てで行っただけにそこに終始されるとかえって気恥ずかしい。もっとダークな印象をポスターから感じていただけに、このまま爽やかに終わっちゃったらどうしようかと思ったけど、さすがにそれだけでは終わらない深田監督でした。後半の大人たちの複雑模様は笑えます。

線路を二人で歩くシーン。そこで会話に出る映画は、成瀬巳喜男の「秋立ちぬ」であるらしい。 残念ながらDVDにはなっていないらしく、どこかで特集上映でもやってくれない限り観れなそう。だけどそんなレア作品を仕込んでくるあたり、監督のシネフィルぶりが窺われます。


インドネシアの話が出てくるけど、その「9・30事件」という大虐殺事件。その当事者に、当時の様子を再現してもらおうという衝撃的なドキュメンタリー映画「アクト・オブ・キリング」が上映される。こちらも楽しみ。

日本風のバカンス映画。浪人生という大人でも子供でもない、どこにも属していないニュートラルな存在だからありえた時期に起こったひと夏の思い出。
フランス版だと「17歳」が同じようなシチュエーション。フランス人が撮るとこうも違うのかという感じです。 比べてみるのも面白い。

それにしても、映画の場面写真が少ない。個人的には、ふたりが夜にたどり着くカフェでの画が一番よかった。なぜあれを場面写真に使わないのか。


<作品概要>
ほとりの朔子
(2013年 日本=アメリカ 125分) 
監督:深田晃司
プロデューサー:杉野希姫
出演:二階堂ふみ、鶴田真由、太賀、古館寛治、平野直、杉野希姫、小篠惠奈
配給:和エンタテイメント


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