2014年3月20日木曜日
インポート、エクスポート IMPORT,EXPORT
ウルリヒ・ザイドル 確信犯の映画作家
「パラダイス」3部作のウルリヒ・ザイドルの前(2007)の作品、やはりここでも格差に体する皮肉がたっぷりだ。今回その対象になるのは、ホームに入れられた老人たちと、ウクライナの貧しい街の女性、そしてオーストリアの失業した青年。彼らは直接的、間接的に影響し合う。
ウクライナの田舎町。雪にまみれの寂れた場所で暮らすシングルマザーのオルガは、小さい子供を母親に託しオーストリアに出稼ぎに出る。家政婦をクビになるが、老人介護施設の職を得る。一方、失業したポールは養父の仕事の手伝いでウクライナに向かう。
オルガが住んでいる街が田舎すぎる。雪で真っ白だけど大自然な感じでは全然なく、寂れすぎた街。寒空に建つおんぼろビルが貧しさを際立たせる。こんなとこには絶対住めないと思わせる。
看護士では収入が少なくて、オンラインセックスのアルバイトを始めたりするけど、そのエロ動画の現場をモザイクが入るくらい一々リアルに撮ってみせる。
この監督は、太ったおばさんの裸でも、しわしわの老人でもとにかくそのままリアルに撮る。キレイに見せようとかかっこよく見せようとかと真逆で、そのままリアルにがポイント。
ドキュメンタリー出身だけにそれがザイドル監督のスタイルだ。
ようやく老人施設での看護の仕事に就けたオルガ。パーティの日のオルガと看護士のおばさんの本気の取っ組み合いはすごい、マジすぎて笑う。しかもケンカの理由がおばさんの相当勝手な思い込みでの恋心なのがすごい。中学生じゃあるまいし、いい年のおばさがんそれをやるから笑ってしまう(笑)
ザイドル監督の作品では、ガチの取っ組み合いが必ず出てくるけど演出は相当巧いんでしょう。
一方、オーストリアからウクライナに仕事にやってくるポールたちも、バーで女の子をひっかける。特に義理の父親は若い女の子にカネを握らせて「カネの威力を見せてやる」と裸でイヌの真似をさせたり、ベッドシーンをポールに見せつけたりとやりたい放題。
そして、そのシーンも一々ご丁寧にそのままリアルに撮り上げる。だからモザイクは必須。
オーストリアでは負け組のポールたちもウクライナに行けばお金の力でやりたい放題できる。ウクライナからオーストリア、オーストリアからウクライナ。決して幸せではない彼らが幸せを求めて国境を越える。その映画のタイトルが「インポート、エクスポート」(輸入と輸出)なんだから監督のシニカルぶりのすごさが分かる。
老人と若者、経済格差、世の中の色んな格差や矛盾を痛烈に皮肉ってみせる。
<作品概要>
「インポート、エクスポート」 IMPORT,EXPORT
(2007年 オーストリア=ドイツ=フランス 135分)
監督:ウルリヒ・ザイドル
出演:エカテリーナ・ラク、パウル・ホフマン、ミヒャエル・トーマス、マリア・ホーフステッター
配給:ユーロスペース
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