2014年1月17日金曜日
夢と狂気の王国
ジブリを密着したテレビのドキュメンタリーと違う部分
「風立ちぬ」に「かぐや姫の物語」と1年に2本もジブリ作品が公開されるという年に、スタジオジブリを追いかけたドキュメンタリー映画が公開される。まさにジブリイヤーの2013年。
映画公開付近になると公開と前後してテレビで同様のドキュメンタリー番組が放映される。わざわざ映画でそれを見せるとはどういうことなのか、何がテレビ番組のドキュメンタリーが違うのか、とても気になるところだ。
テレビは無料で観れるから、わざわざお金を払って劇場まで足を運ばせるにはそれなりの理由と覚悟がいるはず。
本作の企画・プロデュースは、ドワンゴの社長・川上量生氏、上場企業の社長でありながらスタジオジブリに“見習い”として入社しているジブリファン。ジブリ作品が2本も公開される年に“スタジオジブリ”に密着する企画を進めたいと思った。作品と監督だけでなく、スタジオ自体を被写体にした点も特定のタイトルのための番組とは違ったところ。
そして監督は、これで長編映画2作目となる砂田麻美。「そして父になる」の是枝監督のもとで修行し、デビュー作の「エンディングノート」でその才能をみせつけたドキュメンタリーの新鋭。彼女のナレーションで進行する展開は「エンディングノート」と一緒で彼女のペースで、彼女の語り口で、彼女の世界として描かれる。
宮崎監督の引退会見の直前、砂田麻美は宮崎監督と2人きりだったそう。だけど砂田監督はそこでカメラを回さなかったとか。何故なのか。川上プロデューサーが聞いたところ、その回答は「何か違うから」というすごい理由(笑)
“記録”としての役割・意味合いで撮られるドキュメンタリーではありえない現象。
このエピソードでも証明されるように、これはただの“記録”ではなく歴とした砂田麻美監督の“作品”なのだ。
ここが決定的に他のジブリを追ったドキュメンタリー番組と違うところ。
ちなみに撮影期間中にピクサーのジョン・ラセターが訪ねてきて普段OKが出ない撮影許可が取れた。砂田監督の過去の編集を見てラセターが気に入ったのだ。それなのに本編でジョン・ラセターは一切出てこない(笑)こういうあたり、砂田監督の“作家性”が象徴されるエピソードだ。
鈴木敏夫プロデューサーがつけた本作のキャッチコピーは、
「ジブリにしのび込んだマミちゃんの冒険」
あくまで彼女視点の作品であることを見事に言い当てている。
ポスターに使用された写真。フランスのカメラマンが訪れた際に撮影され、宮崎監督が気に入り、背景をコラージュして描いている。だからよく見ると写真と絵のハイブリットだ。
東京・小金井にあるスタジオジブリの美しい建物をゆっくりと移動しながら映し出すオープニング、宮崎駿・高畑勲・鈴木敏夫の3人が一緒に屋上で過ごす一瞬、宮崎吾郎の苦悩、庵野秀明へのオファー、アシスタント三吉さん、ラジオ体操、宮崎VS高畑評、商品化会議、などなど
ジブリの内幕の一瞬を目撃できる。
<作品概要>
「夢と狂気の王国」
(2013年 日本 118分)
監督:砂田麻美
プロデューサー:川上量生
音楽:高木正勝
出演:宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫、庵野秀明、宮崎吾郎
配給:東宝
製作:ドワンゴ
タイトルデザイン:goen
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