デコボコ親子のゆる〜いロードムービー
ミカ・カウリスマキが今作で描くのは親子の関係性。難しくなく独特のゆる〜い感じでロードムービーに仕上げた。
本国フィンランドでは並みいるハリウッド映画を抑えて連続首位を記録し大ヒットしたとか。
主演はミュージシャンの顔も持つ俳優たち。どうりで歌がうまい訳だ。
几帳面で仕事にストイックな音楽家ティモの前に、ある日突然酔っぱらいの男が現れ自分は父親だと名乗る。35年間も音信がなかったのにふいに訪れ「よう」と気軽な乗りで、北欧なのにアロハシャツという陽気で何とも憎めない男・レオ。この対照的な親子がレオの言うままに旅に出る。旅の先々で出会う人を通して次第に打ち解け合い、そして知られざる親子の過去が明らかになっていく。
あまりに自由奔放で家を勝手に出て行ってしまった父親の影響で、生真面目過ぎる人生を歩んだティモだったけど結局は生真面目過ぎて家族が出て行ってしまう。なんという皮肉。二人して糖尿病を煩っているように血は争えないのか。そしてどの国でも親の影響はデカいのだ。
それにしてもレオのキャラクターが面白い。明らかな偽造パスポートでの入国からはじまり、売り場のストッキングをおもむろに被りスーパーで小銭を強盗し(このシーン最高!)、アメ車を盗んできて最新式を借りてきたからキーはない、と平然と言ってのける(笑)
そしてその古いアメ車に乗ってロードムービーは始まる。フィンランドの南端にある首都ヘルシンキから北のラップランドへ向かって“森と湖の国”と言われるフィンランドの田園風景を走り抜けていく。
ヘルシンキ(HELSINKI) → ユヴァスキュラ(JYVASKYLA) → アーネコスキ(AANEKOSKI) → ケミ(KEMI) → ロヴァニエミ(ROVANIEMI) → ケミヤルヴィ(KEMIJARVI)
主演の二人、ロイリとエデルマンは俳優業と平行して音楽活動もしている。劇中で二人が宿泊先のホテルで女性にいいところを見せようとステージ上がるシーンでは、見事な歌を披露する。この時バックバンドを務めていたのは、フィンランドの人気バンド、カイホン・カラヴァーニ。セルジュ・ゲンズブールの「ジュテーム・モア・ノン・プリュ」などが使われている。
ミカ・カウリスマキは前作「モロノ・ブラジル」(2012)以来。(2011年に「ファーザーズ・トラップ 禁断の家族」が撮られているが劇場未公開) ロードムービーと音楽が彼の持ち味だ。
自身もブラジルのリオ・デジャネイロに住んでいるとか。弟のアキ・カウリスマキはポルトガル在住だし、北欧フィンランドを代表するこの兄弟は双方南国暮らし。寒いところが苦手らしい(笑)
<作品概要>
「旅人は夢を奏でる」 Road North / Tie Pohjoiseen
(2012年 フィンランド 113分)
監督:ミカ・カウリスマキ
出演:ペサ=マッティ・ロイリ、サムリ・エデルマン、マリ・ペランコスキ、ペーテル・フランツェーン、レア・マウラネン、イーリナ・ビョルクルンド
配給:アルシネテラン
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