2015年12月26日土曜日

独裁者と小さな孫  The President


かわいい男の子とおじいちゃんの冒険 だけど中身は骨太な社会派

やっぱり一筋縄ではいかないのがモフセン・マフマルバフ監督、またいい作品を撮り上げた。
とある架空の国を舞台に、その独裁者が国を追われる過程を痛烈に皮肉り、だけどもユーモアたっぷりに描いてみせた。

現代。とある国の独裁者は、家族を連れて空港へ向かっている。長年の圧政に苦しめられた国民が遂に暴動を起こし、独裁者である大統領に反旗を翻したのだ。そして一家は国外逃亡するために空港に向かうがひょんなことから大統領は孫とともに残り、そして暴徒を逃れて放浪することに。

やっぱり独裁者側の視点で描いたところが面白い。冒頭から孫と遊ぶように市内を電話一本で停電させてみせるあたり、かなりの独裁者ぶりがみてとれる演出。


そして、変装して孫と逃げながら様々な国民と触れ、いかに大統領(自分)が憎まれているか、圧政をしてきたかを思い知らされる。
かなり自業自得な内容ではあるのだけれど、独裁者である大統領側の視点で描かれているので感情移入しそうでできない不思議な感じのまま展開されていく。
そしてしっかりユーモアもある。
特に大統領の側近がかなり笑かせてくれる(笑)
大統領に尽くして一生懸命なんだけどさらに事態を悪化させていく。

それにしても、ジプシーに変装して逃亡する大統領の姿が、意外と様になっていてかっこいい。白髪の長髪に黒い布を羽織り、ギターを片手にジプシーを演じきる。そして結構演奏が上手い。バレそうでバレないギリギリの旅を続ける。


かわいい孫とおじいちゃん。そんな二人のロードムービーとして観ていたけど、次々と登場する人物たちが繰り広げる過酷な現実。なんとなくカワイイ感じの映画なんかではなく、社会的なメッセージが満載な実に骨太な映画。
やっぱりマフマルバフ監督、そんな生やさしい映画を撮るはずがない。

鑑賞後に偶然にもドキュメンタリー作家の想田監督のトークショーがあり、みごとな解説付きというとても贅沢な回だった。

監督曰く、
孫を入れることで素朴な疑問を自然と会話に出すことができる。そんな装置としての役割が孫にはある。
また各登場人物もそれぞれが何を主張するためなのかの役割がある。特に途中で合流する政治犯はマフマルバフ監督自身の分身で、彼の主張は監督自身のメッセージでもある。
暴力による負の連鎖への警告は、アラブの春などを連想させるけど、この映画の公開後に起きたパリのテロなどにもつながる意味深いものになっている。
客観的に描いているようでかなり監督の主観で描いた作品。
そして直接的でなくメッセージを伝えるテクニックが巧いこと。
などなど。

作り手としての目線でかなり詳しい分析と解説で、ものすごいよく分かってしまった。
そして改めて想田監督、映画監督のすごさを感じた貴重な体験だった。


<作品概要>
独裁者と小さな孫」  The President
(2015 ジョージア=フランス=イギリス=ドイツ 119分)
監督:モフセン・マフマルバフ
出演:ミシャ・ゴミアシュビリ、ダチ・オルウェラシュビリ、ラ・スキタシュビリ、グジャ・ブリュデュリ、ズガ・ベガリシュビリ
配給:シンカ

2015年12月22日火曜日

ディーン、君がいた瞬間  LIFE


写真家アントン・コービンだからこそのテーマ

ジェームス・ディーンのあの有名な写真たちの裏にあったストーリー。そこに着目したのがアントンコービンらしい。写真家だからこその目線。

マグナム・フォトに所属する気鋭の写真家デニス・ストックは、写真家として自分らしさを表現できる機会を模索していた。そんなある日、新人俳優のジェームス・ディーンに出会う。彼のスター性を見抜いたデニスはLIFE誌に載せる密着撮影をオファーする。

写真でアートをやろうとしたデニスとそれに応えたジミー。
現場で写真を撮るフォトグラファーと掲載するメディア側との見解や意見の不一致がまだまだ相当あった時代。
フォトグラファーの権利を守るためにロバート・キャパらが設立したマグナム・フォト。
そこに所属しているというだけで、デニスの写真家としての意識が人一倍強かったであろうことが推測される。

デニス・ストック(右)
スターにそんなに密着できるものなのか、そういう時代でそういう人柄だったのか分からないけど、仕事とプライベートの境界がないオフショットってああやって心を許してないと撮れない。そしてすごく自然体のジェーム・スディーンも魅力的。


キャストもいい、デイン・デハーンは天才型の俳優。伝説のスターを演じるに当たってかなりのプレッシャーだったと思う(実際何度もオファーを断ったらしい)。あのモゴモゴしたしゃべり方と容姿が似てるのかと最初は思ったけど、最後タクシーで訪れてデニス呼ぶ姿は、ジェームス・ディーンに見えた。



そして、有名な写真の数々。
マンハッタンで雨の中をタバコをくわえて歩く姿や、床屋での姿など、どこかで必ず見たことあるライフ誌を飾った写真たち。
それになぞらえたシーンがあるのが楽しい。

そして、アントン・コービンは、やっぱり男くさい題材が好きだ。
本作は「誰よりも狙われた男」に次ぐ長編4作目。
ジェームス・ディーンが亡くなる直前のデニス・ストックとの時間にフォーカス。
この一瞬を切り取って作品に仕上げた。


いまだに色あせない伝説のスター。
こんなに有名なのに主演作品は、わずかに3本。
「エデンの東」(1955)
「理由なき反抗」(1955)
「ジャイアンツ」(1956)

享年24歳。


<作品概要>
(2015 カナダ=ドイツ=オーストラリア 112分)
監督:アントン・コービン
主演:デイン・デハーン、ロバート・パティンソン
配給:GAGA

2015年12月8日火曜日

やさしい女  Une Femme Douce


ブレッソン、初のカラー作品

長年日本では観ることができなかったというブレッソンの傑作。
ブレッソンらしく、本当に余計な説明がないし、セリフが少ない。一切の無駄を省いて見せる映像を作ることができる作家。体脂肪が極端に低いタイプの作品。

若く美しい妻と質素だが順調そうな結婚生活を送っていた質屋を営む中年男。ある日突然、妻が自殺を図り、夫婦のそれまでを振り返っていく。

テラスから始まる衝撃の冒頭。
過去に遡りながら淡々と進み、そして冒頭のシーンに戻ってくるあたり、すごく巧さを感じる。

ドミニク・サンダの緑色のコートがなんかいい。
ノートやちょっとした小物がおしゃれだったり、そんなとこにも注目するとおもしろい。

それにしてもドミニク・サンダが美しすぎる。この時、若干17歳! 
ブレッソンに見出され、本作でデビュー。ブレッソン初のカラー作品を飾った。
その後、ベルトリッチ監督の「暗殺の森」などに出演。
日本でも人気だったそうで、なんとパルコのCMにも主演していたとか。


<作品概要>
やさしい女」  Une Femme Douce
(1969年 フランス 89分)
監督:ロベール・ブレッソン
原作:ドストエフスキー
出演:ドミニク・サンダ、ギィ・フランジャン、ジャン・ロブレ
配給:コピアポア・フィルム

2015年12月1日火曜日

ピクニック  partie de campagne


ルノワールの失われた名作

第二次大戦中にナチスドイツによって破棄されてしまった幻のプリントを、シネマテーク・フランセーズの創設者アンリ・ラングロワが救出。
ルノワールの了承のもと編集作業が続けられ1946年にパリで公開された作品。

夏のある日、ピクニックに向かったとある一家の娘アンリエットは、現地で出会った青年アンリと結ばれる。そして別れと再会とを経て待ち受ける結末とは。

それにしても、この作品にまつわるエピソードがすごすぎる。


この作品はまるで、父であり画家であるピエール=オーギュスト・ルノワールの印象派の絵画のような世界観。
原作はフランスを代表する作家ギィ・ド・モーパッサン。


そして、スタッフ陣が豪華!
助監督には、写真家のアンリ=カルティエ・ブレッソン、映画監督のジャック・ベッケルやルキノ・ヴィスコンティらが名を連ねる。
今では考えられない大物ぞろい。

後半たたみかける展開はすごい。
このわずか40分の作品にはいろいろなものが詰まっている。


<作品概要>
ピクニック
(1936年 フランス 40分)
監督:ジャン・ルノワール
助監督:アンリ=カルティエ・ブレッソン、ジャック・ベッケル、ルキノ・ヴィスコンティ
出演:シルビア・バタイユ、ジャーヌ・マルカン、アンドレ・ガブリエロ、ジャック・ボレル、ジョルジュ・ダルヌー、ポール・タン、ガブリエル・フォンタン
原作:ギイ・ド・モーパッサン
配給:クレストインターナショナル

2015年11月30日月曜日

野火  FIRES ON THE PLAIN

壮絶すぎる、地獄絵図。

戦争の悲惨さ、悲劇、地獄をこれでもかというくらい力強く、強烈に、ストレートにぶつられる。しばらく打ちのめされるくらいに重い。

市川崑監督が映画化した同名タイトルの作品とは違い、スプラッター映画とも呼べる壮絶な戦闘描写で痛々しい、そして悲惨すぎる戦争の実態をこれでもかというくらいに描く。

第二次大戦末期のフィリピン・レイテ島。田村二等兵は結核を煩うが野戦病院にも部隊にも戻れなくなり、ジャングルをさまよいはじめる。そこで田村が見たものとは。

極限の状態で描かれる人間模様。
人肉と戦争描写にフォーカス。そこが現代流の描きかた。
このトラウマ級のインパクトは決して商業的な狙いではなく、戦争への恐怖を伝える手段。


安保法案が可決された直後の公開というのは何という因果なのか。
塚本晋也監督は自主制作でこの映画を公開。商業的でない作品の大変なところ。
それでも塚本監督のスタンスは偉い。

キャストもいい。
新鋭・森優作の錯乱、リリー・フランキーの恐怖、中村達也の狂気。
夏の劇場を満席にする、戦争の悲惨さをたたきつける良作。


<作品概要>
「野火」 FIRES ON THE PLAIN
(2015 日本 )
監督:塚本晋也
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作、中村優子、山本浩司
原作:大岡昇平
配給:怪獣シアター

2015年11月28日土曜日

バクマン。


大根流、マンガカルチャーの描き方

大根監督の映画は面白い。
「モテキ」もそうだけど、イマドキなツボを完全におさえている気がする。
中二病的なオタク要素だったりするのに、ちょっとオシャレに、青春に、カッコよくなってしまう。

それは演出だったり、音楽だったり、そういったこだわりが絶妙に効いていて映画をワンランク上にしてしまっている。その才能はさすが。

高校の同級生であるサイコーとシュージン。高い画力と物語作りの才能をそれぞれ持ったコンビで、マンガ家を目指すことになる。目指すはマンガ雑誌最高峰の少年ジャンプ。果たして彼らの想いは届くのか。


原作は同名の人気マンガで「DEATH NOTE」の大場つぐみと小畑健のコンビによる少年ジャンプ連載作品。
マンガ業界の裏側を結構赤裸々にリアルに描くことで業界内のファンも多いこのタイトルを大根監督は、高校生ながら一流のマンガ家を目指す少年たちの青春群像として見事に描いている。

特に大根監督は、男子憧れの女子を描くのが天才的!
「モテキ」の長澤まさみの手裏剣シュッシュッにやられた男子は多いはず。
本作での小松奈菜は、マンガから飛び出てきたのかと思うほどマンガ的なヒロイン。(観てもらえれば分かるはず 笑)


キャストでは、ライバル役の染谷将太が圧巻。
映画「デスノート」のマツケンばりの怪演でそれなりにキャラに近い配役だった他を圧倒するパフォーマンス。

そして、音楽。
サカナクションがカッコイイ。
大根監督のセンスなのか、音楽が映画を彩る重要な要素になっている。

マンガのコマ割りを背景にしてペンを武器に闘うシーンなんかはジャンプのバトル系のマンガっぽい凝った演出。
それに最後に驚かされるのが、エンドロール。
マンガの本棚のようなのに、その本棚に陳列されている一冊一冊のマンガの背表紙のタイトルが、スタッフクレジットに!!
こだわり過ぎとも言える演出が最後まで楽しめる一作。


<作品概要>
(2015年 日本 120分)
監督:大根仁
原作:大場つぐみ、小畑健
出演:佐藤健、神木隆之介、小松奈菜、桐谷健太、新井浩文、皆川猿時、宮藤官九郎、山田孝之、リリー・フランキー、染谷将太
配給:東宝

2015年11月27日金曜日

恋人たち


橋口監督、苦悩の期間から導き出したひとつの答え

橋口監督の作品は生々しくてリアルで苦しくて痛い。社会の片隅でもがき苦しむ登場人物たちの向こう側に今の日本社会がかかえる闇の部分が重くのしかかるように見えてくる。

「ぐるりのこと」は時代感ともマッチして完璧すぎただけにそこでやりきってしまった監督は、その後震災などを経て自分がどうものづくりをしていったらいいのかを見失ってしまったそう。

その苦悩を経てたどり着いた答えがこの本作に込められていて、まさに"渾身の"という言葉がハマりすぎる力作となっている。

妻を通り魔に殺された男、自分に関心のない夫とそりの合わない姑と暮らす主婦、親友を想うゲイのエリート弁護士。
それぞれが苦悩をかかえながら社会の片隅で慟哭し、助けを求め、新しい世界を探し求める。


どのキャラクターも苦しんで助けを必要としていて、だけど現実は残酷で厳しい。
とても生々しく痛々しい。
だけどそこにちょっとしたユーモアが加わるのが救いでもありいいアクセントになっている。それがあるから作品に魅力がましていてやさしさを感じる。
そういう意味では、ケン・ローチに通ずるものがあるかもしれない。

特に安藤玉恵はサイコー。
自分をパッケージにデザインした「美女水」なる水道水を高額で売りつける(笑)
リリー・フランキー扮する超テキトーな先輩とか、脇を固める役者たちがかなりいいアクセントとして配置されていたりする。


全てを失った主人公たち。
震災や原発を経て、それでも人は生きていくしかない。
前を向いて歩いていくしかない。

あの淀川長治から「ヴィスコンティや溝口健二と一緒で、あなたは人間のハラワタを掴んで描く人だ」と言わしめた橋口監督が7年間もの苦悩の末に出した答え。

「恋人たち」というタイトルだけでラブストーリーを期待して観に来たひとは度肝を抜かれるにちがいない。(笑)


<作品概要>
恋人たち
(2015年 日本 140分)
監督:橋口亮輔
出演:篠原篤、鳴島瞳子、池田良、光石研、安藤玉恵、木野花、黒田大輔、山中聡、内田 慈、山中崇、リリー・フランキー
配給:松竹ブロードキャスティング、アークフィルムズ


2015年9月22日火曜日

[CM] 集中エクストリーム・メヌエット

サントリー 集中リゲインのCMがすごすぎる!

今回の集中実験室は、モーツァルトのメヌエットを世界最速で奏でるというもの。
白衣の研究員43人が6m先のビーカーにめがけてコインを投げる。
ビーカーの水量で音階を調節して、次々とコインが音を奏でる。その演奏時間は、わずか2 秒!
全然音楽には聞こえないけど、スロー再生すると、、、
恐るべき集中力。



<作品概要>
「集中力エクストリーム・メヌエット」
(2015年 日本 90秒)
監督:
出演:
製作:サントリー

2015年6月30日火曜日

アリスのままで  STILL ALICE


アカデミー賞も納得の名演。

若年性アルツハイマーという、今までになかなか無かった役どころを見事に演じきってみせたジュリアン・ムーアの名演が最大の見どころ。

監督のリチャード・グラッツァーは、自らもALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っており、公私ともにパートナーでもあり共同監督でもあるウォッシュ・ウエストモアランドとともに、この脚本を見たときにこれは自分たちが映画化すべき作品だと直感したのだとか。

言語学者のアリスは、講義中に言葉が出てこなくなったり、ジョギング中に帰り道が分からなくなったりが続き、やがて若年性アルツハイマーと診断される。家族の想いも虚しく徐々にアリスの病状は進行していく。そしてある日PCに自分宛の自分からのメッセージを発見する。


観ないと分からないけど、ジュリアン・ムーアの見事な演技で若年性アルツハイマーの進行具合や、他人事でないこの病気の大変さがひしひしと伝わってくる。
特に、PCの自分宛のメッセージ動画をみる件では、徐々に進行していた症状とのコントラストが鮮やかに演出されていて、最大の見せ場。

そして、現実でも監督のグラッツァーの病状は進み、ギリギリのところで監督をしていた。ウエストモアランドに「リチャードは、アカデミー賞を見るために生きてるよ」と言わしめるほど弱り切っていた。
そして、アカデミー賞当日、ジュリアンは見事に主演女優賞を勝ち取った。


その数日後。結果を見守ったグラッツァーは息を引き取った。
こんなドラマな展開があるだろうか。
そういうところもひっくるめて見るべき映画。


<作品概要>
アリスのままで」  STILL ALICE
(2014年 アメリカ 101分)
監督:リチャード・グラッツァー、ウォッシュ・ウエストモアランド
出演:ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、クリスチャン・スチュワード、ケイト・ボスワース
配給:キノフィルムズ

2015年6月24日水曜日

マッドマックス 怒りのデス・ロード  MADMAX:FURY ROAD

いま復活のマッドマックス

マッドマックス大好きな男子は多い。
ワイルド過ぎる世界観で己の腕っ節ひとつで暴力が支配する荒野を駆け抜ける。

メル・ギブソンが一躍有名になったオーストラリア発のアクション映画だけど、第1作が製作されたのは、1979年。第3作が1985年だから30年ぶりの新作。ということで今時の若い男子は当然知らないシリーズ。
その世界観は北斗の拳によく似ているけど、「マッドマックス2」に影響されて連載が始まったのが北斗の拳だった。
観れば一目瞭然のパクリ具合(笑)
3以降も基本的にその世界観を踏襲している。

荒廃した近未来、砂漠を支配する凶悪なイモータン・ジョーに捕らえられたマックスは、ジョーに反旗を翻した女戦士フュリオサと行動を共しに、自由を求めてジョーの強大な軍団と対峙する。


荒廃した砂漠の世界に、パンクに武装したキャラクターたちがよく映える。
このオリジナリティが卓越した世界観はとてもユニーク。
街宣車の先頭にぶら下げられたギタリストとか、白塗りのウォー・ボーイズ、ヤマアラシ族やイワオニ族といった敵対集団のデザインもいい。

そして、シャーリーズ・セロンは坊主で片手が無くてもキレイ。
トム・ハーディもハマり役、あの声は低すぎではとは思うけど、こういうハードボイルドな役はホントによく似合う。
それにしても、この世界観をCGの無い時代によく表現していたなぁと思う。



<作品概要>
マッドマックス 怒りのデス・ロード」 MADMAX:FURY ROAD
(2015年 アメリカ 120分)
監督:ジョージ・ミラー
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト
配給:ワーナー・ブラザース映画


2015年6月18日木曜日

海街diary


晴れた日に鎌倉を散策したくなる

原作はマンガ大賞もとった同名タイトルのマンガ。
このマンガは主人公の4姉妹の日常を描いていてその空気感が特徴なんだけど、それがよく出ていたと思う。

是枝監督は前作に続いての原作モノ。
この監督は本当にいい映画を作る。

キャストも豪華
綾瀬はるか、天然キャラとは真逆のしっかりものの長女役。ちょっとやつれた感じがあって好演していた。
自由奔放な次女、長澤まさみはセクシーな魅力を撮ろうという意図が見え見えのサービスショットがいくつかあり(笑)
四女のすずは一番原作のイメージに近いかも。

それにしても樹木希林のおばさん役はもう名人芸。

色彩はパステル調で、ポラロイド写真のような懐かしい、温かみのある感じで作品の雰囲気を演出している。

鎌倉の江ノ電の見たことある風景がそこかしこに。
晴れた日に鎌倉を散策したくなるような、そんないい映画。


<作品概要>
海街diary
(2015年 日本 126分)
監督:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、鈴木亮平、池田貴史、坂口健太郎、前田旺志郎、キムラ緑子、樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ
原作:吉田秋生
配給:東宝、GAGA

2015年6月11日木曜日

[CM] iPhone4 FaceTime


サム・メンデスが贈る心暖まる映像

わりとシリアスな作風のイメージがあるサム・メンデス監督が過去に手がけた Appleの iPhone4 FaceTimeのCM。

「アメリカン・ビューティ」、「ロード・トゥ・パーティション」、「007 スカイフォール」などの監督で知られるサム・メンデスがこんなやさしい映像を撮るとは。


音楽は、ルイ・アームストロングの「When You're Smiling」。
王道すぎる組み合わせだけどやっぱりいい。

サム・メンデスは、新作「007 スペンサー」が待機中。


<作品概要>
「iPhone4 FaceTime」
監督:サム・メンデス
製作:アップル


2015年6月3日水曜日

ビリギャル


「可能性」を引き出すヒントが見える

学年ビリのギャルが慶応大学に現役合格したというサクセスストーリーの実話を映画化。
有村架純を主演に迎え、20億円越えの大ヒット。
純愛ドラマの「ストロボ・エッジ」公開直後に全く違うギャル役で意外にもそんなに違和感なくこなしてしまった。

偏差値30で学力は小学校4年生レベルの工藤さやかは、母親が持ってきた塾の講師・坪田先生にほだされて慶応大学の受験を目指すことになる。
ビリギャルさやかと坪田先生の笑いと涙の珍道中が始まる。

1日に15時間の勉強を1年以上し続けたという本人のがんばりがもちろんすごいんだけど、その本人をやる気にさせる坪田先生の心理学を駆使したテクニックもすごい。そして母親の深い愛情。父親への強い反発心など、尋常じゃない行動させるだけの周囲の環境がちゃんとある。

東大じゃなくて慶応にしたのは、嵐の櫻井くんがいてイケメンな感じがするから。
目標はひとりでも多くのひとに公言した方がいい。
とにかく諦めないこと。
など「可能性」を引き出すヒントも満載。

主題歌は、サンボマスターの「可能性」



<作品概要>
ビリギャル
(2015年 日本 117分)
監督:土井裕泰
原作:坪田信貴
音楽:サンボマスター
出演:有村架純、伊藤淳史、野村周平、吉田羊、田中哲司
配給:東宝

2015年6月2日火曜日

ディオールと私  Dior and I


ラフ・シモンズの素顔、メゾンの内側、コレクションの裏側

ひとつのコレクションができるまで。
たった1日のイベントを成功させるため、そこにはあらゆる人と才能が集まって、それでもギリギリまで、ホントにギリギリまで考え抜いて、もちろんトラブルも大発生で、生のドラマだから面白くて、いろいろあったから最後のコレクション当日は感動してしまう。


老舗高級ブランド、クリスチャン・ディオールの新しいデザイナーに就任したのはオートクチュール未経験のラフ・シモンズ。しかも、通常は半年はかかるという次のコレクションまでの準備期間は、なんとわずか8週間! メゾンの内側に入り込んだドキュメンタリー。


映画「イヴ・サンローラン」を観ていただけに、ディオールの現デザイナーによる"現在進行形"が知れるのは面白い。
ラフ・シモンズの人となりも女性的な感性があって納得感あり。

コレクションの会場自体、そのままでもかなりいいロケーション。
それを生花だらけにするアイデアとかすごい。
アーティストってギリギリまで創るんだな、やっぱり。
周りは本当に大変。。。


ひとつのコレクションをつくるのも大変だけど現場の大変さは「通常業務」をやりながら並行してコレクション業務も進めること。

通常業務とは顧客から注文された服をつくることで、それでお金をもらって商売している訳で、そこは絶対にはずせない。
だけど、デザイナーからはどっちが大事なんだと怒られる。
ん〜、かなりの板挟み。


アナ・ウィンター、シャロン・ストーンなどセレブリティが見守る中、緊張のコレクションが始まる。
苦労を見てきただけに最後はラフ・シモンズと同じように感動してしまう。

この映画の特徴は、ひとつのコレクションができるまでの裏舞台や、職人たちの素顔、老舗メゾンの内側を覗き見ることができること。
ファッション好きでなくても楽しめるドキュメンタリー。


<作品概要>
ディオールと私」  Dior and I
(2014 フランス 90分)
監督:フレデリック・チェン
出演:ラフ・シモンズ
配給:アルシネテラン、オープンセサミ

2015年5月31日日曜日

だれも知らない建築のはなし  INSIDE ARCHITECTURE


建築のはなしを通して現代社会が見えてくる

安藤忠雄は知っているけれど、他の建築家は全然分からない、というスタンスだったけどそこは大して問題ではなく、建築家と言われる人たちの置かれている現状や、普段は表に出てこない思いが聞けるドキュメンタリー。

磯崎新、安藤忠雄、伊藤豊雄、レム・コールハース、ピーター・アイゼンマンら国内外の著名建築家へのインタビューを中心に1970年代からの建築史を描き出す。

今では巨匠と言われる安藤忠雄や伊藤豊雄らが参加した伝説と言われる「P3会議」の様子が面白い。当時まったく無名な日本の新人建築家に対し、そこに参加しているのは世界中の有名建築家たちで、ワールドカップみたいなもの。
当時の日本のプレゼンスは低く、プレゼンテーションも下手な日本人がかなり下に見られていたエピソードは、現代でもそこは変わってないなと妙に納得。
日本人のいいところでもあり、世界に通じないところでもあり。


P3会議参加当時の安藤忠雄は、個人住宅の仕事を中心にしていたそうだけど、世界的に(一般的に)はエリートはやらない仕事なのだったとか。
市庁舎や図書館などの公共施設をやるのが大きな仕事で、そういったところも下に見られる要因だったらしい。
そういう仕事しかできなかった事情はあったかもしれないが、それを語る安藤忠雄の反骨心が画面を等して伝わってきて面白い。


経済性重視の商業施設では建築よりコンピューターが活躍する世界になってるとか。建築家はこの先どうなっていくのか、アーキテクチャになるのか、テクノクラートになるのか、アーティストになるのか。現場で働く職人が減り続ける今の構造を解決しないとけない、などなど 巨匠たちは大きな枠でこれからを真剣に考えている。

それにしても磯崎新がすごい。
みんなの先輩格だけど、ちょっと風格も考えるスケールもひとまわり大きい。


関係ないけど、映画"だれも知らない"タイトルシリーズ。
「誰も知らない」2004/是枝和宏
「誰も知らない基地のこと」2012/エンリコ・パレンティ
「ペルシャ猫を誰も知らない」2010/バフマン・ゴバディ


<作品概要>
だれも知らない建築のはなし」  INSIDE ARCHITECTURE
(2015 日本 73分)
監督:石山友美
出演:安藤忠雄、伊藤豊雄、磯崎新、トム・コールハース、ピーター・アイゼンマン、チャールズ・ジェンクス、中村敏男、二川由夫
配給:gnome、東風


2015年5月18日月曜日

龍三と七人の子分たち


時代錯誤のヤクザなじじいたちが大暴れ

藤竜也や中尾彬をここまで使い倒すことができるのは北野武監督だけ!
あの渋くてカッコイイ藤竜也にオカマ顔負けの女装で街を走らせたり、中尾彬にいたっては体を張って敵から、味方から散々な扱い(笑)
監督の力量に信頼がない限り絶対に引き受けないであろう振り切り方で笑わせてくれる。

ヤクザを引退して久しい龍三だが昔のながらヤクザな振る舞いで同居する息子家族からも煙たがられるおじいちゃん。
ひょんなことから昔の仲間を集めて組を作ることになり、最近のさばり出した京浜連合という元暴走族の組織へ殴り込みにいくことに。


同じヤクザでも前作「アウトレイジ」とは全然違ったコメディ路線。
たけし節が全開なエンターテイメントで、絶妙な間のオナラから後半のたたみかけるような"中尾彬づかい"まで笑の取り方は確かでさすが。

バスが商店街に突っ込んでいくシーンとか昔のアクション映画や香港映画みたいで迫力あったのに、予告編ではもっと安っぽく見えてしまっていたから残念。
あの出し方はないよなー。

それにしても龍三の木刀の構えは、薩摩の示現流ではなかろうか。


<作品概要>
龍三と七人の子分たち
(2015年 日本 111分)
監督:北野武
出演:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭、安田 顕、矢島健一、下條アトム、勝村政信、萬田久子、ビートたけし、清水富美加、山崎樹範
音楽:鈴木慶一
配給:ワーナーブラザース、オフィス北野

2015年5月10日日曜日

小さな世界はワンダーランド  TinyGiants 3D


小さくてかわいいリス視点の物語

BBCのネイチャードキュメンタリー。
毎回どうやって撮影したのか不思議なくらい対象に迫りきった高感度映像でシマリスたちの暮らしぶりを映し出す。

子どものシマリスは、冬を越すためにドングリ集めに精を出す。子どもなのにひとり立ちして山ほどのドングリを集めるが、思わぬライバルが現れて大ピンチ。果たして冬を無事に越せるのか。

厳しい環境で生きるリスたち目線で日々の大冒険を描く。
このドラマ仕立てで構成するネイチャードキュメンタリーをBBCアースは「ドラマチック・ドキュメンタリー」と銘打って新たなジャンルとして始めて行くのだとか。


それにしても高精細カメラの性能といい、撮影技術といい、どこまで自然界に迫れるのでしょうか。 
この映像がとにかくスゴイ。毎回このシリーズには驚かされる。
動物たちの知られざる世界を堪能できる作品。

リスがかわいくて、子供も喜びそう。


<作品概要>
小さな世界はワンダーランド」 Tiny Giants 3D
(2014 イギリス 44分)
監督:マーク・ブラウンロウ
出演:
製作:BBC
配給:GAGA

2015年5月7日木曜日

シンデレラ  CINDERELLA


あのクラシックアニメを忠実に実写化

直球真っ向勝負のまじりっ毛なしのシンデレラ。
ガラスの靴、かぼちゃの馬車、いじわるな継母と姉たち、王子様との舞踏会、夜中(12時の鐘)に魔法が解ける、などなどのエピソードが満載。

ディズニーの勢いが止まらない。
「アナ雪」の短編アニメも併映され女の子の集客は万全。「アナ雪」直後の公開された「マレフィセント」も大ヒットし、「ベイマックス」は90億円を突破。「イントゥ・ザ・ウッズ」はそこそこだったけどこの「シンデレラ」もヒット発進。
クラシックで王道のお姫様ストーリーはディズニーの十八番。白雪姫や眠れる森の美女、リトルマーメイドなどなど、まだまだネタにつきることはない。


森のお屋敷で美しく育ったエラだが、最愛の父が亡くなり、いじわるな継母とその姉たちにシンデレラ(灰かぶりのエラ)と呼ばれ、召使のように扱われていた。ある日、森でシンデレラに出会い恋に落ちた王子は国中の娘を舞踏会に招待しシンデレラと再会しようとするが。

監督はイギリス出身のケネス・ブラナー。
この誰もが知るエピソードを忠実に実写で再現。
キャストは、シンデレラ役のリリー・ジェームズ、王子役のリチャード・マッデン、姉役のソフィー・マクシェラとホリデイ・グレインジャーなどほぼイギリス勢。
そして、ケイト・ブランシェット(オーストラリア)とステラン・スカルスガルド(スウェーデン)が脇を固める。


それにしても、ヘレナ・ボナム=カーターは、魔女的なこの手の役の専売特許を得ているかのごとく登場。もうなんの映画で何の役だったか分からなくなる状態。
パートナーだったティム・バートンの元、ジョニー・デップとともに特殊メイクのオンパレードだ。

レ・ミゼラブル
ローン・レンジャー
ダークシャドウ
アリス・イン・ワンダーランド
スウィーニー・トッド
ハリー・ポッター シリーズ


<作品概要>
シンデレラ」 CINDERELLA
(2015年 アメリカ 105分)
監督:ケネス・ブラナー
出演:リリー・ジェームズ、ケイト・ブランシェット、ヘレナ・ボナム=カーター、リチャード・マッデン、ソフィー・マクシェラ、ホリデイ・グラインジャー、デレク・ジャコビ、ノンソー・アノジ、ステラン・スカルスガルド、ベン・チャップリン、ヘイリー・アトウェル
配給:ディズニー