2014年6月27日金曜日

[CM] しりあがり寿


この特徴、すぐ分かる! しりあがり寿ワールド

ガリガリ君で有名な赤城乳業のアイス「ブラック/チョコレートバー」のCMを、
あの、しりあがり寿が手がけた。奇妙でおかしいダンスの振り付けはラッキィ池田。

▼「たべたい」編

▼「じゃない」編

▼「ガリガリ君の会社」編

▼「売上」編


<作品概要>
CM BLACK/チョコレートバー
(2014年 日本 各15秒)
企画・監督:しりあがり寿
イラスト:しりあがり寿
振り付け:ラッキィ池田
製作:赤城乳業

2014年6月19日木曜日

ぼくたちの家族


「舟を編む」より全然いい! 石井裕也の描く“家族” 

「舟を編む」で米アカデミー賞はじめ数々の映画祭で話題となった石井裕也監督の最新作。
石井裕也がテーマにする家族
どんな家族にも大なり小なり問題はあるもの。 誰もが自分の家族を重ね合わせて時分事として作品に入っていける物語。その監督の手腕はさすが。

どこにでもいそうな4人家族。ある日母親が認知症を発症。しかも悪性の腫瘍で余命は1週間。あまりにも突然の出来事に動揺する家族、そして次々と発覚する家族の秘密。
ボロボロになりながらも“最後の悪あがき”を試みながら再生していくある家族の物語。


本当にどこにでもありそうな家族の物語をここまで魅せる監督の手腕もすごいけど、俳優陣が良かった。長塚京三と原田美枝子は演技がマジで上手い! 
主演の妻夫木聡も頼りない長男を好演。
そして、池松壮亮も最近は引っ張りだこの俳優。テレビドラマ「MOZU」、「愛の渦」など話題作で難しい役どころを見事にものにしている。

長男の奥さん家族との会食で使われていた場所は、高尾の料亭「うかい鳥山」。(セリフにも名前が出てた) 吉祥寺から郊外の自宅へ帰るシーンもあり中央線か京王線の設定か。次男との待ち合わせは飯田橋だったけど、自宅のある三好駅は架空の駅。

評判が良かったのもうなずける良作。
個人的には「舟を編む」よりも全然良かった。


<作品概要>
ぼくたちの家族
(2014年 日本 117分)
監督:石井裕也
原作:早見和真
出演:妻夫木聡、原田美枝子、池松壮亮、長塚京三、黒川芽以、ユースケ・サンタマリア、鶴見辰吾、板谷由香、市川実日子
配給:ビターズ・エンド

2014年6月18日水曜日

インサイド・ルーウィン・デイヴィス  Inside Llewyn Davis


出だしからいい! 音楽がとにかく最高

第66回カンヌ国際映画祭においてグランプリを受賞した本作。音楽通で知られる監督・コーエン兄弟による最新作は、これまた音楽にこだわった良品に仕上がった。上手く人生を生きることができない大人たちを優しくユーモラスに見つめる。ダメダメだけど応援したくなるような主人公ルーウィンがいい。コーエン節が効いてます。

1961年、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ。フォークシンガーのルーウィン・デヴィスは、知り合いの家を泊まり歩く宿無し&文無し。いいことなんか全然ない。女友達には妊娠を告げられ、借金もある。成りゆきで預かることになった猫を片手にNYをさまよい歩く。
フォーク全盛前夜のNYを不器用にも生き抜くルーウィン・デヴィスの物語。


ルーウィン・デイヴィスのモデルになったのは、あのボブ・ディランが尊敬したというフォークソングのミュージシャン、デイヴ・ヴァン・ロンク。
音楽通のコーエン兄弟だけに、音楽は生演奏にこだわった。それだけにルーウィン役のキャスティングは難航したとか。 そりゃそうだろう。
とにかく音楽が良かった。あの録音もさすが。T=ボーン・バーネットのすごさか。
それにしてもオスカー・アイザックは生録音に耐えうる最高のパフォーマンス。
この人しかいないだろうという最高のキャスティングだった。

デイヴ・ヴァン・ロックのアルバム

その他キャスト陣では、キャリー・マリガンも良かった。雰囲気が違っていて最初は気づかなかったけど、やはりすごくいい女優さん。
ルーウィンをぼろくそにけなしながら公園でしゃべるくだりはもうサイコー。

ジャスティン・ディンバーレイクも最近は映画で大活躍。「ソーシャルネットワーク」だけでなくいろいろと出演。今作では歌声も披露し、やはり歌手なんだな、と思わせる。

そして助演大賞はなんと言っても茶トラの猫。その名もユリシーズ。動物が重要な脇役の映画ってあるけど(カウリスマキ作品の犬みたいに)、本作も間違いなくそのひとつ。だっこされながら電車に乗るなんて(笑)


<作品概要>
インサイド・ルーウィン・デイヴィス」 Inside Llewyn Davis
(2013年 アメリカ 104分)
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
音楽:T=ボーン・バーネット
出演:オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、ジャスティン・ティンバーレイク,
ジョン・グッドマン、ギャレット・ヘドランド、F・マーレイ・エイブラハム、スターク・サンズ、アダム・ドライバー
配給:ロングライド

2014年6月12日木曜日

サッドティー  SadTea


煮え切らない、煮え切れない男女が交錯する、今泉ワールド。

シガスカオ似の主人公・柏木を中心に、12人の男女が「好きって、何?」の間を行き惑う。今泉監督が「ダメ恋愛映画」というように煮え切らない人たちが織りなすおかしなエピソードが続く。

カフェのバイトと店長。二股に悩む映画監督とその彼女たち。彼女へのプレゼントを買いに言ったお店の店員に一目惚れする男、元アイドルを10年間思い続ける男とその元アイドル、DV、方想い、浮気、十人十色の恋愛模様が微妙につながり合いながら「好きって、何?」を考察する。

とにかく煮え切らない人たち。若さがあふれる恋愛っぷりはすごく今っぽい。


公園を延々と競歩する男の映像から始まる本編。これは映画「somewhere」の冒頭のシーンから引用しているとか。
今泉ワールドで面白い。
その中でも、あの競歩する友人・朝日のインパクトは絶大。役者さんのキャラがすごく活きている。最後に浜辺で絶叫するくだりはもうサイコー。大爆笑だ(笑)

ユーロスペースでは監督本人がチラシを手配りしていたり、上映後に「ありがとうございました。」ってロビーでお客さんに声をかけていたり、PRにいそしんでいた。


今泉作品は室内劇が多い中で、監督の家がロケ地になることが多いとか。室内の小物なんかはセットなのか私物なのか分からないけど、「ホーリーモーターズ」のチラシが貼ってあったり、神楽坂のマンヂウカフェ「ムギマル」の手ぬぐいが貼ってあったり、監督の趣味が伝わる。カフェにも奥さんである今泉かおい監督の「聴こえているふりをしただけ」のポスターが貼ってあった。

パンフレットには、サッドティーのレシピも掲載されている。


<作品概要>
サッドティー」  SadTea
(2013年 日本 120分)
監督:今泉力哉
出演:岡部成司、青柳文子、阿部準也、永井ちひろ、國武綾、二ノ宮隆太郎、富士たくや、佐藤由美、武田知久、星野かよ、吉田光希、内田慈
配給:SPOTTED PRODUCTIONS

2014年6月6日金曜日

闇のあとの光


作家性が際立つ、メキシコからの刺客

またすごいのが出てきた。
カンヌで監督賞受賞。審査員たちに衝撃を与えたという本作。

魚眼レンズのような独特の映像スタイルとかなり出来上がった世界観。そうとうに特徴的だけど、意味はさっぱり分からない。アピチャッポン・ウィーラセタクンの「ブンミおじさんの森」がカンヌで出てきた時のようなサプライズ感。

メキシコの美しい自然と動物たちに囲まれた、とある村。子ども二人と何不自由なく暮らす幸せな家族。ある日“それ”が突然現れる。家族が寝静まる中に道具箱を持って家の中へと入ってくる。そしてその日から徐々に家族にズレが生じはじめる。


“それ”は一体何なのか。神なのか悪魔なのか、と言われるけどその後に降り掛かる災いとそのビジュアルからして、悪魔でしょ!とツッコミたくなる。そしてあの道具箱は何なのか(笑)いったい何か入っているのか、気になって仕様が無い。

この独特の世界観。そして映像美。これから何かやってくれそうな気配が漂う独特の作家性。カンヌでその期待からの受賞したのもうなずける。



モザイクが一切なしなのは驚いたけど、無い方が全然自然で違和感はない。

女優さんがとてもキレイ、ピアノを弾きながらニール・ヤングを歌うけど、なぜかすこぶる下手。本来はキメるべきシーンでハズす。そのあたりがとてもクセがある。


そして何より、ラストシーンが相当に衝撃的。驚きを通り越して笑ってしまうほど。
これは是非体験として観ておきたいシーン。

劇場では、冒頭に監督のメッセージがあったけど、映画の舞台に監督自身が住んでいるそう。そして映画の理解は観客に委ねるスタンスだというメッセージがあった。
日本の溝口や小津が好きだけど、完全に理解できているとは思わないし、したいとも思わない、だから解説なんて聞きたくない、と。
観たひとが自由に解釈してほしいということだった。
だけどこの監督が一番自由だ。


<作品概要>
闇のあとの光
(2012年 メキシコ=フランス=ドイツ=オランダ 115分)
監督:カルロス・レイガダス
出演:アドルフォ・ヒメネス・カストロ、ナタリア・アセベド、ルートゥ・レイガダス、エレアサル・レイガダス、ウィレバルド・トーレス
配給:フルモテルモ、コピアポア・フィルム