2014年2月26日水曜日

新・事件記者 BUN-YA SPIRITS


カラーになって再登場! 新・事件記者

モノクロの日活版と比べ、カラーになってみると事件記者たちの生きる世界もちょっと違って見える。オープニングは首都高をひたすら疾走する車の映像にBGMがのり、タイトルが流れる。
1966年当時だから、東京オリンピック(1964年)に整備された首都高がまだまだ新鮮で最先端のものだったから、いま感じるよりももっとスタイリッシュな印象だったに違いない。

相沢キャップや伊那ちゃんなど、いつもの調子ではあるものの、それでもやっぱりモノクロの日活版に見慣れてきたせいか、(カラー版は尺が長くなった割には)ちょっと物足りなさを感じる。スガちゃんがいないし、ひさごの女将やキャストが微妙に違っている。そして、監督が山崎徳次郎から井上和男へと交代している。


でもやっぱり、ガンさんのあの調子にはいつも笑わせてもらいほっとさせられる。

<シリーズ>
「新・事件記者 大都会の罠」
「新・事件記者 殺意の丘」


<作品概要>
新・事件記者
(1966年 日本 90、92分)
監督:井上和男
原作:島田一男
出演:永井智雄、園井啓介、滝田裕介、原保美、山田吾一、大空真弓、芦田伸介
配給:東京映画

2014年2月22日土曜日

キック・アス ジャスティス・フォーエバー  KICK-ASS 2


おバカ映画の第2弾がパワーアップして帰ってきた!

クロエが大分オトナっぽい。前回までは完全に少女だったけど普通の女子高生に。男性アイドルを見てときめいたりしちゃう意外な一面も。
主要キャストはそのままに、新たにジム・キャリーなどが加わり、ヒット作の続編らしいスケールアップで登場。

キック・アスことデイブと、ヒット・ガールことミンディは、ヒーローであることを封印して普通の学生として学園生活を送っている。やがてデイブは卒業が近づき、ホンモノのスーパーヒーローになろうとし、元ギャングの活動家スターズ・アンド・ストライク大佐に触発され、スーパーヒーロー軍団“ジャスティス・フォーエバー”を結成する。そこに前作で父親をバズーカーで吹っ飛ばされたレッド・ミストが“マザー・ファッカー”と名を変えて、悪の軍団を率いてキック・アスに迫る。


バカバカしさ全開な路線はそのままも、前作ほどの切れ味はない。ヒーローのマスクを被っただけのオタク少年と、敵を殺しまくる子供(女の子)というインパクトが凄かった分、それが当たり前となった今作は、予算やらキャストやらの“スケール感”以外にも前作を上回る“何か”が必要だったが、スケール感に終わってしまった感が否めない。オタク少年も結構マッチョないい体になってたし、クロエもオトナっぽくなっているので前作の特徴とは違ってきてる。
そんな中でいい味を出していたのが、レッド・ミストことマザー・ファッカーだ。ネーミングセンスも最悪ながら、ヘタレ具合といい、頭の悪さといい、舌足らずなしゃべり方といい、かなりキャラ立ちして一番面白かったかもしれない。主役の二人以外のキャラにも結構フォーカスが当たっていたので、更なる続編の要素を手探りしていたのかも。


作品がヒットしたから続編を作る、というノリだと今までは「ドラゴンボール」並みにスケールアップをさせていくパターンが多かったハリウッド映画。「ダイ・ハード」なんかは息子が大人になっても一緒に暴れまくる(笑) それとは一転、「インファナル・アフェア」は良くできていた。最初から3部作だったんじゃないか、というくらい脚本が練られていて、前作に全く引けを取らないくらい面白い!
それを学んでか、最近のハリウッドは、「エピソード0」や「ビギンズ」など前日譚で脚本を凝らし、新しいパターンの続編を創り出して生き長らえている。
だけど「ゴッドファーザー」の方がやってたことは先か。

「キック・アス」に関しては、おバカ全開で“オタク心”の部分をついていけなくなるくらい突き抜けてやってもらいたい。


<作品概要>
キック・アス ジャスティス・フォーエバー」 KICK-ASS 2
(2013年 アメリカ=イギリス 103分) 
監督:ジェフ・ワドロフ
製作:マシュー・ボーン、ブラッド・ピット
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン、クロエ・グレース・モレッツ、クリストファー・ミンツ=プラッセ、ジム・キャリー、モリス・チェスナット
配給:東宝東和

2014年2月21日金曜日

スノーピアサー  Snow piercer 雪国列車


世界の縮図、雪国列車

天才ポン・ジュノが手がける最新作は、最後の人類が乗る列車が舞台という奇想天外な設定。もともとはフランスの漫画をみて映画化を思いついたとか。エド・ハリスやクリス・エヴァンスなどハリウッド俳優を使い、遂にハリウッド映画を撮るのかと思いきや、ハリウッド映画ではないらしい。あくまで韓国映画のつもり。監督によると、「この設定で韓国人だけだったらおかしいでしょ(笑)」という理由。ちなみに製作国は、韓国=アメリカ=フランスの合作となっている。

現代。地球温暖化防止の最終兵器として、人類は大気圏に冷却剤を巻くが、それが原因で地球は一気に氷河期状態になり生物は死滅してしまう。唯一生き残ったのが世界を一年かけて一周し、自給自足ができる列車に乗り合わせた乗客たち。ただ、乗車時の等級によってそのまま格差社会が形成され、末端の人々はひどい環境で暮らしていた。そんな中、リーダー格のカーティスは、自由を目指し支配階級に対して反乱を企てる。

電車の最後尾から1両ずつ前方に向かって進んでいく設定が、ゲームをクリアしていくような感覚で面白い。狭い車両の中だけで壮絶なアクションが繰り広げられる。


だけど今作の見所としては、やっぱりティルダ・スウィントンの怪演(笑)
出っ歯に眼鏡の面白すぎるキャラを見事に演じている。この人の振り幅は結構すごい。そして本作では二役こなしているとかで、メイソン役以外にも登場しているらしい。だけど、何役なのか全然分からない。。。

キャストでいうと、ポン・ジュノ組のソン・ガンホがまたいい!その存在感は圧倒的。しかも全編英語の作品なのにも関わらず、一切英語をしゃべらずいつもの調子で韓国語をしゃべる。やっぱりハン・ガンホには韓国語をしゃべっていてもらいたい。
それにしても俳優の新井浩文と似てきている気が。(笑)

環境破壊や温暖化など人類に体する皮肉たっぷりのポン・ジュノらしいテーマ。ノアの箱船とも言えるスノーピアサー(雪国列車)の乗客たち。最後の少年と少女はアダムとイヴにも見える。


<作品概要>
スノーピアサー」 Snow Piercer / 雪国列車
(2013年 韓国=アメリカ=フランス 125分)
監督:ポン・ジュノ
製作:パク・チャヌク
原作:ジャック・ロブ、ベンジャミン・ルグランド、ジャン=マルク・ロシェット
出演:クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、ジェイミー・ベル、オクタビア・スペンサー、ユアン・ブレムナー、コ・アソン、ジョン・ハート、エド・ハリス、アリソン・ビル

2014年2月18日火曜日

アジョシ  The Man from Nowhere


孤独な男 meets ひとりぼっちの少女

なんとも切ないストーリー。「韓国版レオン」と言われているようにその説明が一番分かりやすい。タイトルのアジョシとは「おじさん」という意味だけどウォンビンはおじさんか?ちょっとキムタク似で相当なイケメンだ。

質屋のテシクは人を避けるように暮らす影のある孤独な男。隣に住むソミも学校にも家庭にも居場所がないひとりぼっちの少女。ソミはテシクのことをアジョシと呼び慕っていた。お互い唯一の友達のように。ある日ソミの母親が麻薬絡みの犯罪に巻き込まれソミもさらわれてしまう。それを追うテシク。事件の真相とテシクの過去が明らかになっていく。

残虐性と暴力性において韓国映画は凄まじい。この辺の表現に振り切ることで特徴を出そうとしている気がする。
助けに向かうテシクは恐ろしく腕が立つ。見ていて気持ちいいほどで、それを演じるウォンビンはホレボレするほどかっこいい。

<作品概要>
アジョシ」  The Man from Nowhere
(2010年 韓国 119分)
監督:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン、キム・セロン、キム・ヒウォン、キム・ソンオ、キム・テフン、
配給:東映

2014年2月15日土曜日

女は女である  Une Femme est une femme


アンナ・カリーナの魅力が満載!ゴダールらしい初期作品。

ゴダールはやっぱり初期作品が面白い。
アンナ・カリーナの魅力を映したいがために撮ったような作品が「女は女である」。(実際、ゴダールとアンナ・カリーナが新婚な時期)
この頃の作品は、若くて、瑞々しくて、攻めていて、おしゃれで、かっこいい!タイトルグラフィックからして今見てもセンスにあふれている。

本屋で働くエミール(ジャン=クロード・ブリアリ)は、恋人のアンジェラ(アンナ・カリーナ)と同棲中。ある日アンジェラが24時間以内に赤ちゃんが欲しいと言い出し口論に。意見が合わないふたりは売り言葉に買い言葉で、アンジェラは他の男にたのむと言い張り、引けなくなったエミールは「勝手にしろ」と意地を張ってしまう。親友のアルフレッド(ジャン=ポール・ブリアリ)も巻き込むことになり・・・。

ミュージカルコメディとして作品は紹介されるけど、劇中のセリフにも出てくるように「喜劇か悲劇か」分からないような展開になっていく。そういう恋愛の関係性はやっぱりフランス映画ならではか。


ヌーベルヴァーグのど真ん中にいたゴダールらしく、仲間たちに関連する内容が良く出てくる。本屋でアンジェラが手に取る本の横には「地下鉄のザジ」の本があるし、ベルモンド扮するアルフレッドが「テレビで『勝手にしやがれ』をみたい」と言ったり、バーにジャンヌ・モローがカメオ出演していたり、そこで話すエピソードが「パリところどころ」の内容だったり、「ピニストを撃て」を観たという話が出たり、そこに主演していたピアニストのシャルル・アズナブールの曲をジュークボックスでかけたりする。(レコードジャケットがフィリップスのデザインですごくいい)


音楽はジャック・ドゥミの映画音楽で有名なミシェル・ルグラン。美術もドゥミの「シェルブールの雨傘」などを手がけたベルナール・エヴァン。白い部屋に青い服のジャン=クロード・ブリアリと赤い服を着たアンナ・カリーナでトリコロールになっている。
ジャン=ポール・ベルモンドの役名であるアルフレット・ルビッチにしていも、ゴダールが尊敬してやまない監督、アルフレッド・ヒッチコックとエルンスト・ルビッチから取られていたり、左翼系新聞のユマニテ紙にふれていたり、ゴダールらしさが満載だ。

フランス映画の巨匠であるゴダール。アンナ・カリーナと別れた後はドンドンと小難しい路線をひた走り、難解で意味不明な作品が多くなってくる。だけど今だに新作を撮り続けているんだからすごい。そして、常に新しい試みをしようと攻め続けている。生ける巨匠の同時代の作品を観れる幸せを感じて、新作もやはりチェックしよう。


<作品概要>
女は女である」 une femme est une femme
(1961年 フランス 84分)
監督:ジャン=リュック・ゴダール
製作:ジョルジュ・ド・ボールガール
音楽:ミシェル・ルグラン
撮影:ラウル・クタール
美術:ベルナール・エヴァン
出演:ジャン=クロード・ブリアリ、アンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド、
配給:新外映

2014年2月3日月曜日

ウルフ・オブ・ウォールストリート  The Wolf of Wallstreet


ウォールストリート、狂喜乱舞のバブル世界。

裸一貫から成り上がったサクセスストーリーと欲望にまみれた破天荒な生き様。裏切り、そして破滅への道。スコセッシとディカプリオ5度目のタッグとなる本作は、実在の株式ブローカーのセンセーショナルな人生を描く。アカデミー賞主要5部門にノミネート。

一流証券会社に入社したジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)は、電話一本の口八丁で巨額を動かし、金を稼ぎまくるウォールストリートの世界に一気に魅了される。ところがブローカーとしてデビューしたその日にブラックマンデーが起こりクビに。不況下で再就職先に選んだのは、1ドル以下の誰も買わないような安株を扱うがコミッション(手数料)は多い株式ブローカー。そこでジョーダンは持ち前の営業力でメキメキと頭角を表し、やがて独立を果たす。そして飛ぶ鳥を落とす勢いでウォールストリートの獣の道を駆け上がっていく。

とにかく内容がバブル過ぎ!お金が全てでその使い方も凄まじい。若くして大金を得たいカネに目のくらんだ若者の社員たちを煽り、自ら作り上げた「勝利の方程式」でグイグイと成り上がっていく。とにかく、電話!電話!営業電話でごった返す社内の盛り上がり。そして月末を好成績で終えると大パーティ。女子社員に1万ドルを握らせ、その場でバリカンを使って坊主にさせる、ストリッパーを呼んでのどんちゃん騒ぎ。


日本でいうとライブドア事件のようなもんだろうか。ベンチャーとしてゼロから立ち上げて一躍時代の寵児となり、億万長者となって逮捕される。破天荒さでいうと、ドラッグや酒や女へのまみれ具合などアメリカの方がやはり上だけど。

ジョーダンが仲間を集める際に試したエピソードが印象に残る。ポケットから出したペンを相手に渡し、「これをオレに売ってみろ」と。ジョーダンが仲間に欲しがった相手の答えはこうだ「この紙にいますぐサインしろ」。ペンの良さをアピールするのではなく、必要性をつくり出す。そこに営業の極意がある。
ジョーダンは羽目を外し過ぎた成金だったが敏腕セールスマンであったことは間違いない。


本作では、キャストとして映画監督のロブ・ライナーが父親役で登場している。スパイク・ジョーンズも実はちょい役(再就職先の経営者)で出演している。

それと、映画パンフレットにあるコラムに疑問。ミルクマン斉藤など著名な映画ライターの方々が書いているが内容がどうもおかしい。キャストやスコセッシの特徴などにフォーカスして本編に触れていないのだ。
これはおかしい。このパターンで考えられるのは、“仕事”としてパンフレットへの執筆を依頼されたものの映画がヒドイ内容で褒められない。だから周辺情報でごまかす。
もうひとつは、本編を観ていないから書けない、というパターン。
でも映画は全然ヒドくないから、パンフレットの入稿までに試写会が間に合わなかったのではと推測する。一旦公開日が延期にもなってるし。
それとも、もしや本気で書いている!?
いやいや、間に合わなかったのだと信じよう。


<作品概要>
ウルフ・オブ・ウォールストリート」  The Wolf of Wallstreet
(2013年 アメリカ 179分)
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー、マシュー・マコノヒー、ジョン・ファブロー、カイル・チャンドラー、ロブ・ライナー、ジャンデュジャルダン
配給:パラマウント