2014年11月29日土曜日

駆ける少年  Davandeh


駆ける!吠える! 少年アミル

傑作と言われながらなかなか鑑賞できる機会がない本作。
監督は、イランの鬼才・アミール・ナデリ。日本でも西島秀俊主演で「CUT」という作品を撮っていたりする。その監督の原点とも言えるのがこの「駆ける少年」(1985)。貧しい子どもたちの底抜けに明るい姿が震災後の暗くなってしまった日本へのメッセージの意味もあり、2013年に劇場公開された。

1970年代初頭。ペルシャ湾沿いの港町で暮らす孤児のアミルは、空きビンを集めたり、靴磨きや、コップ一杯の水を販売しながら生計を立てている。貧しく厳しい環境ながら仲間とともに毎日を精一杯、元気に、逞しく生き抜いていくアミルたちの姿を描く。

とにかく子どもたちが元気でよく駆ける! そしてアミルは吠える(笑)

この映画が製作されたのは1985年。
イランではちょうどイラン・イラク戦争の真っ最中で、国中が暗い雰囲気の中でこの映画は作られた。
そして、多くのイラン国民がこれを観て、貧しくも元気で逞しく明るい未来に向かって生き抜く少年たちの姿に心を打たれ、元気を取り戻したのだとか。


1杯の水代をもらい損ねてどこまでも自転車に乗った大人を追いかけていき、ついには追いつきお代をちょうだいするアミルのあの根性はすごい。

そしてお代をもらっときのあの笑顔。
水代をケチって“飲み逃げ”した上に子どもに追いつかれ、しぶしぶ支払うも満面の笑みという一切の嫌みがないオトナな対応で返されるという、あの最悪すぎるおっさんのバツの悪そうなシーンとかも面白い。


子どもが主人公、さらに素人の子どもを巧みに演出して起用するという展開は、イラン映画のお家芸。
バイオレンスやセックス、ドラッグといったハリウッドではヒット要素が一切NGという規制の多い環境で発展したイラン映画は、やさしく、普遍的で教育的な内容が多い。

その中で、この作品の力強さは、完全に他のイラン映画とは一線を画している。
ナデリ監督の溢れ出すエネルギーや衝動が、その規制の中ではちきれそうになっている。

だから、外国で映画を作るとあんなにすごいの作っちゃうのでしょう(笑)


<作品概要>
「駆ける少年」  Davandeh
(1985年 イラン 91分)
監督:アミール・ナデリ
出演:マジット・ニルマンド、ムサ・トルキザデエ、アッバス・ナゼ
配給:「駆ける少年」上映委員会

2014年11月27日木曜日

島の色 静かな声


ゆっくりと流れるそこだけの時間

染織家、石垣明子さんとその夫で三線奏者の金星さんに寄り添ったドキュメンタリー。
西表島でマイペースに昔からのスタイルで暮らす夫婦をみていると本当に自由を感じる。
とても自由でとても豊かな時がそこにはある。
そんな体験ができる不思議なドキュメンタリー。

夏の夜に星空の下で観てみたい作品。

監督は、茂木綾子。もともとは写真家で、現在は旦那さんとともにノマドスタイルで世界を巡る映像作家。
その旦那さんは本作でも撮影に参加しているベルナー・ペンツェル。茂木監督が自身のビデオ作品のことでヨーロッパまで会いに行ったことがキッカケで意気投合し結婚。現在はノマド映像作家夫婦として淡路島に在住なのだとか。


監督はもともと、志村ふくみさんを被写体に映像を撮ろうと思っていたところ、ご本人が高齢を理由に辞退されて、石垣明子さんにたどり着く。(石垣さんが志村さんの弟子だったというのは後から知ったらしい)

とにかく映像がキレイ。
そしてこの夫婦に焦点を当てたことが正解。沖縄・西表島に流れる独特のゆったりとしたとても豊かな時間が流れていく。
途中に都会の風景が差し込まれるのでその対比で"ゆったり時間”が際立つ。
逆に都会の映像は見慣れているはずなのに息苦しく感じるのはなぜだろう。


石垣夫妻のコメントもいい。
誰かのために織ると心がこもり、それは相手にも伝わる。
そういうモノ作りをしていきたい、と。
現代の大量生産には耳が痛い話。


そして、金星さんの歌がいい。
「ピースでは〜、強すぎて〜♪」
サイコーだ(笑)


<作品概要>
島の色 静かな声
(2008年 日本 75分)
監督:茂木綾子
出演:石垣明子、石垣金星
配給:silent voice

2014年11月24日月曜日

[CM] GAPのショートフィルム デヴィット・フィンチャー


GAPの2014年秋キャンペーンのCMを映画監督のデヴィット・フィンチャーが制作

「Dress Normal」
というスローガンで展開される秋キャンペーンの一環で、前編モノクロのスタイリッシュなショートムービーが4本公開。

カッコいい映像美をつくらせたらホントにすごい、鬼才デヴィット・フィンチャーがお届け。
カッコいいけど、ちょっと可笑しい。そんなユーモアのある4作品。

▼「Stairs」
階段を駆け上がる男の先に待つものは...




▼「Drive」
ずぶ濡れの女性が車中でとった行動は...




▼「Golf」
ゴルフの練習場、集中したいところだが...



▼「Kiss」
恋人とのキスも...



なんともオシャレで絶妙!
「ソーシャル・ネットワーク」や「ファイト・クラブ」といったダークトーンな作品を撮った監督とは思えない、オシャレ感とユーモアが絶妙。

CMを作ったのは、NIKEなどを手がけるクリエイティブエージェンシー、ワイデン&ケネディ ニューヨーク(Wieden+Kennedy New York


<作品概要>
「Dress Normal」
(2014年 アメリカ 45秒)
監督:デヴィット・フィンチャー
出演:
制作:ワイデン&ケネディ ニューヨーク
製作:GAP

2014年11月23日日曜日

エヴァンゲリヲン新劇場版:Q


スゴすぎる庵野監督の世界観!

はっきり言って全く意味は分からない。
デヴィト・リンチのような分かりそうで分からない感が激しく、内容からは置いてけぼりをくらってしまうが、観客の期待や予想を裏切りまくるその展開はスゴすぎる。

とにかく説明が全然ない、なぜ急に14年後なのか、いったい何が起こったのか、結局どういうことなのか、謎は一切解決されないまま物語は進む。

前作から14年後の世界。ニアサードインパクトが起こり、ネルフと敵対する組織ヴィレの指揮官である葛城ミサトは、アスカ、マリとともに初号機に搭乗するシンジの奪還を試みる。


結局解決されないだろう。この謎。
でもそれこそが「エヴァンゲリオン」の魅力。
何よりも、庵野監督の創り出す世界観こそが最大の魅力ポイント。

ファンの間で、いろいろと憶測が飛び交い、様々な解釈がなされ、それによって盛り上がることができるのがエヴァのスゴさだ。

4部作の最終章がどういう形で締めくくられるのかはすごく楽しみ。
来年2015年は、エヴァの舞台設定の年であるとともに、エヴァ20周年の年。
このメモリアルイヤーに最終章が公開されるのかどうかも最大の関心どころ。


<作品概要>
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
(2012年 日本 95分)
監督:庵野秀明
出演:(声)緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、石田彰、立木文彦、清川元夢、
配給:ティジョイ、カラー


2014年11月22日土曜日

[短編] レクサスのショートフィルム LEXUS SHORT FILMS 2014


レクサスが新鋭監督による2本のショートフィルムを発表。

“Life is Amazing”を掲げるレクサスが、クエンティン・タランティーノなどを育てたハリウッドの映画製作会社ワインスタイン・カンパニーと共同して日米の新鋭監督による2本のショートフィルムをお届け。

▼MARKET HOURS
気のいい警備員ランダルは同じマーケットで働くアンジェラに気があるが...



▼OPERATION BARN OWL
親友ジョナのプロポーズを演出エレンだが、本当の気持ちは...



それぞれちょっと心暖まったり、キュンとする良い作品。
劇中にはレクサス車もそれとなく登場。

それにしても14分ほどの短編でエンドロールが3分以上あるって長すぎでしょ・・・
せめてそこは短編サイズにしてほしかった。


<作品概要>
MARKET HOURS
(2014年 日本 14分)
監督:ジョシュ・ゴールドマン

OPERATION BARN OWL
監督:大川五月
脚本:落合賢

製作:LEXUS

2014年11月21日金曜日

世界の映画祭  International Film Festival


世界の映画祭って何がある?

世界中に映画祭ってあるけど、何がどう違うのか?
「カンヌ映画祭」って聞くけど、アカデミー賞と何が違うの?

アメリカのアカデミー賞とは、アメリカ国内で製作、上映された過去1年間の作品を対象としていて、6000人以上と言われる映画業界関係者からなるアカデミー会員によって選考されるもの。
そこから、作品賞や監督賞、主演女優賞などが決まります。

だから、その年のナンバー1を決めるアメリカだけのイベントです。
日本アカデミー賞、英国アカデミー賞、セザール賞(フランス)も同じ。


それに対して、世界中の作品を対象として、“まだ公開されていない作品が観れる”のが「国際映画祭」です。
大体2週間くらい開催していて、その期間に世界中からやってきた“初出し”作品が会場で上映されます。そして、コンペティション部門では、その中から映画監督などから構成された審査委員会によってグランプリや男女優勝が決められます。

国際映画祭は、
・初出し作品の中からグランプリなど賞を与える
・一般の映画ファンが映画祭上映作品を鑑賞できる
・各国のバイヤー(配給会社)が自国での公開のために買い付けにくる
という意味合いがあります。

ロカルノ映画祭

<主な世界の国際映画祭>

2月 ベルリン国際映画祭(ドイツ)  最高賞:金熊賞  来場規模41万人
5月 カンヌ国際映画祭(フランス)  最高賞:パルムドール 来場規模1.1万人
8月 トロント国際映画祭(カナダ)  来場規模32万人
8月 ロカルノ国際映画祭(スイス)  最高賞:金豹賞  来場規模8000人
8月 モントリオール国際映画祭(カナダ) 来場規模25万人 フランス語圏のためフランス作品が多い
9月 ヴェネチア国際映画祭(イタリア)最高賞:金獅子賞(作品) 監督は銀獅子賞 “ベネチア”とも表記 来場規模17万人
10月 釜山国際映画祭  アジアの新人監督中心  来場規模22万人
10月 東京国際映画祭  長編のみが対象 最高賞:東京グランプリ 来場規模12万人
2年に1度 モスクワ国際映画祭(ロシア) 最高賞:最優秀作品賞

※カンヌ、ベルリン、ヴェネチアが世界三大映画祭

日本を代表する国際映画祭と言えば、「東京国際映画祭」だけど、最近はおとなり韓国の釜山映画祭にだいぶ押され気味。アジアでの地位はぜひ築いてもらいたい。

星空の映画祭

国内にも映画祭はいろいろあって、地域の振興に役立っているものもある。
温泉街にある「湯布院映画祭」は、映画館のない街ということでも有名だし、八ヶ岳で夏の夜空の下で開催される「星空の映画祭」など。

短編専門の「ショートショートフィルムフェスティバル」、
こどもが主役の「キンダーフィルム映画祭」、
ドキュメンタリーに焦点を当てた「やまがた国際ドキュメンタリー映画際」、
料理メインな「東京ごはん映画祭」、
お笑いの「したまちコメディ映画祭」、
などなど。

けっこう個性的な映画祭は意外とあるものです。
何はともあれ是非体験を。




2014年11月19日水曜日

[CM] ソフィア・コッポラによるGAPのショートフィルム


GAPホリデーシーズンのキャンペーンCMをソフィア・コッポラが制作

「You Don't have to get them to give them Gap.」(知っているようで知らない、身近なあなたへ)というコンセプトで、冬商品を贈り物しようというキャンペーン。

アメリカの家族や恋人といった身近な人たちと過ごすちょっとした心あたたまるひと時を、4つのショートフィルムでソフィアが映像化。
何とも言えない雰囲気で見せるあたりがいい。

▼Gauntlet(ガントレット)

▼Mistletoe(ヤドリギ)

▼Crooner(クルーナー)

▼Pinball(ピンボール)


GAPは秋編をデヴィット・フィンチャーでも撮っていて、CMに旬な映画監督を連続で起用していてとても贅沢。
そして、次回もとても楽しみ!


<作品概要>
「Gap Dress Normal Holiday 2014」
(2014年 アメリカ 30秒〜1分)
監督:ソフィア・コッポラ
出演:
製作:GAP

2014年11月18日火曜日

[CM] 花王サクセス Dance with SUCCESS


花王サクセスのショートムービー

育毛剤のサクセスが、
「髪型は変わっても、頭皮は変わらない」をコンセプトにWEB限定のショートムービーを公開。




男が街で見かけた女性を音楽に合わせて口説き倒す!
主演の男性は、ダンサーのつとむ。
実写に髪型だけアニメーションをコラージュしてアフロからモヒカンまで、音楽に合わせて様々な髪型に七変化していく。

つとむのコミカルな踊りも楽しい。

最後に登場する赤い服の美女は、ロシア人モデルのマルガリータだとか。


<作品概要>
Dance With Success
(2014年 日本 2分)
監督:
出演:つとむ
製作:花王

2014年11月17日月曜日

[PV] 鉄拳のパラパラ漫画PV 映画「ベイマックス」


ディズニー映画「ベイマックス」のPVに、鉄拳がパラパラ漫画を描きおろし!

この映画の本質をよく表現できているということで制作サイドからもお墨付きをもらった感動の3分間。


鉄拳のやさしいタッチで、くるくると回りながら時が経過していく独特のタッチでヒロとタダシの兄弟とロボットのベイマックスが誕生する姿を丁寧に描いている。

この映像に使用された楽曲は、AIの名曲「STORY」。
これがまた映像にめちゃくちゃマッチしている!


<作品概要>
(2014年 日本 3分)
監督:鉄拳
出演:

製作:ディズニー

2014年11月16日日曜日

私にだってなれる!夢のナレーター嘆願志望  IN A WORLD


キャメロン・ディアスがカメオ出演!? アメリカの声優業界を描くコメディ

それにしても、この邦題は何なんでしょうか?
内容的にも、原題のままでいいように思うけど。

声優というと洋画の吹替えやアニメの声優を連想してしまうけれど、アメリカの(この映画の)場合は、映画予告編のナレーターのお話。

ハリウッド映画の予告編でよく聞く、男性が低い声でナレーションする、アレ。

大物声優の娘のキャロルは自身も声優を夢見るが、今は方言指導で細々とやっているが、父親の再婚で実家から追い出されることに。自立できる仕事が必要になったキャロルは、声優のオーディションを受ける。

劇中に登場する亡くなってしまった大物声優のドン・ラフォンティーヌは、実在の人物。
あの低音ボイスで、なんと日に7〜10本のナレーションをこなし、ハリウッドで最も多忙な声優として活躍していたのだとか。

★代表作
「2001年宇宙の旅」「ランボー」「13日の金曜日」「ターミネーター」「危険な情事」「ホーム・アローン」「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」etc


このドン・ラフォンティーヌの決め台詞が、原題の「in a world...」となっている。
そして、そのセリフを復活させる超大作の予告編を巡って、新旧の声優陣がこぞってオーディションを受けるのだけど、その予告編映像に映る戦闘スタイルの女優に見覚えがある、「ん? キャメロン・ディアス?」。でも、まさか。
そしたらクレジットされていた(笑)


監督は、主演も務め脚本も自ら書き上げたレイク・ベル。
女優としては、「べガスの恋に勝つルール」(キャメロン・ディアス主演)などに出演。
ここのつながりでキャメロンにカメオ出演をオファーしたのかも。
モー役のロブ・コードリーも「べガス〜」に出てました。


<作品概要>
「私にだってなれる!夢のナレーター嘆願志望」  In a World
(2013年 アメリカ 93分)
監督:レイク・ベル
脚本:レイク・ベル
出演:レイク・ベル、ディミトリ・マーティン、フレッド・メラメッド、ロブ・コードリー、ケン・マリーノ、エヴァ・ロンゴリア、ドン・ラフォンティーヌ、キャメロン・ディアス
販売元:ソニー・ピクチャーズ

2014年11月15日土曜日

天才スピヴェット  The Young and Prodigious T.S.SPIVET


ジュネの描く映像世界は、3Dとの相性がバツグン!

映像へのこだわりが尋常ではないジャン=ピエール・ジュネが、遂に3D機器を手に嬉々として撮ったであろう最新作は、マーティン・スコセッシ監督の「ヒューゴの不思議な発明」のごとき不思議な映像世界で、天才科学少年スピヴェットが頭の中に描くことがスクリーンから飛び出してくる!というまさに飛び出す絵本のよう。

カウボーイのお父さんと昆虫学者のお母さん、それにアイドルを目指すお姉さんとモンタナの牧場で暮らすT.S.スピヴェットは、わずか10歳にして、応募した発明が権威ある科学賞に選ばれてしまう。授賞式のスピーチを引き受けてしまったスピヴェットは家族には内緒でひとりアメリカを横断して会場のあるワシントンD.C.への向かうのだが。

スピヴェット役のカイル・キャトレットくんがたまらない! 彼の採用を決めたことで年齢設定を原作の12歳から10歳に変えたり、彼より背の低い弟役が見つからず二卵性双生児で彼より背の高い弟という設定にしたという苦労はあったらしいが、それだけの価値がある逸材だった。
そして、カウボーイのお父さん役も今まで知らなかったけどかなりカッコいい役者さん。


舞台はアメリカなのだけど、ジュネらしいシュールで不思議な世界観と変わり者ではみ出し者が主人公なのが嬉しい。
そして何と言ってもジュネ組のドミニク・ピノンが健在なのがいい。


<作品概要>
天才スピヴェット」  The Young and Prodigious T.S.SPIVET
(2014年 フランス=カナダ 105分)
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
原作:ライフ・ラーセン「天才スピヴェット君傑作集」
出演:ヘレナ・ボナム=カーター、ジュディ・デイヴィス、カラム・キース・レニー、カイル・キャトレット、ニーアム・ウィルソン、ジェイコブ・デヴィース、リック・マーサー、ドミニク・ピノン
配給:GAGA


2014年11月14日金曜日

ニンフォマニアック Vol.2  Nymphomaniac


ジョーが語る衝撃な事実の向こう側

Vol.1の前編では、ジョーが“性”に目覚めた幼いころから若い時代を主に新人女優のステイシー・マーティンが登場していたけど、徐々に語り手であるシャルロット・ゲンズブールが登場するようになる。

シャルロット、かなり体張ってます。

ジェロームと再会し、家庭も持ちやっと愛のある性生活ができると思いきや、その頃にはジョーは不感症に陥り、それを解消するために新たな刺激を外に求め始める。そして、やがてそれに歯止めがきかなくなっていく。

・CHAPTER6 東方教会と西方教会(サイレント・ダッグ)
・CHAPTER7 鏡
・CHAPTER8 銃
・EPILOGUE


ジョーの暴走ぶりもすごいけど、それを体現するシャルロットがまたすごい。
黒人とのやりとりは、完全にコメディ(笑)
だけど、ジェイミー・ベル扮するドS男が出てきてからの本気でぶん殴られて、お尻丸出しでムチで打たれての展開はかなりマジ。 体張ってます。


ウィレム・デフォーとは思わぬ形でビジネスパートナーとなる。
この展開がまたすごい。
ジョーの才能が借金取りに活きるなんて誰が想像できるでしょうか。

この奇想天外で数奇な物語を淡々と感情を排して語るジョー。
ゆっくりとしゃべるけど、ヘビーすぎる人生。
こんな体験は映画十分。
これでもかと落ちていくジョーの人生、その加減はとどまることを知らない。

最後まで驚きある展開。
2部作になるほど長時間のストーリーだけどちゃんと最初とつながって、話としてはとても良くできている。


宗教や道徳などの既存概念を挑発し、タブーに挑戦しつづけながら、映画としてもしっかりと面白いものをつくってくるラース・フォン・トリアーのすごさを改めて感じる。



<作品概要>
ニンフォマニアック Vol.2」 NYMFHOMANIAC
(2013年 デンマーク=ドイツ=フランス=ベルギー=イギリス 117分)
監督:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレイター、ジェイミー・ベル、ユマ・サーマン、ウィレム・デフォー、ミア・ゴス、ソフィ・ケネディ・クラーク、コニー・ニールセン、マイケル・パス、ジャン=マルク・バール、ウド・キア
配給:ブロードメディア・スタジオ

2014年11月13日木曜日

[CM] バーバリー ショートフィルム 「From London With Love」


バーバリーのショートフィルム

2014年のクリスマスキャンペーンフィルムが発表。
主演は、デビット&ヴィクトリア・ベッカム夫妻の次男ロメオ・ベッカム。

バーバリー柄の傘をさしたイケメン少年がそう。

バーバリーのトレンチコートやマフラーをみにまとったダンサーたちがライトアップされた夜の広場で華麗に踊る。




<作品概要>
「From London With Love」
(2014 イギリス 4分)
監督:
出演:ロメオ・ベッカム

音楽:エド・ハーコート
製作:バーバリー

2014年11月11日火曜日

馬々と人間たち  of horses and men


馬々と人間たちの舞台、アイスランドの大自然

日常の中に普通に馬がいる。中世ではなくて現代のアイスランド。(モンゴルじゃない)
1000年以上も純血種となっていることが珍しいというアイスランド馬と、そこに暮らす人たちの、可笑しくも微笑ましい、馬とは切っても切り離せないエピソードの数々が描かれる。

昨年の東京国際映画祭で「最優秀監督賞」を受賞した本作。その時からこのポスタービジュアルがどういうことなのか気になっていたけれど、ようやく鑑賞することができて良かった。

・自慢の愛馬との散策中に起こるハプニング
・ウォッカ好きすぎての突飛な行動
・柵を巡る追跡劇
・ヨハンナと逃走した暴れ馬の行方
・旅人カミーリョと老婆
この5つのエピソードから構成


馬と人とがホントに密接に暮らしている。
そしてアイスランドの大自然がとてもいい。 とても現代とは思えない。

すごく馬に乗りたくなってしまう映画。
北海道あたりで同じような暮らしができないものでしょうか?


<作品概要>
馬々と人間たち」  OF HORSES AND MEN
(2013年 アイスランド 81分)
監督:ベネディクト・エルリングソン
出演:イングバール・E・シーグルズソン、シャーロッテ・ボービング、ステイン・アルマン・マグノソン、ヘルギ・ビョルンソン
配給:マジックアワー

2014年11月9日日曜日

[短編] リフォームを贈ろう。/ほっとファーザー


映画「踊る大捜査線」の本広克行監督が、ショートムービーを制作


「リフォームを贈ろう。」というLIXILのキャンペーンの一環として、本広克行氏が総監督を務めたショートムービーが、この「ほっとファーザー」。


「男同士だから、二人で会うと気まずくて、いつも何を話せばいいのか分からない」

そんな父子にあるシチュエーションを取り上げる。
リフォームすることで得られる物理的な新しさだけでなく、風呂で男同士背中を流す、という古典的で普遍的なスタイルで親子のコミュニケーションを描く。


ショートムービーのほかにも“作家たちが綴る「リフォームを贈る。」ストーリー”として、直木賞作家の村山由佳氏や藤田宜永氏が、ひとり1話のショートストーリーを掲載している。


<作品概要>
「ほっとファーザー」
(2014年 日本 10分)
総監督:本広克行
監督:森英人
出演:渡辺哲、安井順平、西牟田恵、福井博章、太田美穂
製作:LIXIL
制作:STEVEN STEVEN 本広組

2014年11月8日土曜日

[PV] OK Go I won't let you down


どうやって撮影したの??


とにかくこのPVがすごすぎる。
Perfumeが登場する冒頭の室内から室外へ、そして空撮へと続く過程がワンショットで撮影されている!


あの乗り物はホンダ製。(今回はホンダとのコラボです)
そして、みてると分かるけどダンサーたちが全員日本人。(総勢2400名!)
そう、これは日本で撮影され、日本人スタッフによる製作なのです。
カンヌで金賞も穫ったアーティストたちによるすごすぎる作品。


<作品概要>
「I won't let you down」
監督:関和亮
クリエイティブディレクター:原野守弘
出演:OK Go、Perfume
協力:ホンダ

2014年11月7日金曜日

ニンフォマニアック Vol.1  Nymphomaniac


ニンフォマニアックとは、女性の「色情狂」

また、すごいセンセーショナルな題材で注目をあびるラース・フォン・トリアーの新作。
この内容で、2部作なのがすごい(笑)

内容だけ聞いているとポルノ映画なのに、このポスターやチラシはどうでしょう。
クオリティが高すぎて、芸術の域にいってしまいそうなほど秀逸。
チラシの写真だけみているとこの豪華キャストによる大乱交パーティのような感じがするけど、実際はひとりの女性による回顧談。
それぞれの男性ごとに体験談が語られる。

だから、チラシ用にみんなを呼んで写真撮影したということでしょうか(笑)

路上で行き倒れている女性を介抱することになった紳士セリグマン。「いったい何があったのか?」と事情を聞くと彼女は、自分の過去を語り始めた。彼女の名前はジョー。
幼い頃に芽生えた「性」への好奇心と、恐るべき男性遍歴が明らかになっていく。


前編ではキャスト全員出てこない、そして内容も完全に途中で終わってしまうため、2作セットでみないと何とも言えない。
シャルロット・ゲンズブールは語り手で、彼女のスゴすぎる男性遍歴のシーンを演じるのは、新人のステイシー・マーティン。美しい体を惜しげもなく披露!

だけど、意外とそこまでハードな感じではない。もちろん終始セックスシーンなわけだけど、釣りに喩えてみせたり、「毎晩7,8人を相手にするにはスケジュールが肝心!」などと言ってみたり、振り切りすぎていてもはやコメディですらある。
特に、Mrs.Hのユマ・サーマンがサイコー(笑)


<Vol.1>
・PROLOGUE 
・CHAPTER1 釣魚大全
・CHAPTER2 ジェローム
・CHAPTER3 H夫人
・CHAPTER4 せん妄
・CHAPTER5 リトル・オルガン・スクール

この内容でこの豪華キャストはすごい、いろいろと物議をかもしているラース・フォン・トリアーだけど、やはり俳優たちには尊敬されていて、一度は仕事をしてみたい相手なのでしょう。
カンヌを出禁になるなど、かなりの問題児なのに(笑)


<作品概要>
ニンフォマニアック Vol.1」 NYMFHOMANIAC
(2013年 デンマーク=ドイツ=フランス=ベルギー=イギリス 117分)
監督:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレイター、ジェイミー・ベル、ユマ・サーマン、ウィレム・デフォー、ミア・ゴス、ソフィ・ケネディ・クラーク、コニー・ニールセン、マイケル・パス、ジャン=マルク・バール、ウド・キア
配給:ブロードメディア・スタジオ

2014年11月6日木曜日

第27回 東京国際映画祭 2014


「第27回 東京国際映画祭」受賞結果

2014年の10月31日に閉幕した東京国際映画祭の受賞結果が発表。
今年は、庵野秀明監督特集を組むなど「アニメ色」を強く打ち出したプログラムとなった。

毎回、方向性を模索している感があるが、欧米の主要映画祭と重複しないオリジナル作品を集めようとするとやはりアジア色をだすことになるけど、アジアの映画祭ではお隣の釜山国際映画祭の勢いに押されている昨今。今年は“日本のお家芸”であるアニメーションの色を大分出してきた。


<コンペティション 受賞結果>
◉東京グランプリ
『神様なんかくそくらえ』(アメリカ=フランス) Heaven knows What
監督:ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ


◉最優秀監督賞
ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ
『神様なんかくそくらえ』(アメリカ=フランス)

◉審査員特別賞
『レッスン/授業の代償』(ブルガリア=ギリシア) The Lesson
監督:クリスティナ・グロゼヴァ、ペタル・ヴァルチャノ

◉最優秀男優賞
ロベルト・ヴィエンツキェヴィチ
『マイティ・エンジェル』(ポーランド)

◉最優秀女優賞
宮沢りえ
『紙の月』(日本) Pale Moon

◉最優秀芸術貢献賞
『草原の実験』(ロシア) Test
監督:アレサンドル・コット

◉WOWOW賞
『草原の実験』(ロシア) Test
監督:アレハンドル・コット

◉観客賞
『紙の月』(日本) Pale Moon
監督:吉田大八


<アジアの未来 受賞結果>
◉作品賞
『ゼロ地帯の子どもたち』(イラン) Borderless
監督:アミールフセイン・アシュガリ

◉国際交流基金アジアセンター特別賞
監督:ソト・クォーリーカー
『遺されたフィルム』(カンボジア)


<日本映画スプラッシュ 受賞結果>
◉作品賞
『百円の恋』(日本) 100 Yen Love
監督:武正晴

◉スペシャル・メンション
『滝を見にいく』(日本) Ecotherapy Gateway Holiday
監督:沖田修一


<“SAMURAI(サムライ)”賞
◉北野武
◉ティム・バートン

▼公式サイト

割と地味めとも言われる今回の受賞作品群。
ビジュアル的にも内容的にも渋い作品が並んだ感じではあるけれど、面白そうなものは多い。ひとつでも多く配給してもらいたい。

ちなみに、前回受賞作品からの公開作品は、
「レッド・ファミリー」
「馬々と人間たち」
「祖谷物語」
のみ。
邦画は別として、2作品のみとは寂しい。グランプリや審査員特別賞はいずこ?


<開催概要>
第27回 東京国際映画祭」 Tokyo International Film Festival(TIFF)
主催:公益財団法人ユニジャパン
共催:経済産業省、東京都
期間:2014年10月23日(木)〜10月31日(金)9日間
会場:六本木ヒルズ、TOHOシネマズ日本橋、他
支援:文化庁

2014年11月5日水曜日

冒険者たち  Les Aventuriers


アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラのコンビがサイコー!

やっぱり名作はすばらしい。
昔のフィルムの質感や一瞬途切れる感じとかも合わせて時代を感じられていい。

いまの時代なら危険すぎて絶対にCGにするような冒頭のセスナのシーン。生のスタントでやっているのが分かってしまうから、余計にドキドキしてしまう。
この時代の生のアクションは、CGで何でもできる技術に慣れてしまった“いま”だからとても新鮮に映る。

飛行機乗りのマヌーと、相棒でエンジン技師のローラン。ハンサムで大胆な行動派マヌーと、渋くて計画派なローランは対照的だけど、とても気の合う仲間。
そこにアーティスト志望の美女レティシアが加わり、ひょんなことからアフリカへ宝探しに行くことに。


ヒゲ面のアラン・ドロンも超絶かっこいい!
髪もヒゲも伸び放題、だけどバッチリキマってる。 引き締まった体に黒Tシャツに短パン。シンプルなスタイルだけどすごいマッチ。

リノ・ヴァンチュラも日焼けした素肌にピンクのYシャツをボタン締めずに羽織り、メタボなお腹もなんのその、渋さ全開でタバコをせがむ元パイロットをあしらうあたり、貫禄がありすぎる。
レセプションやカジノにスーツでバッチリきめていく姿や、アラン・ドロンがバイクに乗るときにきているのは、B-3。昔流行ったアメリカ空軍のフライトジャケット。
(ちなみに映画「大脱走」でスティーブ・マックイーンが着ているのは、A-2)


日本版のポスターも味があっていい。
クラシックな映画ポスターはこの手の味があるものが多い。

劇中では、日本人らしきキヨバシ(キヨハシ?)とか言う人物が出てきたり、日本食レストランに言って、箸を使ってすき焼きを食べていたり、意外と日本が出てきて変な感じ。


ラストシーンに出て来る「要塞島」の廃墟っぷりもそうだけど、登場人物にみんな陰のある感じとか、ざらついた映像とか、はかない夢を追い求める男たちの不器用な生き様が、この時代の空気感とマッチしていていい。


<作品概要>
「冒険者たち」  Les Aventuriers
(1967年 フランス 113分)
監督:ロベール・アンリコ
原作:ジョゼ・ジョヴァンニ
出演:アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカス
配給:大映

2014年11月1日土曜日

レッド・ファミリー  red family


理想の家族は、真っ赤なウソだった、けれど。

キム・ギドクがプロデュースという本作。
一見すると礼儀正してく仲の良い理想の家族が、実は赤の他人の北朝鮮工作員たちだった、というかなり面白い設定。
隣に住むケンカばかりの家族との対比で、「家族とは?」を考えさせられる。
キム・ギドク的な痛さは一切ない、笑って泣けるエンターテイメント作品。

若い夫婦とその娘におじいさん。礼儀正しくて仲の良いこの家族。実は韓国事情をスパイするために北朝鮮からやってきた工作員たち。それぞれに家族はいるものの「任務」として偽の家族を演じるが、隣に住むケンカばかりしている「資本主義のバカども」家族の、言いたいことをぶつけ合う姿に次第に影響されていく。


外にいれば仲いい家族だけど、ひとたび家の中に入れば軍隊のような序列社会。
同志とは呼び合うが、上司と部下の関係で、おじいさんが上司のお母さんに怒られるというかなり笑える展開。

本当の家族とは離ればなれで、1年中、46時間中が任務中。
同志の中で監視し合い、偽の家族を演じ、矛盾に感じることも口にはできない。
そんな抑圧されたスパイたちを、隣に住む「資本主義的堕落」のおバカな家族が、影響を与えていく展開は、かなりコミカル。

監督は、本作が長編デビューとなる、イ・ジュヒョン。
キム・ギドクに突然脚本を渡され、最初の打ち合わせ以降は一切を任され、キム・ギドクは撮影中、一度も現場に来なかったとか。
ものすごい振りっぷり(笑)

キム・ギドクの色はないが、後進を育てようとする姿勢はすごくいい。


<作品概要>
レッド・ファミリー」 Red Family
(2013年 韓国 100分)
監督:イ・ジョンヒュン
出演:キム・ユミ、チョン・ウ、ソン・ビョンホ、パク・ソヨン
配給:GAGA