アメリカの暗部「奴隷制」をえぐる衝撃作
アカデミー賞で、主要部門にことごとくノミネートされ、みごとに作品賞を受賞した「それでも夜は明ける」。これが事実ベースというからホントにすごい。それにしてもアカデミー会員はこの手の話が大好きだ。主演のキウェテル・イジョフォーをはじめ、ルピタ・ニョンゴも体を張り、マイケル・ファスベンダーの鬼気迫る演技は見応えがあった。個人的にはポール・ダノにもっと出番をまわして欲しかったけど、ポール・ジアマッティ、ベネディクト・カンバーバッチにブラッド・ピットとここまで豪華俳優陣の中なら仕方ないのか。
1842年、ワシントン。自由黒人のサイモン・ノーサップは、ミュージシャンとして腕のいい料理人の妻と子ども二人と、白人と同じように何不自由なく暮らしていた。ある日、旅の興行師からバイオリンの腕前をかわれ、南部での興行の依頼を受ける。2週間の興行はみごとに盛況で終わり、約束の給料も手にして泥酔した翌朝、彼の手足は鎖でつながれていた。
騙され拉致されて奴隷商人に別名を付けられて売り飛ばされ、奴隷として過ごす日々が始まった。
原作は、本人が著した「12 years a slave」。直訳すると、「12年間、奴隷」。
この原作を映画化したのが監督のスティーブ・マックイーン。前作の「SHAME シェイム」でセックス依存症の男を描き、スキャンダラスな話題を呼んだ英国出身のアーティスト。社会の暗部を鋭くえぐるのが持ち味。結構エグいところまで掘り下げるから衝撃度は強い。
それにしても奴隷制度はアメリカの闇の歴史だなーとつくづく思う。そして自らそれを映画にしてしまうのだからそれもすごい。
最近のアメリカではこの時代をテーマにしたものが多い。スピルバーグの「リンカーン」やタランティーノの「ジャンゴ」などもこの時代。「奴隷制度」を描きながらも監督が違うとこうも表現が違うものかと見比べてみるのも面白い。
自由黒人だったのに拉致されて奴隷として売り飛ばされ12年間も奴隷として過ごさざるを得なかった主人公のソロモンも悲惨だが、この話で一番悲惨なのは、ルピタ・ニョンゴ演じるパッツィーだ。暴力的なエップス(マイケル・ファスベンダー)に気に入られたばかりに夫人からも嫉妬を受け、ダブルで痛めつけられる。自分を殺してくれるようにソロモンに懇願するが断られ、そのソロモンは自由の身となって帰っていってしまう。彼女の地獄は、それからも続くのだ。 自分の奴隷を取られたと思っているエップスの怒りの矛先は彼女に向くかもしれない。スティーブ・マックイーン監督が描く容赦ない奴隷への仕打ちぶりを散々見せられた後だと尚更、パッツィーが心配になってしまう。。。
過酷な奴隷生活で倒れていく仲間を埋葬して歌うシーン。ゴスペルってこういうルーツなんだな、と思うとちょっと感慨深い。劇中で歌われる「Roll,Jordan roll」がいい。
それにしても、ブラピの役どころはずるい。最後にかっこいいところをかっさらおうなんて。でも、そこはプロデューサーにも名を連ねる特権なんでしょうか(笑)
製作もブラピのプロダクション「プランB」。
ブラピ主演以外でも「キック・アス」なども製作している。
※アカデミー賞 主要部門結果
★作品賞受賞!
・監督賞ノミネート(スティーブ・マックイーン)
・主演男優賞ノミネート(キウェテル・イジョフォー)
・助演男優賞ノミネート(マイケル・ファスベンダー)
★助演女優賞受賞!(ルピタ・ニョンゴ)
<作品概要>
「それでも夜は明ける」 12 years a slave
(2013年 アメリカ=イギリス 134分)
監督:スティーブ・マックイーン
出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ポールジアマッティ、ルピタ・ニョンゴ、サラ・ポールソン、ブラッド・ピット、アルフレ・ウッダード
配給:GAGA
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