大阪朝鮮高級学校ラグビー部の青春ドキュメンタリー
彼らは普通の高校生。ラグビー部に所属し、全国大会「花園」への出場と日本一を目指して、紆余曲折ありながら日々練習に明け暮れる。
これだけだとサッカーやバレーボールなんかでもある高校生のスポーツドキュメンタリーと変わらない。だけど彼らが大阪朝鮮高級学校(大阪朝高)の生徒たちであるところが、本作にピリリとスパイスが効いているポイント。韓国出身の朴思柔(パク・サユ)監督の目線で描かれる。
2010年、大阪朝高ラグビー部は創部以来、初となる花園での準決勝を戦った。実力がありながら1994年まで花園出場は認められていなかったが、2大会連続でベスト4入りという名実ともに強豪校となった彼ら在日ラグビー部が、グラウンド裁判や高校無償化からの排除、南北緊張と祖国への想いなど複雑な社会環境の中、悲願の日本一を目指す姿を追う。
彼らは60万人いるといわれる在日の同胞に応援され、ラグビーに青春を捧げる。
パク・サユ監督 |
その裁判はというと、日本人をはじめ多くの市民の署名により無事和解となりました。
その他にも、高校無償化の排除などの問題も降り掛かる。大阪市長の橋下徹氏が高校に視察を行い、その日に無償化から外れる決定がなされた。それは北朝鮮に通ずる機関に助成金は出せないというものだった。
しかし、大阪の行政が絡むドキュメンタリー映画には、「立候補」など橋本さんはよく出てくる。
大阪朝高ラグビー部は強い。
公式戦への出場が認められたのは1991年で創部から20年以上経ったころ。花園への予選参加が特例で認められたのが1994年。そして、1998年には大阪府の決勝戦に駒を進めるが名門啓光学園に敗れる。(この年、啓光学園は花園で優勝)
大阪は高校ラグビーの強豪がひしめく激戦区。この地区で着実に力をつけてきている。そして、この映画に出てくる生徒たちは「黄金期」と呼ばれ、2大会連続でベスト4入りという快挙を成し遂げる。映画でも中心メンバーだった主将のガンテやエースのユインらは、現在、大学ラグビーで活躍し、ユース日本代表にも選出されている。
試合中に脳しんとうを起こし、規定でその後花園で試合ができなかったエースのユインのためにサプライズで、全国の強豪校に声をかけ集まったメンバーによる“親善試合”が行われたエピソードは、とても心あたたまる。監督の発案らしいけど、この話は新聞などでも取り上げられたらしい。
よく聞いていると、彼らは日本語と朝鮮語が交じり合ったしゃべり方をしていて面白い。
印象的だったのは、各国の高校と交流する合宿で、イギリス人に「君は韓国人か?」問われ「そうだ」と答えたら、横にいた韓国人に「いや、オマエは日本人だ」「オレがホンモノの韓国人だ」と言われたというエピソード。これは彼らの微妙な立場をよく物語っている。
日本・韓国・北朝鮮、対立し合う各国がひとつに合わさっているのが朝鮮高校だったりする。もしかしたら、その3カ国の問題解決にひと役買うのが彼らだったりするのかもしれない。
<作品概要>
「60万回のトライ」
監督:朴思柔(パク・サユ)、朴敦史(パク・トンサ)
音楽:大友良英
配給:浦安ドキュメンタリーオフィス
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