2014年5月1日木曜日

プレイタイム (デジタルリマスター版)  Playtime


やっぱり劇場の大画面で隅まで観たい!破産するほどの野心作

ジャック・タチの想いが詰まりまくったのがこの「プレイタイム」。「ぼくの伯父さん」で商業的成功を収め、大作を撮れることになったタチが次回作に選んだのが本作。タチ特有の細かなギャグの連続と、近未来的なデザインで統一された世界観を創り上げた。
実際にパリ東部にオープンセットを作ったのだけど、あまりの規模の大きさにタチ・ヴィル(タチの街)と言われるほど、ひとつの街のような規模だったらしい。

ユロ氏(ジャック・タチ)は、パリのとある企業に訪問するが、担当者は忙しくてなかなか会えない。慣れない最新設備のビルをみているうちに、ビル内の展示会イベントやアメリカ人観光客に巻き込まれ、面談の機会はどんどんと遠のいていく。

タチ流のギャグとユーモアがちりばめられ、近未来的で機械的なイメージの豪華セットの中で、ジャック・タチの超大作は展開されていく。


映画を観ると、ジャック・タチのこだわりと、やりたかったことを“これでもか”というほど詰め込んだんだろうな、というのがすごい伝わってくる。
なんでも、総製作費は150億フランで、当時の為替ルートで言うと、なんと1000億円を超える、天文学的な予算だったとか・・
ハリウッド大作を大きく上回るこの製作費はにわかには信じ難いほどの大金。
フランス映画はそんなにお金あったんでしょうか。。


ちなみに、20世紀フォックスが社運をかけて製作費を投入したのが「タイタニック」。ジェームス・キャメロンは予算を大量に使うことで有名だけど、2億ドルの予算にビビったフォックスは、パラマウントに共同配給を持ちかけ、リスクを減らした。ところがフタを開ければ、世紀の大ヒット。世界興行を塗り替える結果となった。そして、20世紀フォックスの利益はというと、北米の興行権をパラマウントに売り渡してしまっていた。という、なんだか昔話のようなエピソード。
それより大きな予算とは。何だか信じられませんが。


よそ見しながら歩いて目の前の柱に激突するギャグは十八番。日本でもドリフターズなどに受け継がれている。ドアマンが割れたガラスドアのドアノブだけを持って、開けたり閉めたりとか、タチ流のギャグは満載。
音にもこだわっていて、室内ではシーンとした無音で足音や刷れる音が響く、それに対して室外に出ると一気に車の騒音で充たされる。場面によって音響を使い分けたりとかなり実験的な表現を試みていたこともみてとれる。


久しぶりに観て思いっきり堪能してしまった。
細かいこだわりが満載だ。クラシックカーもたくさん登場するから見ているだけで楽しい。クラシックカー好きには「トラフィック」の方がいいかもしれないけど、本作でもかなりの数のクラシックカーが登場する。
一部のファンには熱狂的に支持されたけど興行的に大失敗だった。
なんだか分かる気はする。
こういう作品は後世で再評価されるもんだ。

それと服装がみんなおしゃれ!
ドレスアップしたアメリカ人よりもフランス人たちのスタイルが見ていていい。ユロ氏のコートとクロップドパンツのスタイルは、いつもてもいい。洋服が欲しくなってしまうほど。
ジャック・タチの映画には何かとアメリカが出てくる。嫉妬の対象なのか憧れの照れ隠しなのか、いずれにせよ影響力を強く受けていることが分かる。


それと、
ジャック・タチの映画はポスターがとても秀逸!
今回の「ジャック・タチ映画祭」のパンフレットもポストカード風になっていて、昔のポスターデザインであしらわれていた。コラムは、もちろん小柳帝さん。日本におけるジャック・タチの第一人者ではないでしょうか。
しかしながら、それ以外は内容の薄いポスターデザインに頼り切ったパンフレットでした。




観終わって、エンドロールの最後に出る「字幕翻訳 寺尾次郎」が最高!
やっぱりこの時代のフランス映画を観たら寺尾さんの名前があってほしい。


<作品概要>
プレイタイム」  Playtime
(1967 フランス 124分)
監督:ジャック・タチ
出演:ジャック・タチ、バーバラ・デネック、ジャクリーヌ・ル・コンテ、ジョルジュ・モンタン
配給:日本コロムビア

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