2014年3月4日火曜日

17歳  Jeune&Jolie


17歳のファム・ファタール

フランソワ・オゾンの新作は、自分の気持ちの趣くまま様々な男性と情事を重ねる美少女の話。ルイス・ブニュエルの「昼顔」に例えられる本作は、昔のフランス映画好きのオゾンが好きそうなテーマ。
それにしても主演のマリーヌ・ヴァクトは美しい。

パリの名門高校に通い、裕福な家庭で不自由無く暮らすイザベル。夏、バカンス先でドイツ人青年と初体験を済ませる。秋、ホテルの男性を訪ね、情事の後にお金をもらうイザベルの姿が。冬、顧客のひとりが情事の最中に死んでしまう。やがて警察の捜査が彼女にもおよび彼女の売春行為も明らかになってしまう。そして、春、普通の生活に戻ろうとするイザベルであったが、、、

お金にも愛情にも不足していないイザベルがなぜ売春を繰り返すのか。映画はイザベルが初体験をむかえた16歳の夏から1年を4つの季節ごとに切り取っていき、イザベルの行為を淡々と映し出す。そこからはイザベルの感情や狙いは分からない。もしかしたら彼女自身も分かっていないのかもしれない。客をとる方法は彼女が作ったホームページから。売春斡旋がある訳ではなく、フリーでやってるところがすごい。(1回300ユーロ也) 初体験の相手や同級生など“客”でない相手とも1回寝ればもう気持ちはそこにない。興味がなくなってしまうのだ。そういうことを繰り返すたびに彼女自身が自分の性に気づいていく。
そして最後に彼女が選んだ道は。。。


男から見れば、美貌の持ち主でミステリアスな彼女はファム・ファタールのようだ。だけど男を狂わす本当のファム・ファタールではまだない。そう、“まだ”ないだけ。ファム・ファタールはこうやってできあがる、という前日譚を見たような、そんな印象。
まるで「ファム・ファタール エピソードゼロ」(笑)

映画の観客はそんなイザベルの行為をのぞき見る。彼女の弟がいつもこっそりとイザベルを物陰からのぞき見るが、この“のぞき見”はオゾン映画の特徴かもしれない、前作「危険なプロット」でもそうだったけど、オゾンは“のぞき見”は好きだ(笑)

シャーロット・ランプリングが出てくるのもオゾンファンとしてはポイント。それにしても彼女の貫禄は凄まじい。(ホテルの6095室の数字に何か意味があるのだろうか?)

フランスでは18歳からが成人。17歳とは、これから大人になるけど法律的にはまだ子供という時期。そういう微妙な年齢の心の揺れ動きをオゾンは見事に描いてみせた。
原題の「Jeune & Jolie」の意味は、「若く、そして綺麗」。
若く、綺麗な17歳のファム・ファタールが誕生する。

<作品概要>
17歳」  Jeune & Jolie
(2013年 フランス 94分)
監督:フランソワ・オゾン
出演:マリーヌ・ヴァクト、フェラルディン・ペラス、フレデリック・ピエロ、ファンタン・ラヴァ、ヨハン・レイセン、シャーロット・ランプリング、
配給:キノフィルムズ


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