2014年3月19日水曜日

パラダイス:神  Paradise:faith


信仰って何だ? をザイドル流に痛烈に皮肉る

「パラダイス:愛」で、ケニアのビーチボーイにのめり込んだテレサに続いて、のめり込み第二弾は、その姉アンナ・マリアの神イエス・キリストへの過剰までな信仰について。もうホントに過剰に振り切るっておもしろい。

ウィーンでレントゲン技師として働くアンナ・マリアは、夏休みも信仰に日々を捧げる。移民が多い地区にマリア像を持って布教にまわったり、お仲間を自宅に招いて祈祷会を行ったりする。祈りの部屋では人々に代わって自らを鞭打ち、懺悔をしたりする。
ある日、車いすでイスラム教徒の夫が2年ぶりに帰ってくる。その日からアンナ・マリアの日常が徐々に狂い始めていく。
それにしてもこの監督はすごい、おかしい、変だ。
キリストの像をあんな風に扱うなんて普通の監督じゃ絶対にできない。あれはすごい。度を超すとああなるのか(笑) とても言えないのでそこは観てのお楽しみ。
劇場では笑いすら起こる。厳しい現実をリアルな描写でひたすら映し出すのに、振り切りすぎるとそれは喜劇になるのだろうか。完璧な構図とユーモアが独特な世界観を醸し出す。

アンナ・マリアの布教スタイルもすごい。ひとの家に乗り込んでは、一方的な説教をする(笑)バツイチ同士の円満そうな夫婦に貞節を説いて大反発をくらったり、アル中女のお酒を流しに勝手に捨てて取っ組み合いのケンカになったりとかなり危険。
信仰で愛を説く割に、帰ってきた夫への仕打ちはかなり冷徹だし、その夫はイスラム教徒だ。
「こんなにも信仰に全てを捧げているのに」というアンナ・マリアの想いとは裏腹にけっこう自分自身が矛盾だらけだったりする。
このあたりのシニカルぶりがザイドル監督の巧いところ。なんともおもしろい。


それと取っ組み合いのケンカが毎度ながら本気過ぎて笑う。どういう演出であそこまでやらせるんでしょうか。
今回は、アンナ・マリア VS 車いすの夫、アンナ・マリア VS アル中のロシア女。
この2回戦ともかなり見物。

レントゲン技師は稼ぎがいいのか、とてもいい家に住んでいる。車いす用に階段も電動で上下できるようになってるし。2階のテラスからは緑が見えるし部屋もすごくキレイ。
シンプルな内装もザイドル監督の画にすごく合っている。こういうシンプルな感じが監督の好みなんだろうか。場面写真をみると画の構図も左右対称な感じが多い。この辺が特徴か。

帰ってきた夫にさんざん掻き回された結果のアンナ・マリアの取る衝撃のラストは圧巻。


<作品概要>
パラダイス:神」  Paradise;Faith
(2012年 オーストリア=ドイツ=フランス 113分)
監督:ウルリヒ・ザイドル
出演:マリア・ホーフステッター、ナビル・サレー
配給:ユーロスペース

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