2016年2月16日火曜日

キャロル  CAROL

50年代の質感が素晴らしい。本当に美しい映画

古いフィルムの映り、衣装、ヘアスタイル、街並み、車、小物まで50年代のクラシックな質感へのこだわりがすごく伝わってくる。
そして字幕までがクラシックスタイル!
ケイト・ブランシェットは美しくてエレガント。
クラシックの名作のような完璧で美しい映画。

1952年、ニューヨーク。デパートで働くテレーズは、娘のクリスマスプレゼントを買いに来たミステリアスな女性キャロルにひと目で惹かれてしまう。
店に忘れた手袋を届けたことをキッカケに、二人は逢瀬をかさねるようになっていく。

映画の冒頭で、テレーズがキャロルを一目見て目が釘付けになってしまうシーンが印象的。

原作はパトリシア・ハイスミス。
アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」やヒッチコックの「見知らぬ乗客」、ヴェンダースの「アメリカの友人」など映画化でも名作が多い。
本作「キャロル」は50年代当初、別名義で発表し後年の84年に自身の名義で出版したタイトル。同性愛への偏見が強かった当時を思わせるエピソード。


映画評論家の淀川さんは、「太陽がいっぱい」公開当時からこの登場人物二人の関係性に同性愛的な意味合いを見出していたとか。
でもその時にそれを理解できる人はまだいなかったそう。
パトリシア・ハイスミスはカタツムリの観察を趣味にしていることでも有名だったそうだけど、このカタツムリは雌雄同体といってオスでもありメスでもある。
カタツムリは恋矢という槍を出して交尾の際にお互いを刺す行為をする。
http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/research_ja/33241/ (参考)
お互い弱って死んでしまうのだけれど、愛する相手を殺して自分のものにしたいというゲイの願望を「太陽がいっぱい」から淀川さんは見抜いたのだとか。


監督は、トッド・ヘインズ。
「ベルベット・ゴールドマイン」、「エデンより彼方に」、「アイム・ノット・ゼア」など撮る作品全てが高評価を受けるも寡作な監督。
ゲイであることをカミングアウトしていて、彼だからこそパトリシア・ハイスミスの原作を丁寧に、そして素晴らしい映画に昇華できた。
デヴィット・リーンの「逢びき」に本作の影響を受けているそう。


それにしても50年代の再現度がかなり高い。
テレーズがピアノを弾くシューベルトや、プレゼントしたビリー・ホリデイのレコード。
キャロルがテレーズに贈ったCANONのカメラ。
そして、サンディ・パウエルが手がけるファッション。
オハイオ州シンシナティの戦前の建物やアパートメント。
当時の35mmフィルムに見せるためのスーパー16での撮影。
クラシックカーやタバコをやたら吸うところも50年代っぽい。

各種ポスターデザインも秀逸。





<作品概要>
キャロル」  CAROL
(2015年 アメリカ 118分)
監督:トッド・ヘインズ
原作:パトリシア・ハイスミス
衣装:サンディ・パウエル
美術:ジュディ・ベッカー
出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラー、サラ・ポールソン、ジェイク・レイシー、カイル・チャンドラー、ジョン・マガロ、コリー・マイケル・スミス、ケビン・クローリー
配給:ファントム・フィルム

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