2013年9月18日水曜日

メキシカン・スーツケース ロバート・キャパとスペイン内戦の真実  The Mexican Suitcase


70年の歳月を経てロバート・キャパの消えたフィルムが発見された!

伝説の写真家ロバート・キャパのスペイン内戦時のネガがパリのスタジオから消えた。この噂は長い間ささやかれ、キャパの弟で国際写真センターICP(International Center of Photography)を創設したコーネル・キャパによって探索は続けられていた。

「メキシカン・スーツケース」

メキシコで発見されたネガはそう呼ばれ写真業界史に残る発見とされて騒がれた。実際はスーツケースに入っていた訳ではなく3つの箱に入っていた。だけどスウェーデンで同じように没後発見されたキャパのネガがルイ・ヴィトンのスーツケースに入っていたことから「スウェディッシュ・スーツケース」と呼ばれていたために、コーネルがそう呼ぶようになったとか。


この映画で見えてくるのは、スペイン内戦の語られてこなかった歴史だ。
今でもスペインの人たちは内戦を語りたがらない、だけど内戦を知らない子供世代、孫世代がいま教えられてこなかった歴史を知ろうと動きを始めた。そこでフランコ将軍の独裁政権の過酷な時代が浮かび上がってきた。当時、共和国派は弾圧から逃れるためメキシコに渡った。そういう知られざる歴史があった。キャパの写真はこの流れにのってメキシコに渡ったのだ。スペインの内戦の真実とともにこの映画は語られる。

この発見されたネガにはキャパの他に、キャパの恋人だったゲルダ・タローとデヴィッド・シーモ“シム”が含まれる。スウェディッシュ・スーツケースの時と同様だ。

Gerda Taro
ゲルダ・タローは、その作品がロバート・キャパの名義で発表されることもあり陰でキャパを支えた印象があるが、そのエピソードはイームズ夫妻に通じるものがある。

そんな彼らは、それぞれハンガリー、ドイツ、ポーランド出身のユダヤ系移民だ。ユダヤ系というのが彼らの共通するところだが果たして偶然だろうか。いや、ナチスドイツなどユダヤ人を迫害してきたファシズム国家であるドイツ、イタリア、そしてフランコ将軍の独裁政権のスペインにおいて国際旅団に従軍した彼らには確固たる信念があったはずだ。そんな彼らだから戦地の最戦前の写真が撮れたのだ。「戦場カメラマン」というポジションを築いたのがキャパたちの業績だ。当時は戦争前か後の写真だけだった。それが兵士と同じ戦場に出向き写真を撮る(それがメディアが欲しい写真だった)。それを確立したのがキャパたちだったのである。全く食えなかった当時ハンガリーから出てきた青年は、タローの助言のもと、架空の伝説のカメラマン「ロバート・キャパ」なる人物をでっち上げ、新聞社に売り込み成功する。そこから自らが伝説の写真家ロバート・キャパになるのだ。
Rovert Capa

彼の伝説のデビュー作は、「崩れ落ちる兵士」。
まさに決定的瞬間、戦場のそれも再前線にいないと撮れない奇跡的瞬間。

崩れ落ちる兵士
このスペイン内戦では、キャパらの写真報道の成果で世界中から同情を集め、2万人を超す義勇兵が集結した。そこには各国の文学者や哲学者いた。アーネスト・ヘミングウェイもそのひとりだ。

Ernest Hemingway

スペイン内戦やメキシコの当時の役割など知られざる歴史を知ることができる。
だけど、キャパの写真やメキシカン・スーツケースにあった4,500点もの写真がどんなものであったのかにもっとフォーカスしてもらいたかった。監督のスペイン系移民としての立場からするとスペイン内戦にフォーカスしたかったのだとは思うけど、「ロバート・キャパ」を前面に宣伝するならそこはもうちょい見せてほしかった。


<作品概要>
メキシカン・スーツケース ロバート・キャパとスペイン内戦の真実」 The Mexican Suitcase
(2011年 メキシコ=スペイン=アメリカ 86分)
監督:トリーシャ・ジフ
出演:
配給:フルモテルモ、コビアポア・フィルム

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