2013年9月19日木曜日

D.I. Divine Intervention-Yadon Illaheya


パレスチナ発のぶっ飛んだブラックコメディ!

海外評では、「ジャック・タチやキートンを思わせるギャグの連発でパレスチナの政治紛争の現実が描かれる」と絶賛。カンヌ映画祭審査員賞も受賞し、会見でも爆笑だったとか。
この時のカンヌ、ライバル作品が「過去のない男」「ボウリング・フォー・コロンバイン」「戦場のピアニスト」と強豪ぞろい。その中で受賞するんだからインパクトが抜群だったことは間違いない。

後半になって登場する主人公(エリア・スレイマン監督本人)はセリフをひと言も発しない。それどころか無表情で一切感情を見せない。そんな演出の中で突然戦車が爆発したり、忍者みたいなテロリストが現れたりと荒唐無稽でおバカな展開に発展していくのだけど、けっして分かりやすい笑いではない。だからコメディだと言われなければ、笑っていいのかどうなのか日本人には分かりづらいも。それにパレスチナの歴史的、政治的背景が分かっていないと状況が把握しづらく映画に置いてけぼりをくらう恐れもある。



でもあまり深く考えなくても、ご近所同士のトラブルっていうのはどこにでもあるよね、とか近所の人にそんなことされたらムカつくでしょ、といった問題提議は十分伝わってくる。それが国境を越えた恋人同士だとさらに大変だ。映画で主人公と恋人が唯一会えるのは国境の検問所、そしてそこで手を握り合うのが精一杯のできること。それも全て無表情でセリフなし(笑)
このあたりのユーモアはアキ・カウリスマキに通じるものがあるかもしれない。カウリスマキ慣れしているひとであれば、入っていきやすいかも。



いまだに紛争が続くパレスチナ問題。終わりなきかのような状況。だけどこの映画には国境・民族をまたいでの解決策がみてとれる。
それは「愛」なのだ!
検問所で車を降り、武装する兵士を脇目に堂々と闊歩する。恋人のもとへ。
この愛情表現、観ないと分からない。


<作品概要>
D.I.」  Divine Intervention-Yadon Illaheya
(2002年 パレスチナ=フランス 94分)
監督:エリア・スレイマン
出演:エリア・スレイマン、マナル・ハーデル、ナーエフ・ダヘル、ナジーラ・スレイマン
配給:フランス映画者



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